第8話 🏯 美濃の賢人、竹中半兵衛との邂逅

 桶狭間の敗戦で信長の「熱」が冷めた今、健斗は塔野の**「冷徹な論理」に対抗するため、彼自身が持つ「知恵」と、虎次郎の「純粋な熱」を組み合わせる必要性を感じていた。塔野が今川義元の参謀として東海道を固めるなら、健斗は美濃**を拠点とし、対抗勢力に潜り込むのが最善だと判断した。

 美濃は、織田・今川に対抗しうる有力大名、斎藤義龍が治めている。

​  

 📚 運命の出会い、竹中半兵衛

​ 健斗は虎次郎とつばきを連れ、美濃の山中で、斎藤家の要衝である稲葉山城(後の岐阜城)へ向かう道を探していた。その途上、彼らは、野で静かに読書に耽る一人の若者に遭遇した。その若者は、身なりは質素だが、ただならぬ沈着冷静なオーラを放っていた。

​「殿、あの方…武士ではなさそうですが、妙な熱を感じます」と、虎次郎は直感的に囁いた。

 ​健斗は、その若者に見覚えがあった。彼が後世で書こうとしていた歴史小説の登場人物、**竹中半兵衛重治たけなか はんべえ しげはる**だ。まだ若いが、その炯眼は既に天下を見通しているように見えた。半兵衛はどことなく上田竜也に似ていた。

​ 健斗は意を決し、歴史の知識を試すように声をかけた。

​「若殿、ご高名と存じます。あなた様は、この美濃の国に、**『信義』と『合理』**のどちらが必要とお考えか?」

​ 若者は静かに顔を上げた。

​「旅の者よ、面白い問いかけですな。乱世においては、**『合理』なくして生き残る術はありませぬ。しかし、『信義』なき『合理』は、いずれ人心を失い、砂上の楼閣と化すでしょう。故に、『合理的な信義』**が必要かと」

 ​その答えは、塔野の**「冷徹な論理(合理的)」と、信長の「狂気の熱(信義)」**を両立させようとする、健斗の現在の葛藤そのものに深く響いた。

​ 若者――竹中半兵衛は、健斗の異様な服装と、その深い問いかけに興味を持った。

​「して、あなた様は何者か?この乱世に、何を求め、何を憂いておられる?」

​ 健斗は正直に答えた。

​「私は、遠い国から**『時代の熱』を求めて参った学者です。そして、我が友の『冷徹な論理』**が、この国の運命を悪い方へ導くのを憂いておる」

​ 健斗は、自分が未来の知恵を持つことをほのめかし、塔野の行動(今川への献策)の危険性を半兵衛に説いた。半兵衛は、健斗の突飛な話に戸惑いながらも、その中に含まれる地形、兵站、そして心理戦に関する未来的な洞察に、ただならぬ知性を感じ取った。

​「ふむ、あなたの言う**『冷徹な論理』を持つ者がいるとすれば、この美濃も安泰ではない。面白い…私の主君、斎藤義龍公に仕えてみてはいかがか。あなたの『知恵』**は、この美濃を大いに助けるでしょう」

 🛡️ 斎藤義龍への士官

​ 半兵衛の推薦を得た健斗は、虎次郎とつばきを連れ、稲葉山城へ向かった。

​ 美濃の国主、**斎藤義龍さいとう よしたつ**は、父・道三を討った過去を持つが、その実力は当代随一と評される智勇兼備の武将であった。

 義龍は山田孝之に似ていた。『勇者ヨシヒコ』もいいが、『クローズZERO』の芹沢多摩雄が健斗の推しキャラだ。

 義龍は、織田信長を破り勢いづく今川義元との対決に備え、新たな戦力を求めていた。

​ 半兵衛の取り成しにより、健斗は義龍との謁見を許された。義龍は、健斗の**異様な出で立ち(Tシャツとジーパン)を笑ったが、その「異国の知恵」**を試すことにした。

​「旅人よ、今川の勢いをどう見る?」

​ 健斗は、塔野が義元に授けたであろう戦略を逆手に取り、堂々と進言した。

​「殿、今川は、**『絶対的兵力』と『完璧な情報網(塔野の知恵)』を頼みに攻めてきます。籠城は愚策。義元は『兵站』を重視するゆえ、我々は『兵站線』**を寸断する策を用いるべきです」

​ さらに健斗は、**「ゲリラ戦の概念」や、「後の時代の築城技術」**について、現代の知識に基づいた具体的な改善点を熱弁した。

 武力: 虎次郎とつばきを飢えから救い、山犬を追い払った現代的な格闘術。

​ 知力: 未来の戦略・情報に基づく、塔野の論理へのカウンター戦略。

​ 人柄: 孤児となった兄妹を連れ歩く優しさと、半兵衛が保証する誠実さ。

​ この**「知力と武力と人柄のよさ」の三拍子が、義龍の心を強く動かした。特に、義龍が持つ「猜疑心」**を、健斗が虎次郎とつばきを守る姿が打ち消した。

​「ふむ…奇妙な服装の異人だが、その眼には嘘がない。そして、その知恵は、まさに今川を打ち破るための神薬と言えよう!」

​ 斎藤義龍は、健斗に**「足軽大将」の地位を与え、「藤原健太ふじわらのけんた」**の名を与えて斎藤家に士官させた。虎次郎は健斗の小姓となり、つばきは城下で働くことになった。

 💡 帰還への手がかり

 ​健斗は稲葉山城の片隅にある部屋を与えられ、そこで塔野への対抗策と帰還の手がかりを模索し始めた。

​ 彼の頭の中には、タイムスリップの式が再び浮かぶ。彼はこの美濃の地で、帰還に必要な**「媒介物質」と「周波数」**の代用品を見つけ出さねばならない。

​ ある日、竹中半兵衛との談義の中、半兵衛は彼に、美濃で古くから伝わる秘術について語った。

​「健太殿、この美濃の山奥には、**『正法寺の天狗』が持つという、不思議な『調合薬』の伝説があります。それは、飲む者に『千里を見通す知恵』**を与えるというが…真偽は定かではない」

​ 健斗はピンときた。この**『調合薬』に含まれる未知の『化学物質』が、現代のシャンプーに含まれていた界面活性剤(媒介物質$\eta$)**に代わる可能性がある。

​ また、城下を歩いていた虎次郎は、城の鍛冶場で、奇妙な**『音』**を出す金属加工を見かけたと言った。

​「健太殿、あの鍛冶屋の親父は、刀を打つ際、決まった拍子で、**『特殊な音色』の『鐘』を鳴らしておりました。聞くと、その『振動』で、刀の『熱』と『硬さ』**が変わるのだと申しておりました」

​この**『特殊な音色の鐘の振動』こそ、現代のラジオの周波数(\nu)に代わる、この時代の「周波数(振動)」**の代用品になり得るのではないか。

​ 健斗は、斎藤義龍の知将として美濃に仕えながら、塔野の戦略を打ち破り、この**『調合薬』と『鍛冶の鐘の振動』という二つの手がかりを追うことを決意した。彼の心に、ついに作家としての「熱」**ではない、**歴史に介入する者としての「使命の熱」**が灯り始めた。

​ 

 次なる行動

​ 健斗は、竹中半兵衛の力を借りて、**「正法寺の天狗の調合薬」**の探索に乗り出す。

 ​塔野が仕える今川軍が美濃へ侵攻を開始する。健斗は、その冷徹な戦略を打ち破るための作戦を立てる。

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