勿忘草の花畑に佇む柊の木

@kai4078

第1話

――西暦2001年1月1日00時00分00秒。21世紀に入った瞬間に、この世界は変貌した。


システムという謎の存在のアナウンスの後に世界中に出現した『ダンジョン』は、世界中に大きな影響を与えた。


各国政府は、最初これを放置していたが、ダンジョンからモンスターが溢れ出す『スタンピード』が、各地で起こってしまった事により、放置はできなくなった。


その後、各国の軍隊が処理を試みるも、普通の兵器で倒すことができないモンスターと、少しずつ増えていくモンスターに手が回らなくなっていった。


そこで、国際ダンジョン規定が制定され、安全性を確保した上で、16歳以上の人間にダンジョン内の探索を許可した。


ダンジョンを探索する者のことを『探索者』とし、探索者とダンジョンそれぞれにランクを設定することで、死亡率を下げた。


また、国連に新たな機関が設立され、全世界に支部が置かれた。彼らは、モンスターが落とす魔石やドロップアイテムの買い取りを始め、ダンジョンを新たな産業として確立させた。



そして、ダンジョンが出現してから30年がたった2030年。俺は16歳の誕生日を明日に控えている。そんな俺は――


『柊羽、明日日曜日だから、ダンジョン一緒に行こ!』


「…誕生日ぐらいゆっくりさせてくれん?」


幼馴染である紫苑からの唐突な電話で、明日ダンジョンに行こうと誘われていた。


明日は11月10日。俺の16歳の誕生日だ。つまり、ダンジョンに行けるようになる日でもある。


『いいじゃん、誕生日プレゼントあげるからさ!』


「そういうのはサプライズで渡すもんだろうよ?」


 初めて見たよ?事前に言ってくる人。誕生日前日の楽しみを返してくれ……いや、紫苑以外からもらえることはないんだけど。それでも気になるものなんだ。


『もしいかないって言ったら、柊羽がこっそり書いて、ネットに投稿してる小説のURLをクラスチャットで公開するからね?』


「わかった。行くからそれだけはやめてくれ。つーか、なんで知ってんだお前」


 いつもこういう感じだ。俺が隠しているはずのことを、紫苑はなぜか知っている事がある。


 本当に、どこから情報を仕入れてるんだか。それさえわかれば、少しは対策できるのに。聞いても「秘密〜」としか言わないんだよな。


 俺は紫苑が隠していることをほぼ知らないというのに。不公平な話だ。


…まぁ、一番大きな秘密だけ隠し通せれば、俺はいいのだが。


知らないようだし、多分隠せてるだろ。これでバレてたら……そんときゃそん時だ。


『なら、明日の朝9時に駅前集合ね!』


「…了解」


毎週土曜日は、いつも夜更かしをしてゲームをしているが……ダンジョンに行くとなれば、話は別だな。


夜更かしした後って、本当に気持ち悪くなるんだよな。あのお腹の中がぐるぐると回っている感覚、本当に嫌いだ。


この状態で運動をすると、貧血やら何やらで、顔が真っ青になる。


ほぼ毎日夜ふかしをしていた中学時代には、何度保健室に行ったことか…


まぁ、ゲームは癒やしだし、そういう事があっても、やめない可能性が高いけどね。


惟一ある可能性があるとすれば、社会人になったときかな。忙しすぎてやめそう。


 今の時間は……後1分で12時か。今から寝て、7時くらいに起きれば気持ち悪くもならないし、遅刻もしないかな。


もう少し起きてゲームの攻略を進めたかったが、仕方がない。


「それなら、俺はそろそろ寝ることにするわ。いつもみたいにあんま寝ないで行くと、運動なんて全くできなくなるから」


『うん!また明日ね!』


――電話が切れた。さて、寝るか。


 ピロリン♫


 ん?なんだ?眼の前に…青い板?いや、見た目はステータスボードっぽいな。モンスターの初討伐時にもらえるはずだが。


―――――――――――――――――――――――――――

お知らせ


Sランクのダンジョンを一向に攻略できない地球人の皆様のため、今年からダンジョン探索をできるようになる全世界の方々から12名を抜粋し、試練を課すことといたしました。あなたは、その11人目となります。


