最強の俺に最強の女(厨二病)が現れた話

無名

第1話 自分よりも強いライバルが現れるのが異能バトルの鉄の掟

普通、異能バトル系の話だと主人公は激弱で何となく強くなり最終的には新しい能力が見つかり最強になってしまうというのがオチなんじゃないかと思う。そして必ず自分よりも強いライバルも現れる。


これは異能バトルだ。


そして俺は主人公であり、生まれながらにし最強だった。





この世界に生きる”異能力者”。そして、俺は異能を持った人間が集まる高校に今年入学した。


「では、次。笹原凪冴、今からクラスレベル分けをする」

「はい」

前に立ったとき、ジジイのハゲが見えたことは黙っておこう。

このジジイの解析者アナライザーと呼ばれる異能力者である。名前の通り、異能を見破るド変態な気持ち悪い奴だ。

「……笹原凪冴、Aクラス」

Aという言葉を聞いて周りがざわつきはじめた。

「見て、あれ首席トップの笹原凪冴じゃない?最強なんでしょ?」

「そうじゃん!やっぱA行くかぁ」

当たり前だ。

俺がAなのは当たり前なのだ。

「次。尾崎なつ、今からクラスレベル分けををする」

俺のざわつきをかき消すように一人の女が前にたった。

如何にも男受けしそうなボブが計算されてるようで反吐が出る。

「はい」

「……尾崎なつ、Aクラス」

二度目。それも連続で出たAクラスで落ち着きようがなかった。

100人もの人間がいるにも関わらずAクラスに入れるはたったの11人だけなのだから。

まぁ、どんなにAクラスが居ようと俺に勝てるやつは居ないと思うと笑えてくる。

結局何回かのざわつきがありつつも11に人のAクラスと100人のクラスレベル分けが終わり俺はAと書かれた教室に入った。

「お前が”笹原凪冴、だな?」

「…ああ。 」

先生がせっかくきれいにしてくれた机だってのに上にどかりと乗る女は先程俺のあとにAクラスを取ったやつだった。

「私は、”漆黒の夜叉”《しっこくのやしゃ》。これからよろしく」

し、ん?漆黒?夜叉?

「尾崎なつじゃないのか?」

「それは勝手にあのハゲが言っただけ。本当の名は”漆黒の夜叉”。ほらワンモア?」

英語はカタコト、絶対に苦手なはずだ。

「…漆黒の、夜叉?」

「さすが。Aクラスは違う。他のやつに言うと何だ何だと距離を取られたものだからね」

「…はぁ」

学校指定の制服の袖を見てみると何やら包帯が巻かれていた。

「それは?」

「…ああ。これは私の力を抑えるためなんだ。あまり指摘すると危ない目に合う」

「…へぇ」

先程から教室に入ってくる人に避けられたり避けられたりコソコソされてるのは間違いじゃないだろう。

「あれじゃん、”残念厨二病美人”。高校生でも拗らせてる人初めて見たぁ、異能は格別なくせにあれだとねぇ。」

「噂だと異能、使わないんだって?あいつの異能使ってるとこ見たことねぇよ。もしかしたら使いこなせてないとか?」

「ウケる」

耳を傾けなくても聞こえていた。少しこちらも静かになってしまったので彼女も聞こえているだろう。

「………フッ。あいつらはまだ私の本気を知らないんだよ」

目を押さえ、少し下を向きかっこよくポーズを取っているその姿に俺は衝撃を受けた。(泣かないように我慢してるだけ)

こいつ…ッ!!!

俺は初めて、自分よりも強い人間を目の前にした。


メンタルがクソほど最強だった。


最強の俺でもこんなボロクソ言われたら教室でも泣いてしまう。それもさっきから彼女の周りはあえて避けられているのに。こんなの耐えられたない。

けど!こいつは違った。泣くどころかそれを誇るかのようにポーズを取る。

真の最強とは、異能だけじゃないかもしれない。メンタルでさえも最強じゃないといけない。

それはそうとも、冒頭に言った異能バトルでは必ず自分よりも強いライバルが現れるというのは本当でこいつだったのかもしれない。


俺はこいつライバルを観察することにした。

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