第13話 「課題と友情、広がる世界」

 タン、タン、タン、タン……。


 家に帰る道。


 家並みのブロック塀や電信柱を目印にしながら、私は白杖で路面をタップして歩く。


 そして、家の前に帰り着く。


「ただいま」


 玄関ドアを開けて、私はお母さんに帰宅を告げる。


「お帰り」


 リビングの方からお母さんの声が返ってきた。


 ---


 私は靴を脱ぎ、廊下を進んで洗面所へと向かう。


 ハンドソープで手を洗う。


 蛇口から迸る温かなシャワーのお湯がハンドソープの泡を洗い流していく。


「くっ……!」


 指の関節と掌がピリピリと染みて、思わず声が漏れてしまう。


 今日はたった2本しか登ってないのに、こんなに指がダメージ受けちゃうなんて。


 私はガラガラとうがいをして、リビングへと向かった。


 ---


「今日も寄って来たの?」


 お母さんが話しかけてくる。


「うん。今日は陽菜、帰っちゃったから一人で寄ってきた」


「すっかり気に入ったみたいね」


 お母さんが笑いながら言う。


「だね。部活みたいなものかも?」


「ずいぶんハードな部活じゃない?」


「かもね」


 私はテーブルの椅子に腰かけながら答える。


 ---


「今日ね、初めて課題っていうのを登ったんだよ」


「へぇ。課題があるの?」


「うん。壁の指定されたホールドだけ使って登るんだって」


「そうなの? 美羽、どうやってそのホールドの位置を知るの?」


「えへへ……。お友達が出来ました! 課題のルートをその人に教えてもらったの」


「あら! それは良かったわね」


 お母さんが嬉しそうに笑ってる。


 ---


 その時、バッグの中のスマホがピコンと鳴る。


 私はゴソゴソとバッグを探り、スマホを取り出す。


 画面をタップするとLINEの通知が届いてた。


 開いてみると、《ちゃんと帰れたか?》のトーク。


「あっ、蓮君からだ」


 嬉しくなっちゃった私は思わず声に出してしまう。


「ふふっ。お友達になってくれた人は蓮君っていうのね」


 お母さんが何やらニヤニヤしてる感じがする。


 蓮君の声を思い出して、また顔が熱くなってきた。


 ---


「そ、そう。蓮……蓮君っていうの、その人」


 私はスマホを手に握り、椅子から立ち上がる。


 赤くなった顔をお母さんに見られるの、ちょっと恥ずかしい。


 急いで2階の自分の部屋に上がっていく。


 バッグを床に置き、ベッドに腰掛ける。


 そして、《うん、無事に帰宅しました》と蓮君に返信を送る。


 ---


 すると再び蓮君から《明日も来るか?》と返信。


 私はピリピリしてる指を触りながら考える。


 もっと登ってみたい!

 もっと別の課題も挑戦してみたい!

 そして……、蓮君にまた会いたい!!


 ドキドキしてきた胸を抑えながら、《明日も行くね!》と返信を送った。


 ---


 私はネクストで汗をかいたのを思い出し、着替えを持ってシャワーに向かう。


 しっとりと汗で重みを増したジャージも洗濯機に入れて、浴室に入る。


 ポニーテールを解いて、温かいシャワーを頭から流す。


 シャワーヘッドを持ち上げてる腕から背中にかけての筋肉がメキメキと悲鳴を上げてる。


「痛たたたたた……!」


 腕を上げる動作だけで、こんなに痛いとは。


 ---


「ふふっ……」


 筋肉痛が痛いはずなのに、課題をゴールできた瞬間の達成感が蘇ってくる。


 思わず笑いが込み上げてきた。


 髪の毛をシャンプーし、ボディソープで体を流す。


 やっぱり指と掌はピリピリと染みちゃう。


 これは名誉の負傷かな?

 それとも、名誉の勲章かな?


 そんなことを思いつつ、シャワーを終えた私は浴室を出た。


 ---


 髪の毛を乾かし、部屋に戻った私はベッドの上に置いておいたスマホを確認する。


《今日、どうだった?》と、陽菜からLINEの着信が届いてた。


 私は《聞いてよ! 今日は垂壁の10級課題に挑戦したんだよ!》と返信を送った。


 ピコンと着信音。


《10級???》陽菜からの返信トークを見る限り、頭の中に疑問符が飛んでるのが伺える。


 ---


 私は得意になって《そうだよ! 課題っていうのがあってルートごとに難易度が設定されてるんだって!!》と送る。


 すぐにピコンと着信し《藤堂さんに教えてもらったんだ?》と尋ねてきた。


《それがねぇ……。ないしょ!!》私は蓮君のことは書かずに意味深な返信を送る。


《ちょっとちょっと!! なにそれ!?》陽菜が食いついてくる。


 私は《明日、学校で教えてあげるね!》と返信。


《えーっ!? 気になるぅ!!》陽菜は興味津々みたい。


 ---


 私は陽菜に《それより、明日はネクスト行く?》と聞いてみる。


 スマホがピコンと鳴り《行く行く!!》とノリノリの返事が届いた。


《じゃあ、明日をお楽しみに!》と送ると、陽菜から《うん、明日、楽しみにしてる!!》と届いて会話が終わった。


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 私はバタッとベッドの上に仰向けに寝た。


 10級でこれだもん、3級とか2級って、どんな課題なんだろう?


 私が2階のボルダーエリアに上がって行った時、蓮君が登ってたのが3級とかなんだろうな。


 方向的には強傾斜壁だったはず。


 確か、ドサッって落ちてたよね?


 蓮君も落ちることあるんだ。


 落ちた姿を想像すると頬が緩む。


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 私のクライミングは始まったばかり。


 たくさん登って、たくさん落ちて。


 いろんな課題に挑戦しよう。


 ワクワクが止まらない!


 明日が楽しみだ。


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