レベルを上げれるのは俺だけの特権

ウメとモモ[[現在執筆中]]

第1話 スキルという恩恵



 春の気配が混じり始めた大学のキャンパスは、どこか浮き足立っていた。

 卒業間近。

 講義もほとんど終わり、みんなが未来の話を口にし始める時期だ。


 俺――**篠崎 蓮(しのざき れん)**は、ベンチに座りながら、ぼんやりと空を見上げていた。


(……卒業か)


 学生生活は楽しかった。

 だが、この4年間ずっと胸の奥に引っかかり続けているものがある。


 この世界では、人は皆、生まれた瞬間にひとつだけ《スキル》を授かる。

 料理の才能を上げるもの、身体能力を強化するもの、魔物と渡り合う戦闘スキルまで様々だ。


 強いスキルを持つ者は“冒険者”になれる。

 国に認められ、人々に頼られ、名誉も金もある特別な職業。


 けれど俺のスキルは――


【経験値】

 勝負に勝つと“数値が貯まるだけ”。


 レベルという概念が存在しないこの世界では、その数値に意味はなかった。

 どれだけ貯まっても強くならず、スキルが進化することもない。


 幼いころは「新しいタイプかもしれない!」と期待されたが、結果はただの“死にスキル”。


 努力したけど、何も変わらなかった。


(だから俺は……おちゃらけるしかなくなったんだよな)


 本気を出して何も得られないより、冗談でごまかして笑ってたほうが楽だった。


「おーい、蓮!」


 突然肩を叩かれ、振り向く。

 そこにいたのは親友の――


「蒼生(あおい)! お前、相変わらずうるせぇ声してんな」


「うるせぇわ! お前こそ、またひとりで黄昏れてんのかよ」


 日向 蒼生(ひなた あおい)。

 茶髪で鋭い目つきの、昔からの相棒だ。


 こいつのスキルは――【力位上昇(ブレイクレベル)】。

 戦闘時に身体能力が段階的に跳ね上がる、ガチの“当たりスキル”。


 冒険者ギルドの研修枠にも決まり、将来を期待されている。


 羨ましくないわけがない。


「あっ、蒼生に先越されたー


蓮やっほー!!」


 そこへもう一人が歩いてくる。黒髪を一つに束ねた、スラッとした幼なじみ――



「玲奈(れいな)さんは今日も美人でございますね。俺の心が震えるわ」



「その軽口、何年経っても成長しないよね」


「いや俺は永遠に進化し続けるおちゃらけ系男子なんで」


 春川 玲奈(はるかわ れいな)。

 幼い頃からずっと一緒で、面倒見がよく、俺たちをまとめる姉御役だ。


 彼女のスキルは――【空間把握(スペースセンス)】。

 ダンジョン内の地形や敵の位置を立体的に捉える、探索系の優秀スキル。


 その実力を見込まれ、卒業後は有名冒険者チーム【蒼牙の旗(ブルーファング)】への加入が決まっている。


「蓮、聞いてよ。今日正式に契約書届いたの」


「おお……すげぇな。本当にあのチームの一員になるのか」


 嬉しい。

 本心から祝福したい。


 でも同時に――胸の奥がじくりと痛む。


(一緒に冒険者になる夢……2人だけが叶えてるな)


 そんな弱い感情を押し込め、笑ってみせる。


「おめでとう。マジですげぇじゃん」


「蓮、ありがとう」


 玲奈がふっと笑う。

 その笑顔を見ると、やっぱり自分が取り残されている気がした。


「そういやさ、蓮。最近お前のステータス見てねぇよな。見せてみ?」


「やめろ黒歴史ツアーか? 拷問だろ」


「いいからさ、たまには見せてくれよ?な?」


「あ、私もみたいかもー!!」



 2人に押し切られ、久々にステータスを開く。開いたステータスは最後に見た光景と一緒だと思っていた。



────────

【スキル】経験値

現在経験値:11546

────────


「……え?」


「なにその顔。トイレ行くか?ちびったか?」


「行かねぇよ!!ち、ちびってねえよ!!」



 ちょっと待て。数値がおかしい。

 ここ数年、まともに勝負なんかしてないのに――“一万越え”。


(いや、それより……)



 その数字が“触れる”のが解る。



 画面上の経験値に触れられるような、明らかな感覚がある。



 試しに意識をそこに伸ばすと――


────────

【レベルを上げますか?】

YES/NO

────────


「……え?……は?ふぁ?こひょお!?」



 思考が止まる。



(レベル、れべる?ルゥエベル?……本当に……あったのか?)



 世界には存在しないと思われていた概念。

 “経験値”が“レベル”と繋がっている。


 つまり――


(1万貯めないとレベル1にもならない仕様だった……?)


 22年間。

 誰も気付かなかったのは当然だ。

 俺自身も、こんな条件を検証しようなんて思わなかった。


「蓮? 本当にどうした?もしや本当に‥」


「いや、ちょっと……腹痛いわ、うん。人生最大級の腹痛だ。よしトイレに行かないと!!」


「蓮‥っておいい!本当にう●こかああああ!!!」


 蒼生の言葉を振り切り、俺は建物の裏に逃げ込む。


 胸が騒ぎすぎて呼吸が落ち着かない。


(押すか……? 本当に……?)


 ずっと無価値と言われ、諦めていたスキル。

 笑ってごまかし続けた俺の人生。


 でも、もし――


「……あぁもう、いくしかねぇだろ」


 震える指で“YES”に触れた。


────────

【レベルを獲得しました】

Lv.0

────────


 瞬間、体の奥が熱を帯び、視界が少し鮮やかになる。


 呼吸が深く入り、気持ちがすっと研ぎ澄まされていく。


(……本当に、レベルが……?)


 初めて得た“確かな変化”。

 本当に成長したという感覚。


「……やっと、スタートラインだな


というかこんなに経験値貯めないとダメなん鬼畜過ぎんか!?」



 今俺は笑ってる‥いや泣いてる?なんかスッキリしてるようなフルマラソン走りきったような‥ああ、これ嬉しいんだな。久しぶりの感覚だ。



 置いていかれていた背中に、少しだけ手が届いた気がした。



やっとか



やっと報われるのか


 

自分の人生はモブだと思っていた



「違うじゃんな。よしゃ。良くやったぞ篠崎 蓮よ!」



努力をしないで後悔する奴はいても努力をして後悔する奴はいない。




俺の父ちゃんが良く言っていた。大きな間違いだと思った。その言葉を好んでた父ちゃんが嫌いだった。




「ごめんよ父ちゃん‥努力したら本当に後悔はしないわ」




どれだけ頑張ってもダメだった。自分の事も嫌いになった。



でも今は違う。





「こっからだ!!」



俺はまだ強さを求めて良いんだ。










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どうも作者のウメとモモです🙇‍♀良ければ高評価良いねお願い致します🙇

ヤル気を!!元気を分けてください🙇‍♀🙇‍♀

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