リーヴィング・マイ・オールド・ライフ・ビハインド
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第1話 見えざるもの
トワと言う名前だった。少なくとも昔はそうだったのだが、いつの間にかそう名乗ることはなくなった。名乗る必要のない場所にいるからそうなるのか、名前のほうがどこかに行ってしまうのか、私にはまだわからないことだ。
私には確か、両親がいるはずなのだが、それが存在したかもあやふやで、当然兄弟がいたかも覚えているわけがない。普通は、人間というのは、基本的にはまず二人の人間からスタートするのに、それを覚えていないというのは致命的だ。そもそも自分に家族が在るのか?そう言えば同じようなことをうんと昔に考えて、一所懸命に思い出そうと試みた。その時に無理だったなら、時の進んだ今ではなおさら記憶は遠ざかっている。もうこんなことをするのはよそう。
「家族」はまだ存在するのだろうか、と彼はふと気になった。気になることができるのは珍しい。気になると、たしか、前はそれを確かめるために足を運んだ。どうやって確かめようか、その時どうしていたかを思い出した。
トワと呼ばれていたものは、幾百年と組んでいた脚を解いて、重い体を押し上げて立ち上がった。大理石のように無機質で、肌にしては気味の悪い色をした手のひらを見てみたが、何もなかった。綿の服はつなぎ目がほつれて、袖口はボロボロだったが、服の役割は果たしていた。
自分のいる場所を思い出した。そこは「どこでもないところ」と云った。はっきりと覚えている。それさえ忘れては、命が消えてしまう。トワは7歩くらい歩いて、それから真っ白の空間に手を伸ばしてヒョイと指をかけた。そこの空間だけが糸を束ねたようになり、トワはそれを掴んだ。それから言葉にならない言葉を唱え、時間と光と影のある世界に往くのである。
彼はいつもそうしてきた。彼にとってそれは偶然で、彼自身の意思とまた別の、重力とかそういう類のものに介さないところから来るもので、宇宙ができた時の思い出と同じ感じだった。
道化師が道端で風船を配っていた。
そういえば今日は広場でサーカスがあるんだった。
道を挟んで向かい側の公園は木に囲まれているが、その先は広い敷地のひらけた場所があって、たまにライブとか、何かしら催し物をしている。でも、サーカスよりもライブのほうが好きだ。
ワトソンストリートには年寄りと子どもしか歩いていない。思春期の男子学生は最も寄り付かない。でも仕方なく、編み物用の毛糸と、ビーズのおつかいをしている。おばあちゃんに頼まれた。「アダムソンの店」の看板が見えた。古い店というのは看板と入口の年季の入り方ですぐに分かる。カランコロンとドアを開ける。BBCのラジオ4チャンネルのニュースが株価の上下を報じていた。店内は狭く、四方の壁にぎっちりと品が並び、暖色のランプシェードの照明がそれらを照らしている。つい店内を見回していると、店の奥から小柄な白髪の女性が出てきて、「いらっしゃい」と挨拶をした。
「どうも、えっと、エレナ・クルトで取り置いているのですが…」
「あら!エレナのお孫さんね。聞いてるわ、この前テニスの大会で準優勝だったんでしょう?ほんと男前ねえ!おつかいだなんて偉いわぁ」
丸メガネをかけて、豊かな髪に赤い水玉模様のカチューシャをつけ、花柄の淡いピンクのブラウスに緑のカーディガンを羽織っていた。血色もよく明るい表情で、歳を感じさせない若々しさがあった。せっせと品物を運んできてくれた。
「こんなにたくさんあるんですか…」小さいラップトップ2台分くらいの紙袋いっぱいに入った材料と道具は予想以上だった。
「彼女、最近店に来ていなかったから、きっとカゴの底が見えていたんだわ。そうじゃなかったらこんなに買わないものね。おばあさんは元気?」
