わたしだけのよる

瑠衣

#0

今日、わたしはきみと手を繋ぐ夢を見た。

いつものように別れの時間が近づいて、そっと手を伸ばしたとき、きみのビデオ通話が鳴った。繋ぐのをやめようとしたわたしの手を、きみはもう一度しっかりと握り直してくれた。まるで、「ここにいていいよ」と許されたみたいに。


移動するときも、言葉ひとつなくわたしを導くように引いてくれる。通話中なのに、まるでこの物語の主人公がわたしなんじゃないかと錯覚してしまうほどで、あたたかくて、きみの手は思っていたよりも小さい。


試しに少し強く握り返してみると、きみも同じ強さで返してくれる。それが嬉しくて、何度もついやってしまう。


目が合わなくても、ちゃんと心が通じている――

そんなことを感じる夜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたしだけのよる 瑠衣 @nitij_rui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画