何度生まれ変わっても
交通事故に遭い、僕は命を落とす。実に呆気ない死に様だった。普通死者はその後、輪廻の渦に呑まれ、来世へと進むらしい。だけど、本当にそうであるのか、僕は知らない。それに何より、未来永劫確かめることは出来ないだろう。
というのも、死してなお僕は現世に取り残されていた。一人置いていかれることを憂いた彼女が、僕を無理やり引き留めたのだ。幽霊と言われるような状態になってしまった僕は、二度と生者となることは出来ないのだ。
彼女はそのことを知っていてやったのだろうに、どこか僕に罪悪感のようなものを感じているようだった。「大丈夫だ」と言うように、僕はいつも彼女に寄り添うように過ごしている。直接触れることも話すことも叶わないが、それでも彼女は感じ取ってくれたようだ。少しずつでは前向きに。そうして彼女は天寿を全うした。
彼女は輪廻の渦に呑まれ、時間が過ぎれば、また新たな生命としてこの世に生まれ落ちるだろう。いつ、どこで、何としてかは分からない。
だが、きっと会えば分かるだろう。何せ、彼女は僕が触れれず、尚且つ言葉を交わさずとも意思疎通を図ることが出来たのだ。僕だって同じことだ。
たとえ姿形が変わっても。記憶をなくしてしまっていても。また一から僕のことを知っていって貰えば、それでいいのだ。
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