第11話 ベネズエラへの道

「やっぱり亜音さんは凄いですぅ」



ダウンフォースを最低にして、勢いで瓦礫の山を飛び越えた。そして無事にガイアナへ入国。



私たちの行く先に、道なんて必要無い!Where we're going, we don't need roads



今まで言いそびれていたけど、やっとあの名ゼリフが言えたわ。



「ガイアナもほぼジャングルよね。次のベネズエラ入国が鬼門になりそうね〜」



***



――現在時刻は、4月29日 午前10時。


300kmほど走って、あっという間にベネズエラとの国境が近くなってきた。



「亜音さん!すぐに車を停めてください!」



スコープで前方を確認していた姉さんが大声を上げた。避難スペースがあった為そこに停める。



「なにかヤバい事があったのね?」



姉さんは真剣な顔で私を見て頷き、またスコープを覗いた。私も望遠鏡で確認する。


ここから2kmほど先から国境まで、道の左右に軍隊の装甲車が列を成している。国境には完全武装の兵士たち、据え置き型の自動追尾バルカン、コンテナを改造した簡易トーチカ、それに何台もの軽戦車……。



「あの武装を見ると、強行突破どころか国境手前1kmでやられちゃいますねぇ〜」


「……あらま。どーしましょ」



ハイウェイを降りるにしても、下はジャングルで道はない。反対車線で引き返すにしても、間には高さ1mはある、分厚いコンクリートの壁。



「進むしかないですね。もうすぐ雨も降り出しそうですし」


「装甲車は全速でぶっちぎったとしても、バルカンとかトーチカは待ち構えられていたら無理じゃない?」



姉さんは「まあ、時間もあまりないので」と言いながら、車を降りて通り過ぎるトレーラーの荷台を見ている。ワイルドなスピードの予感……。


暫くすると、かなり大型のトレーラーが遠くに見えた。姉さんが突然飛び出し、両手を広げて静止させる。「ボクは死にませーん」と言った。



「どんなに好きでも死ぬ時は死ぬわよ!」



すんでの所で横に跳んでトレーラーをかわす姉さん。そのまま立ちはだかってたら死んでたわね。

トレーラーは急ブレーキをかけてすぐ先で止まると、中からドライバーが降りてきた。普通にリボルバーをぶら下げている。怖い世界ね〜。


タトゥーびっしりのガタイのいいオッサンが、ブチ切れながら歩いてくる。そして何も言わずにリボルバーを姉さんに向けて構えた。


はい、先に銃口を向けたのはそっちだからね〜。


私は腹部と心臓に1発ずつ、久しぶりの愛銃で撃ち抜いた。いい仕事してくれるわね、380オートちゃん。



「姉さんが最近、昔のトレンディドラマばっかり見てたのは知ってたけど、命懸けのシーンを真似するのはやめてほしいわ」


「いえいえ〜、真珠湾攻撃しちゃう人には言われたくありませんよ〜♪」



うん。そうよね。



「で、こっからどうすんの?」


「私がこのトレーラーで検問まで近づきますので、荷台の下に車ごと隠れて来てください〜」



麻のお薬の葉っぱが満載の荷台の下を覗き込む。地上高は1mちょっとくらいかな。一度トレーラーを路肩に寄せてから、慎重にR390を動かす。姉さんが「オーライ、オーライ」とガソリンスタンドの店員さんのように誘導すしてくれる。



「おお、スッポリ入れたわね」


「あの映画、絶対にウソだと思ってましたぁ」



あとは荷台に置いてあった幌の一部を切り取り、横にくくりつけてカバーする。これでまあ、いちおうR390はほとんど見えないわね。



***



時速30kmでゆっくり進む。



『もうすぐ検問です。減速します』


「あいよ〜」



姉さんは、さっきのトレーラーのドライバーから拝借したキャップと上着を羽織り、装甲車地帯を切り抜けた。私もトレーラーの前後のタイヤとの距離に気をつけつつ慎重に進む。



『一旦止まります』


「あいよ〜」



スマホの通話は繋げっぱなし。姉さんが検問直前の警備兵と話をしている。



『…今日の配達はお父ちゃんに頼まれたんだよぉ。通しておくれよぉ〜』


『嬢ちゃん、じゃあちょっと降りてこっちに来な。こんな可愛い嬢ちゃんを送り出した父ちゃんを恨めや』


『あれ〜、やめておくんなまし〜!』



『パンッ、パンッ!!』


よし、はじめたわね。



『亜音さん!行きますよ!』


「あいよ〜」



姉さんが荷台を切り離し、急ハンドルを切ってトレーラーヘッドを発進させた。そのまま検問所に斜めに突っ込んでバリケード代わりに。



『大丈夫です。右側から出ちゃって下さい』



R390を荷台の下から動かす。周囲を見るとガトリングやら軽戦車はトレーラーの向こうだ。


こちら側は……目の前にコンテナを改造したトーチカと機関銃。やば、目の前に出ちゃった。検問のゲートは後ろ側だ。



『ドンッ、ドンッ、ドンッ!』


姉さんがトレーラーを降り、M700で撃ちながら走ってきた。トーチカの機関銃はあっという間に沈黙。そしてすぐにR390の助手席に飛び乗る。


警備兵がうじゃうじゃと集まってきた。私はRレンジに入れてアクセルを全開にする。そのまま全速で後退して検問を目指す。


警備兵が銃を構えるが、相手が撃つ前に姉さんが仕留める。相変わらず早い。フルオートで精密射撃をしているかのように、1発も無駄撃ちせずに確実に撃たれる前に敵を倒す。


私も車のオートクルーズをオンにしてから、シートの座面に立ち上がる。ルーフのハッチを開けて左右にいた兵隊たちをAKSで蹴散らす。



そのまま車は後ろ向きで検問所のゲートを突き破って、ベネズエラ側に入った。

私はすぐに車内に戻り、その場で車をターンさせてアクセルを全開まで踏み込む。


後輪を空転させながら全速力で離脱する。後ろからはまだ銃声が響いてくるが、今は無視だ。



***



「亜音さん。肩から血が出ていますよぉ」


「あれま、かすったのね。まあ、このくらいなら……」



少し傷口に集中すると、すぐに傷が治った。私も知らぬ間に魔術の使い方が分かってきたようね。



「ふへぇ〜。これで一段落ですねぇ」


「で、ベネズエラ国内は大丈夫なの?」


「治安は最悪中の最悪ですよ〜」

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