第5話
さて、今日はダンジョンを探索する。
今日は10階層までの探索だ。5階層にいなかったから、ボスは10階層にいるはず
ここまでずっとスライムしか居ないし、ボスもスライムなのか?
まぁ、スライムならそこまで強くもないし、むしろいいか。
5階層にセーブポイントはなかったので、今日も1階層からの探索だ。
少々面倒くさいが、諦めて進むしかない。
「1回通ったところだし、前回よりも時間をかけずに行けるように頑張らないとな。
前回は1時間40分くらいかかったから、今回は、前回までの範囲を1時間20分くらいで攻略して、3時間ピッタリぐらいで探索を終わらせよう。」
独り言が多いって?1ヶ月の間に寂しさ紛らわそうとしたらこうなってたんだよちくしょう。
話し相手すらいないのは結構心に来るものがある。
「よし、早速攻略を始めるか」
とりあえず歩こう。何も考えずに行けばいい。
まだモンスターは弱いし、普通に倒していけば、目標時間内に10階層まで行けるはずだ―――
「―――予想よりも、少しだけ早く10階層についたな」
2時間40分くらいで到着して、20分でボス戦を終わらせようとしていたのだが、現在の経過時間は2時間30分前後。予想より少し早く帰れそうだ。
モンスターは、6〜9階層まですべてスライム。
階層と同じ数でまとまって出てきたが、1体ずつは相変わらず弱いので、ほとんどダメージを受けることなくここまで来た。
そして、ここまでスライムを倒し続けてきたことで上がった、現在のレベルはこんな感じ。
―――――――――――――――――――――――――――
月城柊羽:18歳
種族:人間 Lv5
性別:男
職業:探索者
ランキング:圏外
魔力:38/38
攻撃:20(+5)
知力:14
防御:10(+4)
精神:10
速度:28
器用:9
スキル:『風魔法:F』、『料理:E』
SP:10《取得可能なスキル一覧▼》
―――――――――――――――――――――――――――
レベルは2だけ上がった。
やっぱり、スライムを倒してレベル上げは無理があるな。
なんと、ここまで150体以上倒しても2レベルしか上がっていない。
経験値がかなり少ないんだろうか。
ここのダンジョンが特殊な可能性も否定しきれないけど。
「このでかい扉がボス部屋……なんかな?」
そして、目の前にあるのは俺の身長の2倍はありそうな巨大な扉。
木製だからぎりぎり押せそうだけど。これが金属製だったら開けなくて詰むよ?
「ポーションよし、短剣も持ってる……必要なものはすべて揃っているな。さて、行きますか!ボス戦!」
少しの緊張を大声でかき消し、俺は巨大な扉へと手を掛け、少しづつ力を入れる。
かなりおもそうだと思っていた扉は、案外軽い力で開いていく。
そして、その先に居たのは――
「――銀色のスライム…メタルスライムか?」
その姿は、ゲームでたびたび見るメタルスライム。
最近は見なくなった気がするけど、まぁそこはいい。
「ゲームで言えば、かなり硬い敵だったよなぁ。正直、あんまり戦いたくはない」
一見ポヨポヨとして柔らかそうだが、本当に硬いのだろうか?とりあえず…
「…先手必勝!」
相手はこちらを見ているものの、攻撃してくる気配はない。
であれば、こちらから攻撃して、あわよくば倒したい。
そう思い、俺のできる全力で近づき、普段スライム相手には片手で振るっている薙刀を、両手で振るって斬りつける。
しかし…
ガンッ!
「っ痛ぇ…!」
予想以上の硬さに薙刀が跳ね返され、俺の手に衝撃が来る。
手が痺れて、薙刀もまともに持てない。序盤の硬さじゃねぇだろこんなの。
刃こぼれしてないよな?ただの鋼鉄製だとしても安くはないんだぞ。
「表面がこんな硬かったら、コアなんてどうやって壊すんだよ…」
相変わらず、メタルスライムは攻撃をしようとしては来ない。
ずっとぽよぽよ飛び跳ねているだけだ。
攻撃されたというのに、呑気なこって。
特殊なボスなのか?とはいえ、こんな硬い防御力をどうやって突破しろと?
そもそも、あのぷよぷよとした見た目で、どうやってあんな防御力を実現してるんだ?
普通のスライムと同じだったら、コアの切断どころか、体も粉砕してもいいくらいの威力でやったつもりなんだが。
うーん、とりあえず何回か殴ってみるか。
何かやってた方が、突破方法わかるかも知れないし。
そう考え、石突を使って何回か殴ってみる。
強さや力の向きを変えたり、色々工夫してみても、全く効いている様子がない。
ずっとぽよぽよぽよぽよ飛び跳ねている。
効いている様子がないとはいえ、あの体を見ていると、そこまで固いようには見えない。
むしろ、攻撃する瞬間に固くなっているような気が――
――もしかして、そういうことか?
