アルセリオンの神話
エスケー
存在しない話
宇宙には様々な管理者が居た、その中でも、最高位に君臨するのが『最高神』である。しかし、その上に、さらに上位の存在『最高管理者』がいるのだ。
創世の神がまだ宇宙の形作る前に誕生した者達。彼女、彼達は生まれながらにして全だった。
全ての生命の始まり『原初の個体:オリジン・オリジナル』虹色に輝く長く滑らかな髪は、光の角度によって赤や青、金や紫にきらめく。瞳は透明感のある翡翠色で、見つめられるだけで時の流れが止まるかのような威厳と静謐さを帯びている。
全ての
その髪の内側には、無限の宇宙そのものが内包されているかのような深淵が広がり、瞳もまた同じく、星々や銀河を映す小宇宙となっている。
全ての魂の始まり冥界を作り地獄を作り、死の世界を作った『魂核の原核:ユナ・エンブリオン』
髪は青と白が混ざった長いストレートで、風になびくたびに霧や氷の光のようにきらめく。目は深い青で瞳孔は白い、冥界や死の世界を思わせる神秘的な輝きを放っている。
全ての能力と作品を司る『叡智情報集合体:アカシックレコード』
髪は鮮やかな緑色で、目はエメラルド。細身でしなやかな体つき。髪や瞳から、知識や物語の力があふれているかのように見える。
全ての星と宇宙を創り上げた『宇環修神コスミア・ミア』
銀色の髪は長く美しく、髪の中に無限の宇宙が広がっているかのように輝く。瞳もまた宇宙のように深く光を宿している。
それだけではない。
この宇宙にはまだ他にも、十四名の“管理者権限”を持つ存在がいる。
感情を集め、調整し、世界の均衡を保つ『感情収束管理:アウロ・ネウロ』。
あらゆる悪意と災厄を体現する『根源悪禍主:アセシオン』。
その対となり、純粋な善性を司る『根源善純主:セリューネ』。
彼らはそれぞれが無数の宇宙動かすほど強大な力を持ち、
そして“彼”だけはすべてから解き放たれていた。
宇宙を創り、星を生み、生命を作り上げる。
ただ自由に。
ただ好きなように。
それが、“彼”のあり方だった。
宇宙を自在に創り、そして壊す。
彼らにとってそれは、呼吸をするように当たり前の行為だった。
そのたびに、数えきれないほどの生命や文明、星々が消えていく。
しかし、彼らは微塵も気にしなかった。
理由は単純。
「また作ればいい」
それだけのことだった。
生命も、世界も、惑星も、銀河も。
彼らにとっては、掌の上で転がす玩具のように軽い存在でしかなかった。
喧嘩をすれば、その余波だけで
何万、何百万、何千万、何億もの宇宙が吹き飛ぶ。
もちろん、そこに存在していた無数の生命も、跡形もなく消える。
だが、彼らにとって、それは本当に 砂粒レベルの誤差でしかなかった。
また作ればいい。
また創り直せばいい。
宇宙も、星も、生命も。
そういう存在だった。
創造も破壊も、ただの退屈しのぎ。
遊び道具を散らかして、飽きたら新しい玩具を買う。そんな感覚で、無数の世界が生まれては消えていった。
そんな日々を過ごしていた、ある時だった。
宇宙の空間に『何か』が現れた。白いフードを被り顔は見えない、異質な存在。
管理者たちは一斉に警戒した。
理由はただひとつ“何か”が来ていたからだ。
それは、彼ら十四名の管理者でさえ観測できない領域から、じわり、じわりと侵食するように近づいていた。音もなく、光もなく、ただ「存在だけ」がそこにある。
普段ならば、管理者たちは誰が動いたのかすぐに理解できる。ユニバースが動けば重力の層が揺らぎ、
ユナが姿を変えれば冥界の靄が震え、コスミアが動けば星々が歌った。
全にして個である彼らは協力し自身が理想とする世界を作り上げようとした。その過程で、何百もの宇宙が犠牲となり、何十億もの命が失われた。彼らは、理想の星を作り上げるために、あらゆる手段を尽くした。その結果、壮大な宇宙の創造が成し遂げら無かった・・・その背後には悲惨な犠牲が隠されていた。
彼らはいつもの通り宇宙を想像しようと力を使う途端に「何か」が現れた。顔は見えない白いフードに身を包まれている顔 。白髪である事は分かる。管理は全ての宇宙を理解している故に理解出来ないものなどない、だからこそ、その「何か」は異様だ。何も見えない輪郭がぼやける
誰の気配とも一致しない。
どの権能とも、どの根源とも結びつかない。
つまり、それは管理者たちの“外側”から来ている未知の存在だった。
「……識別不可。パターンが存在しない?」
叡智情報集合体アカシックレコードが、髪の緑色の光をちらつかせながら呟く。