「ええ、相変わらず。近頃は屋根裏の整理が忙しいとかで、僕も会えていなかったんです。まあ、一人で鏡台を運ぼうとするくらいですから病気はしてませんよ」
「昔からそうよ。まったく変わらないのね…それに、羨ましいわ。私もこんな頼りになる孫の1人や2人ほしかった」俯いてなにかを思い返しているようだが、すぐに彼の方を向いて、先程の晴れのような笑顔を戻した。
「それじゃあ、ありがとうございます。祖母にも伝えておきます」
「あら、もっとゆっくりしていったらいいのに。アプリコットティーならすぐに淹れられるわ」
アダムソンさんはアイルランド生まれで、結婚と同時にイングランドに引っ越してきたらしい。彼女のファーストネームはハンナで、夫のクリストファーさんは元々地質学者だった。今は大学で教鞭を取っている。この店はお子さんが家を出てから建てたもので、店ができる前は空き家だった。その前はパン屋だった。店の中に上がったとき、奥の方に大きな窯があったのはそういうことらしい。
「使おうと思えばまだ使えるわ」紅茶を用意しながら、懐かしむような感じで言った。
「そう言えば、あなたのお名前は?」年季の入った木製のテーブルにお菓子と紅茶を置いた。
「ワイアット・レッドフィールドです」
「素敵な名前。エレナと目の色が同じね、翡翠の色だわ」夫人は、はっとして言葉を飲み込もうとした。
「ごめんなさい、知っていたのに」
「ああ、大丈夫ですよ。気にしてませんから」
ワイアットは、自分の表情が固くなっていないかが気がかりだった。
帰り道は静かだった。陽も暮れ始め、教会の鐘の間に黄金の夕日が輝いた。
友達の家の庭に停めてあった自転車があることを確認して、変える前に一声かけることにした。
「レッディ、やっぱあの店のババア変なやつだったのか?」
マーク・ヨハンセンは中学校からの同級生で、バスケ仲間。ワイアットよりも拳一つくらい身長が高い。
「良い人だったよ」
「じゃあなんでそんな顔色が悪いんだ」
「考え事してたんだよ」
「一人で勝手に落ち込んだのか?」
「勝手にではないけどさ」
「じゃあ何かあったんだろ」
「そうかも知れないね」
「お前はいつも隠すよな、俺には言ってほしかったよ」
「マルク、君のことは信頼してるよ。本当に大したことないんだ、本当に」
顔を上げて友達に微笑んだ。
「ああ…ごめん。怒ってないよ。俺の悪い癖だ」
「でも、言うよ。どうせなんともない話だ。アダムソンさんは良い人だよ。お茶を入れてもらった。それで話してたら彼女がうっかり、俺の目とばあちゃんの目が同じだって言って…すぐに謝ってくれたから故意じゃないんだ。それで、ちょっと、俺が養子だってこと思い出しただけ」
「そっか…。ごめんね早とちりして」ポケットに両手を突っ込んで俯いた。ワイアットの方を見ると、表情がほころんでいた。
「気にしないでよ。それでいつもテストの問題文をよく読まないで困るのは君だけだし」
「ああ、黙れ」
「なんでついてくるの」
自転車を押すワイアットの横でマルクがニヤニヤしている。
「もうすぐ夜だろ、へんな大人がお前を狙ってるかもしれない」
「あーはいはい、ナンパのことはもう忘れろ」
「だってさあ、あいつの間抜け面、覚えてるだろ?マジで面白かった」
「俺の心配してないじゃん」
「髪の毛長いだけで見間違うか?別に華奢じゃないんだしスカートも履いてない」
「女の子だってズボンくらい履くじゃん、珍しくないでしょ」
「それにしてもだよ。やっぱお前って女っぽいよね?ねえ?」
「知らない」
交差点の前に来ると、信号のしたに立て看板があった。
「こんなのあったっけ?」
ワイアットは看板の内容を読んだ。
【注意!】この近くで誘拐事件発生 早くおうちに帰りましょう
「お前知らなかったの?ニュースでやってたじゃん」
「最近見てなかったから」
「高速道路のちかくに雑木林あるだろ?あそこらへん」
「まあまあ近いね」
