第12話 ラッキーナンチャラ
イテテ……これは全身が筋肉痛だな。
やはり、生まれ持った才能に油を売った結果か。
痛む身体をどうにか起こし、ベットから出る。
すると、コンコンとノックの音がした。
「ご主人様、入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、問題ない」
「失礼します」
入ってきたユリアは既に紺のブレザーに着替えていた。
その姿は愛らしく、直視することすら憚れる。
……ウォォォォォォ! 可愛いぞォォォ!
サイドテールなのがまた良い!
「ど、どうでしょうか?」
「ああ、良く似合っている」
「私はメイドでも良かったのですが……」
「それは許さん、俺はそんな美しくないことはしない。それに、きちんと学校に通うと良い」
これは昨日散々話し合った。
皇族であればメイドを連れていてもおかしくはないが、基本的に学校では禁止だ。
何より彼女が最終的に学校に行きたいと願ったのだ。
「はいっ、ありがとうございます」
「う、うむ」
「ご主人様? 悶えておりますが如何なさいました?」
「い、いや、大したことはない。少し身体が重くてな」
「ふふ、実は私もです。気をぬくと足がガクガク……」
「いや、ガクガクしてるな」
良く見ると、まるで産まれたての子鹿のようにプルプルしていた。
何あれ! 可愛いのですけど!
「うぅー……恥ずかしいです」
「ふっ、まだまだ修行が足らんな……あべしっ!」
歩きだそうとした瞬間、顔面から盛大に転んだ。
痛みは大したことないが、恥ずかしさで死にそう。
「……ふふ、ご主人様だってガクガクじゃないですか」
「え、ええい! うるさい!(なんだこれ!? なんか楽しい!?)」
「引っ張りますので立ってください」
「ま、待て、今それをしたら……」
「きゃっ!?」
当然体重を支えきれずに、ユリアが後ろに倒れこむ。
どうにか頭の下に手を入れることに成功したが……これはこれでまずい!
完全に押し倒してるゥゥゥゥゥ!
髪がばさっと広がる感じ! 何この景色! 最高なのですが!
「へ、平気か?(俺は平気じゃないよ! 心臓出そう!)」
「は、はいっ、私は何とも……っ」
すると、両手で顔を隠してしまう。
ァァァァァァァァァァ! 逆に良い!
……落ち着け、これではまるで変態ではないか。
「と、とにかく、起き上がるぞ」
「は、早くしてください……いえ、むしろこのまま」
「何だ!?(余裕がなくて聞こえん!)」
「な、なんでもないです!」
俺は全神経を集中させ、どうにか起き上がろうとする。
しかし中々身体は動いてくれない。
これは筋肉痛云々ではなく……俺自身が拒んでいるのか。
ええい! アルヴィスともあろうものが情けない!
「ウォォォォォォ!」
「おや、朝から騒がしい思えば……これはこれは、仲がよろしいことで」
「あらあら、朝からお盛んですか。これは学校にお休みだと連絡した方がよいかしら」
「なっ——」
しまった、二人に気を取られて力が抜け——。
次の瞬間、俺の頭は何か柔らかいモノに包まれた。
「キ」
「キ?」
「キャァァァァァ!?」
そして、ユリアの叫び声が響き渡るのだった。
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