第6話
ライブハウスがあわただしくなってくる。
そろそろお客さんが入ってくる頃だろうか。
1番手のバンドの方々が準備を始めていた。
「日和さーん、そろそろ始まりますよー」
完全に寝入っている日和さんを起こす。
日和さんはぼーっとしているが、なんとか目は覚めたようだ。
そしてライブが始まる。
「灯火!ステージ見に行こうぜ!」
出番はまだ先だ、俺たちは観客席に向かった。
ドラムとベースの低音が体に響く、ライブで感じるこの重低音が俺は大好きだ。
イヤホンなどで聞く分には、ベースって何?なんてよく聞かれたりもするが、ライブハウスでは全くの別物だ。
ドラムのバスドラがドンドンドンと体に響き、ベースの低音が体を揺らす。
ライブでこそその真価を発揮する、これぞベース、神だ。
いよいよ、俺たちの出番、ステージ横で出番を待つ。
灯火はいつも通り、日和さんも緊張はしていない。
まあ、こういうのは慣れもあるんだと思う、昔からライブをしていた俺たちはいつも通りだ。
「こんばんはー、
俺たちのバンド名はHYT、日和、雪兎、灯火のイニシャルを並べただけだ。
まばらな拍手が起こる。
お客さんは俺と灯火の友達、他には日和さんの会社の方々。
嬉しいことに、ももちゃん先生も来てくれていた。
曲はネットに上げているし、ついったぁでも宣伝はしているが、
わざわざ聴きに来てくれる人もいない、まあこんなもんだ。
最前に、クラスメイトの小林さんの顔が見えた。
笑顔で手を振っておいた。
灯火のカウントから曲に入る。
俺のベースが重なり、日和さんのギターが響く。
この曲は俺のベースがかなり攻める、スラップを駆使しながら遊ぶように低音を響かせる。
さらに歌いながら俺は改めて感じていた。やっぱライブは楽しい。
他に熱くなれるものがなかった俺は、このライブが一番の楽しみだった。
最前で小林さんとももちゃん先生が飛び跳ねているのが見える。
他の人たちも体を揺らしてノッてくれている。
ああ、みんな楽しんでくれている。楽しい。
楽しい時間は早いもので、あっという間に最後の曲だ。
メロディアスな日和さんのギターが鳴り響き俺と日和さんが歌う。
途中から俺と灯火の低音が響く、俺は力の限り、全力で歌った。
「ありがとうございました!」
一礼して、次のバンドのために片付けに入る。
片付けが終わり控室に戻った俺は、気分が高揚しているのを感じていた。
このライブが終わった後の達成感なんかもライブならではの楽しさだ。
「ユキおつかれっ!」
日和さんが声をかけてくる。
「今日も楽しかったー、やっぱライブだよなー」
それは灯火も同じように感じているらしく、どこか満足げな顔をしていた。
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