第57話 アルヴィスは無自覚クラッシャー

ククク、もうすぐで溜まるぞ。


教皇選挙のための金、あのクソアルヴィスを始末するための金。


そもそも、何で儂が使徒を使うのに金がいるのだ。


儂の命令を大人しく聞けば良いものを。


しかし無条件で使徒に命令できるのは、今のところ教皇猊下ただ一人。


「まあ、良い。儂が教皇になれば済む話だ」


その準備は着々と進んでいる。

操りやすい皇太子には、あの女をあてがった。

いずれ皇帝につけば、儂の後押しをしてくれるだろう。


「傀儡の皇帝とはいえ、教皇になるには表向き皇帝の印が必要だからな」


建前として、教皇は皇帝に指名を受ける。

実際にはこちらの方が権力が上回っているが、そこは昔からの儀式だとか。


「儂が教皇になった暁には失くしても良いかもしれん。既にこの国は教会なしでは生きていけないのだから」


回復魔法を使える才能の者は、見つけ次第攫っている。

水魔法が使えるからといって、誰もが使えるわけではないが。

そもそも、教会に秘匿されてる書物がないと覚えられない。


「アルヴィスについては謎だが……殺して仕舞えば良い」


そのためには部隊長では役に立たん。

いっそのこと、暗殺者でも雇うか。

どちらにしろ、金が必要なのは間違いない。


「だが、それについても心配はいらない」


闘技場の一つを抱き込み、儂が采配できるようになった。

冒険者として活躍していた獣人を人質を使って脅し、闘戦士として使うことに成功した。

八百長を使いつつ、上手くコントロールして稼ぎを出してきた。


「もう八百長は嫌とかいうから、違法ドラッグを使う羽目にはなったが……もうすぐ貯まるし問題あるまい」


後はこちらで用意した選手に勝たせて、最後に一儲け出来たら良い。

そうすれば、そこそこの金にはなるはず。


「ククク、待っておれ、ユリアよ。アルヴィスを始末すれば、お主は誰も助けてはくれまい」


小賢しいことをしてくれたが、ここはプラスに考えるとしよう。

一度希望を持ってしまった者を絶望に叩きこむのも一興なものだ。

まさしく、スパイスとなるに違いない。

よだれが出そうになるのを堪えると、扉を叩く音がした。

許可を出すと、部下が慌てて入ってくる。


「何事だ? 儂の部下なら、もっとエレガントにだな……」


「大変です! 闘技場に近衛騎士が監査に! そしてカイルは負けて何処かに逃走いたしました!」


「な、な、何じゃと!? ま、待て! 監査はどうとでもなる! カイルも代わりの者が……それまで賭け金で貯めた分は?」


「な、謎の人物……レオンを名乗る赤髪の男が勝ち、全ての売り上げを持って行きました」


「……あばばばば」


「お、お気を確かに! 誰かァァァァァ! 回復士を連れてこい!」


ば、馬鹿な……儂が精魂かけて貯めた賭け金が……教皇になるための道が。


何より、ユリアを手に入れるために雇う金が。


そのまま部下の声が遠くなり、儂は暗闇に沈んでいくのだった。

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