『女狐と温泉🦊♨️』

宮本 賢治

第1話『キツネの出張🚅』

 新幹線。

 1人で乗るのはいつぶりだろ?

 朝の早い車両は、6割程度の乗客。

 進行方向側の自動ドアが開いた。ピシッとした制帽に制服。けど、ちょっとのんびりした感じの車掌さん。乗車券拝見。

 わたしは自分の切符を取り出した。

 車掌さんがわたしの席にくるまで、車掌さんのお尻をチェック。

 ん? 何だアレ?

 まだらなブチ模様のシッポ。

 爬虫類?

 スマホのブックマーク。

 世界シッポ大辞典。

 ふむふむ。オスは、太くて長いシッポがある。メスは甲羅に隠れてほとんど見えない。 

 そして、驚愕!

 ウミガメのオ◯ンチンはシッポの中にある。

 ダメだ!

 その事実を知ってしまったら、まともに見れない。

「乗車券を拝見いたします」

 声をかけられた。車掌さんの名札をチラッと見た。

『竜宮』

「とても、めずらしい苗字をされてますね。

失礼ですが、お名前をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 中年くらいの年代の車掌さんに聞いてみた。

 すると、車掌さんはちょっと制帽のツバを上げて、優しい目で答えてくれた。

「わたし、竜宮 亀吉りゅうぐう かめきちと申します」

 ウミガメ。

 初めて見た。

 カメさんは、わたしの切符を確認して、立ち去った。

 通路をバタバタと走る小さな男の子。「オシッコ〜!」

 心の叫びを出力して走っていく。彼のお尻にはその身長よりも大きいフワフワのシッポ。シッポを立てて走る後ろ姿はほぼ、シッポ。しま模様がないとこを見ると、ニホンリスかな。

 わたしの名前は、

 稲荷 狐子いなり きつねこ

 都内の薬品を主に扱う商社、

成亞商事せいあしょうじ』に勤めている。

 今、新潟県にある薬品製造メーカーへ、出張として出向いている。


 シッポ。

 

 人には、それぞれ、その人の属性に基づいたシッポが生えてる。

 わたしにも、あなたにも生えてる。

 ただ、そのシッポ。

 わたしにしか見えないらしい。

 なぜだか知らないけど。

 わたしのシッポ?

 フッサフサだよ。

 黄金色の美しい毛並み、先っぽは真っ白。

 シッポ美人。

 それはわたしのためにある言葉。


 コン🦊♪


 第2話へ続く🚅

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