極端な発想を積み重ねながら、「賢さ」や「信じること」をめぐる感覚に静かに揺さぶりをかけてくる掌編でした。描かれる思考や迷いはどこか身近で、人間みを感じられました。読み進めるうちに、笑っていいのか、それとも少し考え込むべきなのか、そういった曖昧さや心の揺れを文章をとおして読者に与える技術が見事だなと思いました。軽やかさと重さが同居した、不思議な余韻を楽しめる至極の一編だと感じました。