ある現象の名前が、ふと頭に思い浮かんだ。早速、検証のための実験を2つしてみよう
実験1、石突で少し強めに叩いてみる。先程よりも抵抗は少ないが、まだ硬い。けど、このくらいならば切れそうだ。
実験2、石突をゆっくり沈み込ませてみる。ほとんど抵抗もなく、コアにコツンとぶつかった。しかし、威力が弱すぎるせいか、ダメージはなさそうだ。
…ふむ。
軽い実験の結果から推測するに、こいつの体は、衝撃が強いほど固くなり、攻撃を跳ね返す。
逆に、弱い衝撃であるほど柔らかくなっていて、攻撃が簡単に通る。
要するに、ダイラタンシー現象のような物質で構成されていると。
だからこそ、俺が全力でやった攻撃も、ダイラタンシー現象により硬化して跳ね返されたということか。
しかし、そうだと分かったとしても、こいつを倒すのはかなり難しい。
コアがその中に入っている以上、コアを引きずり出すか、武器を沈み込ませて、なんとかしてダメージを与えるか。
対策方法としては、この2つってところか。
後者は少し難しそうだな。
やるなら、前者のほうが圧倒的に楽だ。
しかし、どうやってコアを引きずり出すか。
…とりあえず、コアを鷲掴みにして引っ張ってみるか。
一通り思考が終わると、袖をまくり、ダイラタンシースライムの体に少しづつ手を入れていく。
痛みを感じることもないし、これで死んだりはしなさそうだな。
少しずつ腕を入れていき、肘の手前くらいまで腕をいれると、なにか硬いものにぶつかる。
それを握ってぐっと引っ張ると、案外簡単にコアを取り出すことができてしまった。
「…スライムのコアってこんなに簡単に取れるものなんだな。普通のスライムでもそうなんかね?」
ダイラタンシースライムは、コアが無くなったはずの体をうねうねさせて、まるで「返して〜」と言っているかのようだ…ちょっとかわいい。
しかし、探索者である以上、このモンスターを倒さないと先に進むことはできない。
もう少しこの可愛い生物を見ていたい気持ちを抑えつつ、コアを上に投げ、薙刀で破壊する。
普通のスライムと同じように、ダイラタンシースライムも、コアを破壊したことで消滅する。
しかし、普通のとは違ってドロップがあった。
「来た方向と逆には階段ができて、ダイラタンシースライムが消えたところには…宝箱だな」
そう、宝箱だ。しかも2個!
序盤だからあまり強いものは出ないだろうが、2個出るのはものすごく嬉しい。
ドロップボーナスが付くと言っていたし、その御蔭か?
「んじゃ、早速開けるか。それにしても、1つじゃなく2つも出るとは。運が良かったんかね?」
そう言いつつ、俺は同時に2つの宝箱を開ける。同時に開ける意味?ないよそんなの。
宝箱の中に入っていたのは、スライムのコアに似た丸い玉に、銀色の腕輪。
丸い玉は……まさか、スキルオーブ?
鑑定してもらわんとわからんが、もしそうだとしたらかなり貴重なものだぞ?
銀色の腕輪は…今はあまり触れないでおこう。
時々、呪いの装備なんてものもあるしな。
安易に装備して、呪われたりでもしたら、たまったものではない。
一応、見た目は何の変哲もない腕輪なのだが。
「お、セーブポイントもあるな。次回からはここから始めよ」
11階層に入ると同時に、セーブポイントである緑色の魔法陣が目に入る。
いかにも安置という色だな。
さ、今日はこれで終わりにして、明日も訓練場にこもるか。
鑑定は…訓練中にやってもらえばいいか。
後書き プチ解説 〜メタルスライム〜
今回、柊羽はダイラタンシースライム――正式名称は一応メタルスライムですが――の体からコアを引っ張り出して討伐しました。
この直後の「普通のスライムでもこうなんかね?」というセリフについての補足…というか、疑問の解決?です。
普通のスライムの体液には弱めの麻痺毒が含まれております。
直接触れるような人は基本いませんが、体液を大量に浴びた場合は、低級探索者を戦闘不能にする可能性もあります。
もちろん、そんなところに腕を入れたら…もうおわかりですね?
メタルスライムは毒がなくなった代わりに、強力な衝撃に強くなるという進化をしたスライムと言えます。
なお、メタルスライムは基本攻撃をしません。ぽよぽよ飛び跳ねるだけです。
一見すごく可愛い行動ですが、この動きは煽りの一種だったり…
以上、メタルスライムの設定公開でございました。
勿忘草の花畑に佇む柊の木 @kai4078
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