「いやお前もっとビビれよ、普通にやばいだろ」
あの雑木林は、もともとこの街の有力者が所有していて、所有者が死んでから空き地になったらしいが、それはもう30年くらい前の話だ。雑木林の中には建物もあるが、ずっと放置されているから草木が生え放題で、宇宙人がでるとか、麻薬ブローカーの隠れ家とか、そういう噂はずっとあった。でも事件は今までなかったし、周辺には車が多くて、ガソリンスタンドやコンビニがあったし、怪しい雰囲気も大してしていなかった。
「もう塞がれてるかな」
「多分な。…なんだ、もしかして行くつもり?」眉を狭めて、またポケットに手を突っ込んだ。
マルクが彼の方を向くと、ワイアットは足を止めた。それに順してマルクも止まる。自転車がギィ、と軋んだ。
「いや、今日はもう眠いから帰る」
「…ああ、そう、よかった…」
「行きたかった?」
「いやいやいやそんなこと、ないよ。本当に。マジで勘弁して」
マルクはフードを被って紐を引いた。
ワイアットは義理の祖母の家に向かった。事件のことを思い出したマルクが足早に家に引き返したから、夕暮れの帰路に一人で就いた。本屋に行きたかったが、それよりも荷物を届けるほうが優先だ。自転車で石畳の坂を下ると、街の境目が見えてくる。舗装されていなくて、店や家がそこで切れているからわかりやすい。街灯はかろうじて暗闇を照らしている。蛾が、自由を求めて我こそはと闇から這い上がろうとしていた。翅と翅がぶつかって鱗粉が舞っている。街灯の光が遮られていてもこれといって迷惑ではない。季節は秋で、夜は上着がないと寒い。自転車の速度に寒さがついてくる、振り切れないだろうと諦める。
時計の時間にしたら大した時間ではなかっただろうが、街の切れ目から祖母の家までの間に、事件のことを考えた。
誘拐事件ということは、殺人とはまだ判別できていないが、誰かがいなくなったということで、誰かに連れ去られたということもわかっているはずだ。なぜそれが分かるんだろう。目撃者がいたとか、どこかのカメラに映っていたとかだろうな。マットとの会話を思い出す。
「それっていつの話?」
「四日前とかだよ。ニュースで見たのがそのくらいだから、もっと前かも」
四日前かそれより前は、フリーマーケットが広場であったのと、いろんな学校で入学式と進級式があった。そのくらいだろうか。そう言えばあのサーカス、本当はもっと早くに来るはずだったのが、何かがあって延期になったんじゃなかったか。どこで聞いたのか覚えてないけど、たしかそうだ。サーカスといえば道化師、道化師といえば、殺人鬼…?
ワイアットの前に影が動いた。それに気づいて慌ててブレーキを握った。ぎいいい、と自転車が速度を落とした。ノウサギだった。幸い道の横にそれていたから轢かずに済んだ。ノウサギは冷や汗をかいた少年のことなど気にもとめない様子で、跳ねて茂みの中に姿を消した。
ワイアットはその日すぐに寝てしまった。もちろん荷物を祖母に渡したあとで。最近体が疲れやすい。もしかしたら夢遊病で、夜に歩き回っているのかもと疑ったほどに。
学校に行っても、少年は事件のことを考えていた。ネットで事件の記事を見たり、SNSで噂を漁った。退屈な授業はなおさらそうしてるほうが有意義に思えた。
「ねえ、何してるの」
授業終了のチャイムとともに、クラスメイトのカロライン・ガードナーが駆け寄ってきた。焦げ茶の癖っ毛をショートボブにしている。
「見てたの?」座ったまま、バツが悪そうに苦笑した。顔はスマホに向けたまま。
「先生にチクるつもりはないけど」
「なら安心」
そう言って起立すると、そそくさと廊下に出ていった。カロラインは彼の態度には慣れているが、だいたい、彼のしていることに興味を示した相手には快く企みを明かしてくれる。パターンはいつもと違う。だが彼女は気に留めなかった。「
