第2話
◇
同期とのランチから帰ってきて化粧室でメイクを直していたら、いつの間に入ってきたのか「すみれ先輩、すみれ先輩」とウフウフ笑いながら近づいてきて、私の二の腕をツンツンとつつく可愛い後輩。
「はいはい、なんですか美紀ちゃん」
「今日はなんだか朝からご機嫌ですね?」
本当に鋭いんだから。
化粧室から出てもその話題は終わらなくて、デスクに戻りながら美紀ちゃんから「そのワンピースは新作ですか?」とか「アイシャドウはルナソルですね?」とか質問攻め。
「二階堂さん、帰ってきましたもんね」
「……うん」
「今日は先輩の誕生日ですもんね。デートですか?」
「うん……」
「やだ! 先輩可愛い! 今の『うん』ってもう一回言ってください!」
「もー美紀ちゃん」
そう言いながら何気なしにスマホを見てみると、新着のメッセージが来ていた。開いてみれば、それは翔くんからで。
嬉しいはずの彼からの連絡なのに、その二言の文面だけで彼は私を真っ暗な谷底に突き落とす。
【ごめん。今日行けなくなった】
翔くんに会えると思って綺麗にしてきた髪も、メイクも、それからおろしたてのワンピースも、全てが急に色褪せて見える。こんなことは初めてではないけれど、海外出張に行く一週間前からずっと二人で会えていない。
自分のデスクまでよろよろと戻り、椅子に座ると机に突っ伏した。
(翔くんのバカ。出張の間だって、ほとんど連絡とれなかったのに)
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