「これは…?感情の波が読めません。」
感情収束管理アウロ・ネウロが眉をひそめ、周囲の空間がざわついた。
「根源悪の私にも影の揺らぎが見えぬ。これは……不吉だ。」
アセシオンが低く呟き、漆黒の翼を広げる。
「善の流れにも波紋ひとつないわ。まるで存在しない
何かが歩いてくるみたい。」
セリューネが静かに目を伏せた。
管理者たちの身体の周囲で宇宙の光が波打つ。
喧嘩をすれば何億の宇宙が壊れる彼らが、初めて警戒した。
その“何か”は、ゆっくりと形を持ちはじめる。
その存在に、管理者たちは初めて“理解不能”という感情を覚えた。
「………泣いている。恐れている。怒りに震え、絶望している、…子供が泣いている声……聞こえないのか?貴方たちが宇宙を壊す度、生き物は、絶望に打ちひしがれているのだ……
宇宙は泣き、星は悲しんでいる。人は恐れている神の怒りに、人は憤怒している神の悪行に、何故このような業をする」
その“何か”は、原初の個体オリジン・オリジナルですら認識できなかった存在。つまり宇宙が始まる前にもビックバンが起きる前よりも先に存在していた、どこに?いや、本当の意味での『始まり』だ。
「何か」は管理者に臆する事無く言い放つ。管理者達はその無礼な態度に苛立ちを募らせる。
「何故?そんなの簡単だ失敗作だからだ不要な物は要らない我々は管理者だ。我々は完璧なんだ不要な者は全て排除する。そして我々は作り上げる、その過程で何百億、何千億の種族が犠牲になろうと構わんのだ。作ればいいまた」
管理者取っては概念も法則も種族も星も宇宙もその辺に落ちているゴミと変わらない。作り上げればいいのに完璧なる法則、概念、種族、彼らが求めいるのは「完璧」だ。
相反する思考、「何か」は怒りを見せた。
「なら私は君を止めないといけない。私の世界に不純物は不要だ。」
「お前の世界?いや、我々の世界だ!!」
大規模な戦争が起きた大規模な戦争は、宇宙そのものを数え切れないほどに壊滅させた。そこに存在する生物や概念、そして万里も、法則も崩壊していく。
星々は焼け落ち銀河は崩れ落ちる。そして何も無くなる何も無い空間になる。
そこに立っているのは「何か」だった。彼の足元には管理者達が転がっている。
何故?我々が負ける理解など出来ない我々は完璧なる存在だ、死の概念すら存在しない、いや作り与える方だそれなのに他の管理者は死んでいる。
思考速度は宇宙が生成させる前に無限の速度性を持ち思考は加速する。やがて答えがたどり着く、
目の前に立つ「何か」はビックバンが始まる前に、混沌が始まる前に何も無い空間が出来るまでに何かで「何か」が存在していたのだと。
「何故だ、何故、邪魔をする。我々は理想の世界を作りあげようとしただけだ。過程はどうあれ我々が作りあげた星は必ず安寧を持って暮らせる、どんな犠牲を払おうが最後に笑えればいいのではないか、何故邪魔をする」
オリジン・オリジナルの目には涙が浮かび上がってくる。
「どんな理由であれ君達の行為は目を潰れるものでは無い。君達より作り出された種族は死間際涙を浮かべる、愛する人も居ただろう、まだ幼い子供も君達が知らない世界で物語築いていた。完璧な世界なんて誰一人作れない。」
「嘘をつくな・・・お前なら作れるだろう。我々の戦う際も能力を使う事は無かった、能力を使えば我々なんて敵では無かった。理解出来ない、何故力を使わない?教えてくれ楽しかったのか?我々が作り上げようとする世界を嘲笑っていたのか?」
コスミア・ミア言葉と共に雫がこぼれ落ちる。
その時コスミア・ミアはほんの僅かであるが「何か」の顔を見た、彼は少し微笑んでいたその笑顔は全てを包み込むような柔らかな優しいがあり、その裏には七神ですら計り知れない悲しみが存在していた。
(そうか・・・お前は全てを試したのか)
自分が完璧とする世界、それは既に「何か」は試していた。何度も何度も完璧な世界を作った。
そこには完璧なる世界が築かれていた。誰もが幸福を手に入れ、笑顔が絶えることがなかった。しかし、その幸福は虚無に満ちていた。皆が喜怒哀楽を失い、感情が欠如していた。笑顔しかない世界。生活は似たようなもので、何事も変化や驚きがなく、退屈であった。それが完璧な世界とは呼べるものなのだろうか。神に対する忠誠心も何かもかもが自分の思い通りに動く世界──
・・・退屈。「何か」の脳裏には常に二文字の言葉が浮かんでいた。
「何か」はもう1つの世界を見た、それは自分が失敗作と罵り見捨て居た国だった。
