交換ノート(仮)

日新斎

第1話

自分の最後の高校生活は、ノートの中にすべて詰まってる。


「真人、一緒帰ろうぜ」

「先に帰っててくれ、忘れ物した。」

終礼が終わり、友人から誘われるも、移動教室に忘れもをしてしまった。

教室から、移動教室まで長く、また鍵が開いていなかったら、先生を探さないといけない。

一度鍵がかかっており、先生を見つけるのに、2時間もかかったこともある。


オレンジに染まる教室に廊下。

微かに聞こえる掛け声や部活の音。

今思うと、青春の音のように思え趣がある。


コンッコンッ

「すみません、忘れ物取りに来ました。」

自身の声が、静寂の教室にこだまする。


鍵開いていたことの喜びと誰もいない教室でテンションが上がる。

普段、気になってていた物、教卓や机の中など興味が沸くものを自由に見て回っていた。

後ろにある、意味ありげな古びた棚、いつも置いてあるも中身が気になる謎の雑誌。

好奇心の赴くままに、教室を散策する。

。。。。。。。。。。。。

時計に目を向けると、短い針が2つも進んでいた。


もうそんなに時間たってたのかよ。

時間の経過の恐ろしさを、味わい自身の机の中にある忘れ物を取る。

机に手を入れると、複数の感触が。

忘れ物他にもしていたっけか。

そう思い、机の中の物をすべて出す。

忘れ物はノート一冊のはずなのに、机の中から出てきたのは、2つのノート。


一つは、自分の名前が書いてあるノート。

もう一つは、名前も何も書いていないノート。


そのため、誰のなのか全く見当がつかない。

中身を見れば、わかるかもしれない。

悪いのはわかっているので、謝りながらノートをそっと開く。


{好きな人としたいこと}


一ページ目に題名として、書いてあった。

無意識にそっとノートを閉じる。

机に入れ、帰ろうとするも続きが、書いてあり気になる。


そう思うと、体は机に向き戻る。

ノートへの好奇心に負け、もう一度ノートを開く。

もしかしたら、自分へのラブレターなのかもしれない。

そんな、淡い思いを胸にもう一度見直す。


△朝挨拶をする。

・一緒にテスト勉強をする。

・体育祭でフォークダンスを一緒に踊る。

・文化祭で一緒の係になる。

・一緒に下校する。

・休日一緒に遊ぶ。


そこには、箇条書きされたものが書かれていた。

高校生なら誰しも、したいことがしっかりと。

丸文字ではあるが、小さく、行間もそろえられ、きれいが似合う文字だ。


青春の甘酸っぱさを感じる内容に、書いた本人の真面目さも伝わるようなページ。

書き直したであろう、消しゴムで消した跡もいくつかある。


紙にわざわざ書くのだから、相手への本気度はしっかり伝わる。

これを書くのに、きっと好きな人のことを思いながら書いたのだろう。

楽しかったんだろう、文字を見るだけで、楽しさ嬉しさがなぜかわかる。


そんな内容に、同じ高校生として、共通の理解者としてエールをこめて書き足す。

今考えれば、勝手に見て、勝手に書いて、ノート本人にしてみたら、黒歴史を見られたようなものだ。


もし、バレたらしっかり謝ろう。

月の光が微かに照らす、廊下を歩き、ノートの内容を思い出す。

自分も好きな人と、そう妄想しながら、淡い心が濃くなっていく。

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