ワイアットはランチタイム、食堂に行った。地域でも2番目に学生が多いこの学校の食堂は2つあって、一つが東棟の隣、もう一つは北棟の一部にある。基本的に、前者は下級生、後者が上級生といった感じで分かれている。
入って奥の大窓の席は人気で、学内のカップルやスポーツチームの団体が占領している。平民は基本的に入口の近くの大きなテーブルを囲んだ席か、大窓の隣の壁の席になる。それでもなかったら、買って別の場所に行くかだ。
彼は一直線に大窓の方に向かった。当然空席はほとんどなく、生徒たちは話に夢中になっているか、異物に気づいて不審そうにこちらを見るかだった。そんな中に、彼の友達はいる。
「やあレクソー」
「やあ兄弟!そこ座れよ」
アレックス・セドウィックは仲間に荷物をどかさせた。
「ワイマン元気か?最近会ってなかったよな」
「この前カラスの巣を保護したよ」
「相変わらずだな。そうだ、こんどの球技大会出る?メンバーが一人怪我して空きがあるんだけど」
「上手いやつなんてもっといるだろ?」
「自分を侮るな?お前のパスカットの右に出るやつはいないぜ」自分のことのように得意げに話した。周りのやつらにそれを聞かせるように。
「あー…まあ、でも俺その日はおじさんのところ行くから」
「マジか…それは残念」
「ところでさ、この前の誘拐事件知ってる?うちの近くで起きた」
それを聞くなり、アレックスの仲間たちがざわざわし始めた。
「なあ、お前、ワイオットだっけ?その事件、ピエロがやったんだぜ」隣に座っていたエミネムみたいに坊主にした白人の生徒が食いつく。
「ピエロ?」無知な様子に、他の生徒も乗っかってきた。
「連れ去られたのは女で、たしか、うちの10年生のティナってやつの姉貴だ。もう成人して、マスコミの仕事をしてたらしい」
後ろの席のやつもこちらまで来て、ニヤニヤしながら話を聞いていた。エミネムみたいなやつが続ける。
「それで、最初ティナの姉貴は犯人とネットで知り合ったんだと。それも、ヤる目的で」
「マッチングアプリ?」
「いや、普通のサイト。タグをつけて、自分のヌードの写真と一緒に流してたんだよ」
そういうのは珍しくない。大体は詐欺だが、たまに本気のやつだったりするのか。
「それで、彼女は犯人に会いに行ったの?」
「そう。でも一回目は、普通に事を終わらせた」エミネムは缶ジュースを一口飲んで、話を再開する。
「でもその後が問題だった。やつは狂ってた。忘れられなくて、彼女を我が物にしたいって思ったんだろうな。二回目で、連れ去った」
彼はハンドジェスチャーが激しい。
「でもどうして二回目で?」
ワイアットはテーブルの上の、食べかけのサンドイッチを見ていた。正確には見ていない。そちらに目線が合っているだけ。
「どうして最初に誘拐しなかったんだ?」
「そんなの、わかんねえよ。俺は女の子をそんなふうに扱う趣味、ないからな」
芝生みたいな金髪をかいた。
「たしかに、最初に実行しなかったのはなんでだろうな。普通こういう事件って、出会ったその日に起こるかんじするし」
アレックスもこの事件を以前から知っていた。金髪の彼の話も、興味津津で聞いていた。
「ありがとう。君には感謝するよ。名前は?」
「ディジーって呼んでくれ」
「もう行くのか?なんか食ってけよ」
アレックスは久々の再会を終わらせたくなかったらしい。愛想の良い顔が、子犬みたいに哀れな表情になった。
「また今度ね。あとディジー、俺はワイアットだから」
彼は急いでいた。期限は決められていないが、どうしても真相が知りたかった。好きなものは最初に食べる派。クリケットの選手で人気者の、たしかジョージという名前のやつからホットドッグをこっそり拝借した。考えるのにはエネルギーが必要だ。それと、ワイアットはジョージが大嫌いだった。
