第3話

俺は叔母さん、母親の妹である日和さんと一緒に暮らしている。


俺の母さんは俺を産んだ日に亡くなった、


そして父親は最愛の人を亡くした悲しみから心を病んでしまった。


当時、新卒会社員だった日和さんは、自分が育てると言って俺を引き取ってくれたのだ。


――

「ただいまっと」


 俺は自分の家の鍵を開け、誰もいない部屋に向かってそう告げる。


「日和さん今日は遅くなるって言ってたな、テキトーに食べるか」


コンビニで買ってきたお弁当を温めて食べる、味気ないがいつもの事なので慣れてしまった。

日和さんは歳の割に、というか本当に何歳なのというくらい若く見える。

さらにいうと家族のひいき目なしに綺麗で可愛い。

今もそうだが、昔は男性にとんでもなくモテていたんだろうと思う。


そんな時期に俺を引き取ってここまで育ててくれたのだ、どんな気持ちだったのだろう。

結局この歳になるまでそういった話はしたことが無い。

正直、この話をするのは自分としてはいろいろと怖かったのだ。


「ただいまー」

「おかえり」


もう日が変わるかという時間に日和さんが仕事から帰ってくる。

「今日も遅かったね、お腹すいてる?ウーバーでも頼む?」


「いや、今日はいいや、明日も朝から仕事だしね」


「リハは明日お昼からだよね、それには間に合うようにするから」


こんな時間まで働いて、さらには明日の朝も働くのか。これは完全にブラックなのではないだろうか。

早く大人になって日和さんを助けてあげられたら、かと言ってすぐには大きくなることはできない。

それでもせめて、と思い日和さんに相談事を打ち明ける。


「日和さん、俺バイトしたいんだけど」


「あのねユキ、お金のことなら心配いらないよ、お姉ちゃん結構稼いでるんだから」


日和さんはそういうが、こんな夜まで働いて、朝早くからまた働くなんて辛すぎる。

少しでも負担はかけないようにしたかった。

俺ももう高校生だ、バイトしているやつなんていっぱいいる。


「実は欲しいベースがあってさ、やっぱりベースは自分で働いたお金で買いたいしさ」

まあウソだ、今のベースはかなり気に入っている、新しいものを買う気なんてさらさらない。


「うーん、まあ社会勉強にもなるしいい、のかなぁ」

「でもひとつだけ約束!働いて辛いと思うならすぐにやめること!」


普通は辛くても気合で頑張れっ!て昔見たラーメン屋のドキュメンタリーで見た気がするのだが。


「もうひとつ!学業を疎かにしないこと!それが守れるなら許可してあげる」

ひとつだけじゃなかったっけ、俺は苦笑する。


「ありがと、いろいろ調べて探すようにする」

「じゃあ俺は寝るから、日和さんも早く寝なよ、無理しないように」


日和さんは後ろでに手を振り、おやすみーと声を掛けるのであった。

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