Blood Debt
黒宮ミカ
絶望と出会い
第1話
灼熱の太陽が、ジェームズタウンのタバコプランテーションを容赦なく照りつけていた。
広場に引きずり出された犯罪奴隷たちは、膝を地面につけさせられ、首に鉄の輪をはめられている。クロトもその一人だった。
「——以上の罪により、犯罪奴隷番号CE-2051-0947、処刑を執行する」
監督官の声が響く。
クロトの三人隣で、痩せこけた人間の男が震えていた。罪状は「労働拒否」。三日間、畑仕事をサボったという些細な理由だ。
絞首台が目の前に組まれている。
男は引きずられていく。悲鳴を上げる暇もなく、首に縄がかけられた。
「見ておけ。これがルールを破った者の末路だ」
監督官が手を振り下ろす。
ガタン、という音。
男の身体が宙に浮き、足が痙攣する。ゴキリ、と首の骨が折れる音。やがて、動かなくなった。
広場を囲む犯罪奴隷たちは、誰も声を上げない。恐怖で押し黙っているのではない——諦めているのだ。
クロトは、その光景を無表情で見つめていた。
(三人目か)
この一週間で、三人が処刑された。理由はどれも些細なものだ。見せしめ。恐怖による支配。クロトはその意図を理解していた。
だが、理解したところで何も変わらない。
ダークエルフである彼は、かつて暗殺者ギルドの見習いだった。師匠を裏切り、逃亡し、捕まった。その代償が、この犯罪奴隷としての日々だ。
「——解散! 持ち場に戻れ!」
監督官の怒鳴り声。
奴隷たちは無言で立ち上がり、それぞれの作業場へと戻っていく。クロトも、タバコ畑へ向かって歩き出した。
その時だった。
「……なあ、兄ちゃん」
隣を歩いていた、狐の獣人——フォックスマンが、小声で話しかけてきた。
クロトは視線を向けずに答える。
「何だ」
「あんた、ダークエルフだろ? 噂は聞いてる。元暗殺者ギルドの」
「……で?」
「俺と組まないか」
クロトは足を止めた。
フォックスマンは、にやりと笑う。
「俺はススリサー。元詐欺師だ。こんなところで腐るつもりはない。出るぞ、ここから」
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