第21話 グフタフ視点

……ぐふふ、もうすぐだ。


もうすぐで、ユリアが手に入るぞ。


皇太子の周りにユリアの悪い噂を流し、それによって奴は孤立化した。


秘密裏に奴に近づく女の後押しをして、後は待つだけ。


そして、何もかもが驚くほどに上手くいった。


ユリアは婚約破棄され、かの家は商売に失敗して破産した。


その責任を娘に押し付けさせ、はした金を渡したら何処かへ消えていった。


流石の私も侯爵家の娘を買うことは普通なら出来ない。


しかし、これで……ようやく、あの澄ました顔を絶望に染めてことが。


「ぐふふ……はっ」


目を覚ますと、そこは自室だった。

どうやら、夢を見ていたらしい。

そうだ、さっきまで女共と戯れていたのだった。


「今の夢は奴隷オークションの前日か」


……おのれぇぇぇぇ!

あのクソ皇子がァァァァ!

思い出すのと、はらわたが煮え返る。


「クソクソクソクソ! 奴のせいで、儂はとんでもない恥をかいた!」


枢機卿たる儂が金争いに負けた上に、公衆の面前で泡を吹いて倒れるなど。

そんな恥は生まれて初めてだし、あってはいけないこと。

例え、相手がこの国の皇子だとしてもだ。


「我々のおかげで国を維持出来ているというのに……たかが第二皇子風情が」


金を集めてるのは知っていたが、まさかあれ程とは思わなんだ。

腐っても公爵家の血筋ということか。

相当な融資を受けてたに違いない。


「おのれ、もう少し用意しておくべきだった」


あれくらいで足りるだろうと思い、その前に散在してしまった。

流石にこれ以上使うと、教皇猊下に何か言われてしまう。

教皇戦が近い今、失点はなるべく避けたい。

そんなことを考えていると、ドアノックの音がする。

部下の声がしたので、入るように命じた。


「グフタフ様、お眠りのところ申し訳ありません」


「許そう。丁度、目が覚めたところだ。それで、良い知らせだろうな?」


「それが……失敗したと。遠くから見ていた者の話では、一瞬のうちに全滅させられたと」


「……なんだと? そんな馬鹿な!」


確かに一度は撃退されたが、彼奴らは女が隊長の弱い部隊。

しかも情けないことに生きて帰ってきた。

儂に脅威を知らせるためだとかほざきおって。

だから他の部隊長に依頼をしたのたが……。


「事実でございます。それで、如何なさいますか? 流石に、あまりやりすぎるわけには……」


「ええい! わかっておる! 教皇選挙が控えてる今、隙を見せるわけにはいかん」


「それもありますが、国王がどう動くか」


「ふん、あんなお飾りは放っておけば良い。所詮、我々がいないと成り立たない国だ」


回復魔法を一手に担う我らは、生殺与奪せいさつよだつけんを握っている。

怪我や病気をした時、我々に頼らざるを得ないのだ。


「そうですが……」


「それより、ユリアのことだ。あれを諦めるわけにはいかん。何か作戦を考えよ」


「……わかりました」


「うむ、早く連れてこい」


数年前から目をつけていたのだ。


どんな手を使ってでも、必ず手に入れてみせる。

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