ワイアットはあまり気乗りしなかったが、友達のアンディのおじいさんがやっている酒屋の店番をしている。アンディは風邪で寝込んでいて、人手がないらしい。給料はここらへんにしては良いのと、好きな飲み物を一本持っていけるから、それだけがたのしみだった。「捜査」の進行を足止めされたとはいえ、これなら目をつむる。
店番といっても、万引きの見張りと、レジくらいである。じいさんはいろんなパブに品物を卸しに行っている。
マックスはまさに文弱少年という感じで、ブロンドでそばかすがあって身長もそんなになく、防犯ならワイアットが適していると思ってオファーしたらしいが、別に武術を心得てるわけでもないし何を根拠にしたのかはわからない。
客は来るがまばらで、ほとんど酒を買うやつだったが、一人怪しいのが入ってきた。小さい女の子だ。道に迷ったのかと思って声をかけるが、女の子はそれを聞かずにレジの奥に進もうとした。狼狽えたが、その子の腕を引き止めた。
「何してんの!?」
「探してる」
女の子は進もうとする方向に顔を向けたままはっきりと言った。
「何を」
「人間」
「は?」
さっぱり理由がわからない上、その子は不気味だった。腕を掴まれたまま、顔は同じ方向に向け、瞬き一つせずにその状態を維持している。5歳くらいにみえるその子は、金髪の長い髪を赤いヘアゴムでまとめ、花がらのワンピースと、プリンセスの絵が書かれた子供用の靴を履いていた。見た目はどこにでもいそうな、ごく一般認識で「5歳児の女の子」と定義できそうなのに、その言葉の発音の仕方はどこか機械的で、気持ちが悪い。
「ああ、君、おばけ?」とっさに出した結論だった。
「そのようなもの、かも知れない」女の子のようなものは腕を掴まれたまま、こちらに顔をむけた。
やっとそれは彼の腕から開放された。当のワイアットは開放したというより、触っていたくなかっただけだったが。
「あの、君は誰?」
「私は、この体はアリーナという名前」
それは肩に手を当てた。
「じゃあ、君自身は?」
気味が悪いとはいえ、これが本当なら、幽霊とコミュニケーションができていることになると考え、ちょっとの期待と興奮が彼を動かしている。
「名前はない。本当の意味では」
青い目がこちらを見上げている。
「へえ…でも、生前?はあったんじゃないの」
「生前?私はずっと存在している」
「ほう…」
言葉の意味を解釈しようと顎に手を当てた。つまり、それは神ということになる、のか。神、神がこの子に乗り移っている?
「じゃあ神様?」
「神とは、誰にとって」
「共通認識での」
「それは、少し違うかもしれない」
神らしき、そうではないものは俯いた。うつむく姿はふつうの5歳児に見えた。
「とにかく、私は名前を探している」
「君の?」
「違う」
ワイアットは困り果てた。軽いパニックで、頭の中がぐるぐるしている。長い髪をかいた。「それ」は彼を不思議そうにこちらを見上げた。子どもの眼が彼を見ていた。しかし彼はそれに気づかない。
「ああー…俺はどうしたらいいんだ?」
両手で頭を抱えて天井を見上げた。蛍光灯は古くて、光は弱かった。
「私は友人を探しているんだ」
「あーそうか、じゃあここは見当違いだよ。他をあたってくれ。マジで俺今疲れてるから…」
「君を今から連れて行く」
「ああそうそれはよかったです…ね…?は?」
ワイアットには友達が3人いる。マルクと、カロラインと、ゲーム友達のクレイグ。でも誰にも言い寄られたことがない。経験もない。それなのにこんな得体のしれないやつにお持ち帰りされるなんて。でも、ガワは小さな女の子だ。いくらなんでも滅茶苦茶すぎるし、犯罪になるだろう。そんな趣味もない。犯罪者にはなりたくない。犯罪者にだけは。
ワイアットが脳内で慌てふためいていると、ノームのような見た目のおじいさんが帰ってきた。
「ワイエットくん、もうあがっていいよぉ」
「俺はワイアットだ!!!!!!!!」
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