“かみしばい”

吉本 冬呉

かみしばい

Ⅰ. 魅せて


例え人形だとしても


私は選んだ人形だから



夜を乗り越え 笑う人形


朝を迎えて 泣く人形


心はとうに隠してしまった


どこにいったかわからない



ワタシは人形 貴方が望めば


望みのままに動きます



ワタシは人形 みんなが望めば


望む通り動かなきゃ



さあさ よいも始まるよ


寄って見といで 聴いといで


御代は見てのおかえりです



Ⅱ. 豚



今日のえさはなんだろな


明日のえさはなんだろな


薄暗いちくしゃの壁をながめながら


えさが来るのを待っている



えさが出てくりゃお金を払う


ホントはタダで食べられるのに


自分をだましてお金を払う


それこそ幸せ それこそ生きがい


豚の幸せは 豚にしかわからない



お金を払えば時々は


自分の番号 呼んでもらえて


ブヒィと鳴いて喜んで


お金を払ったがある



たまにはちくしゃの外に出て


いつもより高いえさを食べに行こう


美味い美味いと泣いて喜ぶ


ホントはいつもより高いだけ


味も中身も変わりません



そのうちえさが出てこない


えさが幸せつかんで消える


豚が怒って暴れても


幸せなえさには届かない


豚が怒って悲しんでも


幸せなえさには響かない



たんに暮れる豚たちに


新しいえさ差し出せば


ブヒィと鳴いてフゴフゴ食べる


美味い美味いと金払う


世界は変わらず 世は事もなし



Ⅲ. 部位



わかったような顔をして


口だけ 文字だけ いっちょ噛み



上から目線で鼻高々に


口を出さずにいられない



求められてもいないのに


文字を書かずにいられない



優越感に浸りたい


誰かにすごいと言われたい



それなら貴方はいちゃいけない


貴方の居場所はそこじゃない



Ⅳ. 僕ちゃんの人生



目と目が合った 心が触れた


僕が君見て 君が僕を見て


二人の間に生まれたきずな



君が喋れば 世界はバラ色


君が笑えば 僕も笑って


君が泣いたら 励まして



君はとってもシャイだから


わからないこと わからないって


言いにくいこと知ってるよ


先回りして 教えてあげる



僕の全ては君にささげるよ


いつだって君を見守ってるよ



君は僕の全てだって


何度も何度も 言ったのに


なんで? どうして? 彼氏?


裏で繋がる? 他の男と?


僕ちゃんが君の彼氏なのに?



ただすために 赤い文字


ブロックされた 赤い文字


ようやく気付いて 何思う



あわれな僕ちゃんの人生は


誰にも乗らない 背負えない



Ⅴ. うんえい


元はと言えばかげもの


ニッチもニッチな商売でして


雲のかげで ゆらゆらただよ



人を集めることもなく


ひっそりやってたモンですが


ある時 皮をかぶってみると


これがどうして ウケまして


気付けば大きくなりやした



事が大きくなりやすと


初めは楽しくやってたことも


楽しいだけじゃいけねえと


こうさくでやってた事も


さくをしちゃあいけねえと



人が増えりゃあ しばりも増える


金が増えりゃあ ぜにも増える


悪いことじゃあ 御座いやせんが


息苦しくもなりやした



元はと言えば かげもの


雲のすきで ゆらゆらただよ


好きに勝手にやるのがふう


かくめんは肌に合わねえ



さあさ よいも幕を引こう


ここまでご視聴ありがとうございました


次の配信はまたSNSで


御代は見てのおかえりです

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“かみしばい” 吉本 冬呉 @Tougo_Yoshimoto

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