「星」と呼ばれる場所は、失敗作として蔑まれ、暴力や戦争といった悲惨な行為が日常茶飯事となっていた。しかしそこには、完璧さにはないけれど、何か重要なものが確かに存在していた。
それぞれの人々には、個々のドラマがあり、残酷さと美しさが同居していた。彼らは喜怒哀楽を経験し、時には極限まで追い詰められ、それでも希望を捨てることなく生き延びていた。
友情や愛・・・驚いたのだ「何か」が現れても彼らは自分の仲間も愛人を優先した、力の差は分かってるはずなのにだ。例えこの命に変えようとも刃を向ける姿勢に感銘を向けた。「何か」は知りたくなった「愛情」を「何か」は経験してみたかった「友情」を共と言える存在を、そして「何か」は与えた「自由」を。
「完璧なんて作る必要は無い、完璧など作れないんだ私も君達も理想が高くなれば成程我々は求めてしまう。完璧を求めても更に完璧を求めたくなる。
そんな物必要無い、見たくないか?子供達の成長を苦労し悲しみ喜び知恵を絞り共存し時には戦う物語を、スタートは何回でも出来る。私達で始めようじゃないか物語を」
管理者達は涙をこぼした、我々が求めていたのはもう既に存在していた。何故完璧を求めたのは分からなかった自分が究極の存在だからか?否自分は完璧では無いそれを押し付けようとした。
自分の私利私欲で数多の世界を犠牲にした数え切れない命を奪った。
「我は・・・我のしたことは全て無駄だったのか」
「そんなことは無い、私は君達から教えてもらった友情を。君の罪は全て私が消しさろう。」
「何か」は手を翳す、すると壊れた宇宙が蘇る。
眩い光に包まれた。「何か」は感動していた彼らは戦いに一方的に蹂躙されているのに尚友を見捨てる事はなかった、それどころか庇おうと命を懸けてきた。それは「何か」には存在しない確かな愛があった。
「作ろうでは無いか!私が理想の世界、君達の理想の世界を!」
「何か」の手には彼の手には宇宙をも存在させ得るような圧倒的なエネルギーが宿っていた。その力は、無限の可能性を秘めており、宇宙の果てまでも届くかのように輝いていた。その手が触れるものは、一瞬にしてその力に包まれ、全てを支配するかのように見えた。その様子は、管理者のようにさえ見えた。 いや最高神管理者すら超えた「何か」だ。
「待ってください……!
貴方は、これからどうするつもりなんですか!」
アカシックレコードが震える声で問いかける。
“何か”はふっと微笑み子供が秘密を打ち明けるように柔らかく答えた。
「僕は——転生しようと思う。
愛も、友情も、まだ知らないからね。
知りたいんだ。ただ、それだけなんだ。」
その存在は管理者たちをゆっくり見渡す。
宇宙を創った者、魂を束ねる者、星々を生む者……
そのすべてを穏やかに受け止めながら言う。
「約束してほしい。
これから生まれる星々と子供たちを……見守ってあげて。
干渉はいらない。ただ、守っていてくれればいい。」
管理者たちは、誰一人として逆らえなかった。
その願いが、あまりにも“根源”だったからだ。
全員が静かに頷いたその時——
「それと、最後に……この子たちも頼むよ。」
何かがそっと手をかざすと、空間が裂けた。
そこに現れたのは、どの管理者も見たことのない“異質な群”。
原初の個体オリジン・オリジナルでさえ名を持たない生物。
「これは……何なのですか?」
オリジンが恐る恐る問う。
「僕の可愛い子どもたちさ。
まぁ、ちょっと乱暴だけどね。
殺せなくて……いや、違うな、殺したくないんだ。
いつか、彼らを心から愛せる日がくる気がしてね。」
それこそが、この宇宙に属さない存在『存在外の存在』たちだった。彼らはその願いに頷いた。
オリジンの瞳が揺れる。
「……また、会いたいです。」
“何か”はまっすぐ彼女を見つめ、穏やかに笑った。
「ああ——きっと会えるよ。」
やがてその存在は光となって消えていく。
宇宙より古く、始まりより先にいた“何か”は、
自ら創った無数の世界を後にして旅立った。
愛と友情を学ぶために——転生へと。
次の刹那ビックバンが起きた・・・その同時に宇宙が作り上げられ数々の星が作り上げられた。宇宙の中心には他の星を圧倒するエネルギーの塊のような存在があった。
たった一つの世界、同一世界は認めれなく唯一無為の世界。
星の名は「スタットフィーニス星』
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