第3幕 独りぼっちギターは誰がために鳴く
第18話
「天宮くん!お願いがあるんだけど!」
バイト先の先輩である九条先輩から声を掛けられる。
「はい、なんでしょうか?あ、仕込みならもう終わってるので大丈夫ですよ」
「いや、そうじゃなくて」
「天宮くんって、バンドやってるんだよね?」
先輩にバンドのことを話した覚えはないのだが、どこで知ったのだろうか?
「やってますけど、といいますか今は活動休止中ですね」
日和さんが抜けてしまった今、正式メンバーは俺ベースと灯火ドラムと未来ボーカルのみ、やはりギターがいないとバンドはできない。
「そうなのか、今度市内で高槻フェスティバルがあるだろう?」
高槻フェスティバルというのは、市が主催している年齢ジャンル関係なく出演できる小さな野外フェスのようなものだ。
夏祭りと合同になっており出店や屋台もでていて、市外からも多くの人が集まる。
8月の夏休み中、2日間にわたり開催され、フェスのステージには午前中から夜にかけていろんな人たちが参加する。
「あー、そういえばありますね」
「そこで、天宮君に出演してもらえないだろうか!?」
いや、今は活動していないと伝えたと思ったが、この人は人の話をあまり聞いていないのだろうか?
「参加希望者がなかなか集まらなくてね、いろんなところに声をかけてはいるんだが」
「でも高校の吹奏楽とか、おじいさんの演歌とかやってましたよね?結構出たいと思う人多いと思うんですけど」
「そうなんだけど、俺が聞きたいのはロックなんだよ!」
「時間帯は夜のステージで、ロックで盛り上がりたいんだよね!」
午前中からフェスは開催されるが、午前中は年齢層高めの演歌や三味線など、お昼あたりからは吹奏楽がメインになる。
日が落ちてからのステージはバンドがメインになっており、例年ロックバンドが参加してかなり盛り上がっている。
「実は俺、天宮くんのライブ見たことあるんだよ、あんなライブをぜひやってほしいと思ってさ!」
その気持ちは素直にうれしい、俺たちのバンドを認めてくれているということだ。
だが、やはりメンバーが足りない、なんとかギターが見つかればいいとは思うんだが。
以前一緒にやってくれたミミさんを誘ってみようか?
そう思いながら、まずはミミさんに連絡を取ってみる。
するとすぐに返信が来た。
「お疲れ様です、高槻フェスなんですけど、ヘルプ頼めませんか?」
「ごめーん!うちらもフェス出るから無理なのー!」
「大丈夫です、なんとかこっちで探してみます」
と、ごめんなさいのスタンプが送られてきた。
ミミさんとのやり取りは終了する。
やはり今の状態でフェスにでるのは無理だ。
「うーん、やっぱり無理だと思います、すみません」
「そうかぁ、残念だ。あ、気が変わったらすぐに連絡してくれよ!」
そういって、先輩は仕事に戻る。
「お疲れさまでした、お先に失礼しまーす!」
高校生の俺は夜22時までしか働けない、声をかけてバイト先を後にする。
うーん、高槻フェスティバルかぁ、メンバーがいれば出てみても良かったかもなー。
そう考えながら、一応聞いておくかと灯火にメッセージを送る。
「高槻フェスに誘われた」
「ギターいないのに無理でしょ」
「だよな、断っとく」
「了解」
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