GIVER〜魔物カードで世界を動かす最強へ〜
@0000t
孤児からの脱出
第1話
お腹が空いた・・・。
もう5日も何も食べてない・・・。
今夜を乗り切れるかどうか・・・。
そこは街の路地裏。
ボロ布を着ている人がたくさん横たわっている。
変な煙を吸う者、ゴミを漁る者、ドブをすする者など様々な人がいる中で僕は生活していた。
時々街の表へ出ては食べ物や高価なものを盗んで生きてきた。
そうでもしないと生きていけないからだ。
しかし今は街の警備が厳しく、食べ物などを全く盗めないでいた。
仕事はできない。
15歳になると天啓――神に大人と認められ力を与えられるのだが、それまでは働くことを禁じられている。
だから自力で稼ぐこともできない。
どうして僕はこんな暮らしをしているんだ・・・。
自分の名前も分からない・・・。
何のために生きている・・・?
国に助けを求めても無駄・・・。
いっそこんな命は終わらせようか・・・。
10年以上は生きただろうし・・・。
もう、疲れた・・・。
「おい、坊主」
意識が落ちそうになったその時、不意に話しかけられた。
なんとか意識を戻して話しかけてきた人の方を見る。
「お、気づいたか」
彼は身長が2メートル以上で筋骨隆々とした大柄の男性。
髪は赤く短く切りそろえられている。
見えている肌にはいくつもの傷があり、なんども死線を越えてきた戦士のような雰囲気があった。
「こんなに細いなんてな・・・。かわいそうに。王都ですらこのありさまか」
その人は僕の身体を見てそういった。
食べてないのだから痩せていて当然だ。
「よし、いくか」
「!?」
その人はいきなり僕の身体を持ち上げて肩に担いだ。
抵抗しようと暴れるが、力がはいらない。
結局何もできず目的地に到着した。
「坊主、着いたぞ」
「?」
そこは飲食店。
お金のない僕が一度も入ったことがない場所。
いつも外から見て憧れていた場所。
乱暴に席に座らされ、僕にメニューを見せてきた。
しかし文字は読めない。
読めたとしても、その料理の代金は支払えないから注文できない。
困惑するしかなかった。
「まあ戸惑うか・・・。なら適当に頼むか」
彼は賑やかな店内でも店員に聞こえるような声で注文をした。
「チャーハン、餃子セット! それから唐揚げ、焼きそば・・・全部大盛りで! 」
「はいよっ!」
「あとはデザート全種類!」
どういうことだ!?
そんなに頼まれても支払えない!
無理やり罪を作って捕まえようとしてるのか?!
とにかく逃げたほうがいい・・・!
急いで席を立ち上がり、店を出ようとする。
しかしその前に首根っこを掴まれて席に戻された。
「おっと、まだ注文しただけだぞ? 食ってから出ろ」
「・・・」
結局抗えず席に着くと、次々に料理が運ばれてくる。
「さあ、食べろ。食べなきゃ大きくなれないぞ」
「(ごくり)・・・!」
こんな美味しそうなものが目の前に・・・!
色々心配なことはあるけど、我慢なんかできない!
僕は一心不乱に目の前のものにかぶりついた。
箸なんか使えない。
手で口に運ぶ。
「おいしい・・・!」
「おうおう! いい食べっぷりだな!」
生きてきて初めて人に優しくされた。
今までの人との関わり方は奪うか奪われるかだったから。
お腹だけじゃなく、心まで満たされていく。
本当に美味しい。
「うぐっ!? ・・・ゴホッゴホッ」
「慌てすぎだ。水を飲め」
喉に詰まった食べ物を水で流し込んだ。
喉の詰まりがなくなればすぐに料理に手を伸ばす。
それから5分もかからずにテーブルを埋め尽くしていた料理を平らげた。
米一粒も残っていない。
「よく食べたな、坊主」
「ごちそうさまでした。・・・それで、どうして僕なんかを?」
食べ終わったところで疑問に思っていたことを質問した。
もし僕が危険な目に遭いそうならその時に考えよう。
表情や雰囲気を見ると、そんなことをしそうな人に見えないし。
「理由なんか大してない。子どもを助けるのは当然だ。お金も心配しなくていい」
「え!」
「いいっていいって」
「でも・・・」
「うーん・・・。納得いかないって顔だな」
「はい・・・」
「なら、『与える人』になれ。坊主がそんな人になれば、俺が助けた意味が大きくなる」
「与える人・・・」
僕は今まで人から奪うことしかしてこなかった。
生きるためには必要だったから。
でも与える人になるにはどうすれば・・・。
「まだ坊主には分からないかもな。でもそれを考えることに意味がある」
「・・・」
「立派な大人になれよ。じゃあ俺は先に行くから」
彼はそう言ってからお金を机に置き、席を立った。
こちらには振り返らず、まっすぐ出口へと歩みを進める。
その背中は大きく見えた。
「あ、名前・・・」
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