めぐりあひて
かえで
百人一首に魅せられて
第1話 めぐりあひて
図書館にて。
司書さん――
「いらっしゃい、めぐちゃん」
めぐというのは、私の名前だ。
月影めぐ。みんなからはめぐたんとか呼ばれてるけどね。
「こんにちは!町田さん」
町田さんとは友達だ。三十代くらいで、長髪でめがねをかけ、おっとりとしているそんな町田さんが私は大好きだ。
それにいつも私が図書館にいくと面白い本や新しく入った本を紹介してくれるんだ。
「新しい本はいったけど、読む?」
「はい!」
私はすぐに答える。小説だろうが何だろうが新しい本は読みたい。
図書館の本を全制覇するのが私の夢だしね。
町田さんがちょっと分厚めの本をくれた。
表紙には[百人一首]と書かれていた。
「百人一首……?」
私は百人一首についてはよく知らない。四年生くらいの時に習ったような気もするけど、もう約二年たって六年生になっちゃってるからなぁ。
でも興味はそそられたから、本を開いてみる。
「永世名人……」
作者紹介には永世名人・
永世名人って何?でも凄そうなことは伝わる。
開いてみると、歌の紹介が書いてあった。
秋の田の、春過ぎて、鵲の、あしびきの……
たくさんの歌と意味が書かれている。
その中で、一つ、気になる歌があった。
めぐりあひて みしやそれとも わかぬ間に
雲隠れにし 夜半のつきかな 紫式部
めぐ?つき?まさに私の名前じゃない。
どういう意味なんだろう。
久しぶりに会った友達が本当にあなただったか分からないうちにいなくなってしまったよ。まるで雲に隠れる月のように。
「えっ……」
私は思わず声を漏らしていた。
――まるで私、そのものじゃない
私には好きな男の子がいる。
でもクラスが離れて、会えたとしてもほんの少し。実だったかもわからないくらいだ。
ほんと、そっくり……。噓でしょ?こんな運命みたいな出会いある?
「めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに」
つぶやいてみると余計心にしみる。
私はその本を借りると、家に帰った。
そしてすぐに、近くの小さな本屋へ向かう。
「
「おお、月影さんじゃないですか。どうしたのかな」
「百人一首の本って、ありますか?」
そうきくと店主の二宮さんは百人一首の本を数冊、持ってきてくれた。
私はそこから一冊選んで、すぐに買った。
家に帰って買った本を読む。
百人一首。面白……。
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