第26話 交渉成立
……しまった。
ドワーフ製の値段を見誤っていた。
まさか、金貨が数枚いるとは。
推しに恥をかかせるなど、推しとして失格である。
「儂は別に分割でも構わんぞ。流石に値段が高いのは自覚しておる」
「ご、ご主人様、私は良いですから……こんな高価なものを」
「待て、俺を舐めるでない。メイドに恥をかかせる事、それ即ち主人の責任だ」
目の前には赤いショートパンツ姿に黒タイツに黒ブーツ。
上は赤のレザージャケットに、インナーには白のTシャツ。
身長と高いのとスタイルが良いのが相まって、素晴らしいプロポーションだ。
服の派手さに、本人が負けていない。
そして、値段も負けていない。
まあ……俺が可愛くて最上級のモノを用意せよと言ったからだが。
「ふむ。では、まずは装備の説明からしよう」
「う、うむ(いかん、見惚れてるのがバレる)」
「赤の上下はレッドドラゴンの皮を使っておる。どんな炎であろうと防ぐじゃろう。弱点である水もある程度は弾いたり軽減も期待できる」
「あ、あのレッドドラゴンの皮……!?」
「うむ、そうじゃ。まずは先に話を進めるとしよう。白いTシャツにはデビルスパイダーの糸が使われていて毒を防ぐ。ブーツやタイツには黒狼の素材が使われており、耐久性に優れておる。更には虫などが嫌いな素材も練りこんでおるので冒険者向きじゃ」
ふむふむ、俺の要望にはきちんと応えているな。
圧倒的な防御力と可愛さを備えている。
虫除け効果も良いし、これなら推しであるユリアに相応しい。
ただし……高いわけだ。
それは、隣にいるユリアを見れば一目瞭然である。
「デビルスパイダー、黒狼……どちらも、冒険者高ランクの魔獣です」
「ほう、そうなのか」
「これでも値段は下げた方じゃ。それに、これも手は抜いてないが、まだ上の商品もある。そちらは白金貨がいるがな」
「くっ……」
流石に白金貨は無理だ。
ユリアをオークションで落とす際に、八割方の資金を使ってしまった。
しかしユリアはまだ狙われてるし、破滅から逃れていない可能性もある。
ならば、装備は良いものを用意してあげたい。
「ご主人様……お気持ちだけで嬉しいです」
「いや、ここで引くなど俺が自分を許せん(推しのために!)」
「ならどうする? 金がなければ、何か他の物で代用するかのう?」
そう言い、エールを一気飲みする。
客の前だというのに、何という豪快さだ。
……ん? ドワーフは酒が好きなのか?
「くくく、減らす口もそこまでだ」
「何じゃと?」
「そのコップを貸すと良い」
「……ふむ、良いじゃろう」
コップを受け取ったら、その中に白い氷を発動させる。
それを渡すと、ガロンがまじまじと中を眺めた。
「何を入れおった?」
「それは飲んでのお楽しみだな」
「ふむ、儂に毒は効かないが……飲んでみるか……これは……ゴクゴクゴク」
飲んだ瞬間に目が見開いて、ものすごい勢いで飲み干していく。
そして、飲み終わった後……俺の肩に手を置いた。
「お主、何を入れた?」
「俺だけが使える氷魔法だ」
「なんと、これが伝説の氷魔法……古に使い手がいたと言われている」
この大陸は暖かく、基本的に氷というものはないらしい。
昔はあったり、使い手もいたらしいが。
それに関しては推測は出来るが、不確かなので今は語るまい。
「それで、どうなのだ? それで代金の代わりにはなるか?」
「無論じゃ! こんな美味い酒を飲んだのは初めてだ! 何より、お主にしか使えないなら希少価値がある。この装備を作れるのが、儂しかいないように」
「では、交渉成立だ。ありったけの氷を用意するので、この装備一式を売ってもらおうか」
「うむ、任せるが良い」
そうして、俺たちは再び握手を交わす。
ちなみに、その後……めちゃくちゃ氷魔法を使って魔力を消費することに。
ただ、推しのためなら安いものである。
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