第49話 ある意味正解

そうと決まれば善は急げだ。


今の俺に怖いものなど何もない。


何せ、推しに『好きです』と言われた男だ。


ならば、ここで助けないという選択肢はない。


まずは急いでガロンの元に向かう。


「ガロン! 変身道具はあるか!?」


「きおったか……何かあったか?」


「うむ、早急に必要になった」


「そうか。ならば、すぐに説明しよう」


ユリアと共に奥の部屋に通され、何やらペンダントを渡される。


「これは?」


「それが変身道具じゃ。ペンダントに宝石のようなものがあるじゃろう? その水晶の色に対応した髪色になるアイテムじゃな」


「なるほど……俺は赤髪で、ユリアの髪色に近くなるのか」


「私は銀色ですね……ふふ、御主人様の色です」


「そういうことじゃ。たまたま、その二つしかなかったが良かった。後は魔力を通せば色が変わる仕組みじゃ」


確かに自分の髪色のアイテムしかなかったら困るところだった。

ひとまず、言われた通りにペンダントを首に掛けてから魔力を通す。

すると、鏡に映る自分の髪色が銀から赤に変わっていく。

同時に隣にいるユリアも赤から銀へと変わった。

妖艶な姿から一変し、まるで銀の妖精のような姿に見えた。


「ほう……中々良いではないか。それにしても、髪色だけでも大分印象は変わるな(ァァァァァ! これはこれで良い!)」


「ふふ、ありがとうございます。御主人様も、良くお似合いですよ。そうですね、御主人様も大分違うかと」


「ワシから見ても印象は変わったわい。髪色とは第一印象を決める一つ、それが変わればぱっと見や知り合いでなければ誤魔化せるだろう」


「確かにそうだな。ガロンよ、感謝する。報酬はいつもので良いか?」


「うむ、たっぷり用意してくれ」


その後、俺は氷製造機と化す。

そしてヘトヘトになって屋敷に帰る頃には、夕方になっていた。

ユリアが風呂に入ってる間に、セバスを呼び出す。


「セバス、闘技場は知っているな?」


「ええ、もちろんです。教会が出資している非合法なものかと」


そう、闘技場とはそういう存在だ。

こちらも国としては認めていないが、奴隷オークションよりはマシな部類だ。

ガス抜きの意味合いでも見逃されている。


「そうだ。いくつかあるが、最近新しい獣人の男が入った場所を知りたい」


「御意。すぐに調べてまいりますのでお待ちください」


「ああ、頼んだ」


厄介なのが、必要性がある故に無茶はできん。

そのためにも、変装は必須であるということだ。

ただ、推しに良いところを見せたいのである(キリッ)



……ふふ、本当に優しい方。


体を洗いながら、最近までの出来事を思い出す。


一緒の部活に入ったこと、一緒に鍛錬をしたこと。


「多分、私に合わせてくださったのでしょう」


部活などは私に好きなものを選ばせて頂きましたが、茶道部など御主人様の趣味ではなさそうですし。

いつも端っこにいて正座をしながら、瞑想をしていますし。

テニスは普通にやってますが、私かアーノルド君以外とはやりませんし。


「御主人様には部活など必要ないのでしょうね……私は一緒で嬉しいですけど」


どうして、こんなに良くしてくれるのはわからない。

私はまだ、何も返せていないのに。

洋服だってお願いしたら、選んでくれて嬉しかったな。


「まさか無償の愛情……? ふふ、そんなことはあり得ないわ」


御主人様を信用してないわけじゃない。

ただ両親には道具として育てられ、婚約者には捨てられ、グフタフ卿には体目当てで買われそうになった。

皆、そこには何かしらの思惑や欲があったから。

だから、無償の愛情など……私にはわからない。


「でも、今日の対応も御主人様にとってはリスクが大きい」


獣人を助けたことも、無罪にしたことも。

それに、闘技場に向かうことも。

それらは私が皇妃を目指す上で、どうにかしたかった案件だった。


「私がしたかったことを、御主人様はわかってらっしゃる……? ううん、それだとまるで私の為ってことになっちゃう」


単純に御主人様が誇り高いのと、お優しい心の持ち主だからに違いません。


そして私は、そんな御主人様を支える為に全力を尽くすまで。


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