あなたに課された試練の名称は『勿忘草』です。


内容は『忘れられる』こと。あなたの存在は、生存のために必要な情報を除いて、世界から削除されました。


これを戻すためには、あなたの家に出現したダンジョンを攻略していくか、記憶をなくした人にとって大切な、あなたに関する記憶を思い出させなければなりません。


また、ダンジョンの攻略をスムーズにするため、あなたとあなたのパーティーメンバーに限り、レアドロップ率と獲得経験値量へ補正が入ります。ぜひ役立ててください。

―――――――――――――――――――――――――――


何だこれ。スパムメール?いや、世界のシステムがこんな事するわけないよな。


となると、誰かのスキルか?そんなスキルは聞いたこと無いんだが。とりあえず、誰かに相談でも――


「――連絡先が、全部消えてる?」


俺がいつも使っているチャットアプリからは、友人の連絡先だけでなく、公式のアカウントすらもなくなっている。


バグかと思いアプリの再起動とスマホの再起動の両方を試すも、効果はなし。


その後、全てのデータを確認したところ、メールなどの連絡用以外のデータは残っていた。


ここまで確認を行うと、俺は立ったまま、しばしの間呆然としてしまった。


これまでのものが全て消えたと言っても過言ではないのだ。こうなるのも自然だろう。


ゲームの情報は、フレンドがいなくなってたり、ギルドから勝手に抜けてたりしているだけで、別の部分は全く消されていない。無駄に器用だなおい。


スマホを確認しただけじゃ、”記憶”から消えたのかはわからない。


そう考えて適当な誰かに電話をかけようとして…止めた。


誰かに電話をして確認するというのも、確かに良い手ではある。


だが、そんなことをしてしまえば、ほぼ確実に不審者とみなされる。それは嫌だ。


不審者認定されるよりかは、このメッセージを信じたほうがいいだろう。


そもそも紫苑以外の友人の電話番号なんて覚えていないっていうのも、3割くらいはあるけど。


こんな中で、生きるために必要不可欠な、戸籍や口座を残してくれたのはありがたい。


…いや、試練とかいうゴミ制度を課したことでプラマイマイナスだけど。それは。


ダンジョンを探索するには免許が必要で、それを作るには戸籍が無いといけない。


多分だが、俺は探索者になれないと詰みだ。


中学卒業の証明すら出来ないのにどうやって一般企業に就職しろと。なれても給料カスだぞ。


肉体労働もダンジョンとほぼ変わらねぇし。


ならば、ダンジョンに潜るほうが効率はいい。


よし、明日、朝一番に市役所に行って、免許を作ってしまおう。


そしたら、装備を買って、すぐにダンジョンの攻略を…いや、数日間は使う武器の練習をするか。


すぐに行ったって、下手な動きでやってたらすぐに死にそうだしな。


とりあえず、今日はもう寝よう。いつの間にか寝落ちでもして、夢でも見ているのかもしれん。


明日の朝にもう一度、メッセージアプリを確認してみよう。


…できれば、夢であってくれ―――



―――おはようございます。確認しても昨日と何も変わらなかった柊羽です。


どうやら夢ではなく、本当のことだったようです。


…とりあえず思考を少し現実に戻そう。俺が自由に使えるお金についてだ。


俺は現在、一軒家で一人暮らしをしている。別に好んでこんなことをしている訳では無い。


ただ…両親が既に亡くなっているだけだ。3年前の交通事故によって。


俺がこの試練に選ばれたのは、こういう側面もあるからではないかとも思う。


家族と暮らしている人だったりすると、家に帰っただけで修羅場になりそうだし。


まぁそういうわけで、俺には親からの相続金がある。その額は約2000万。


あまり使いすぎると生活ができなくなるし、装備に使える予算は100万ってところか。


相場もわからないし、最初はそんなに強くない装備でいいだろう。


よし、まずは市役所だ。そこで探索者証を取って、相続金を多少使って装備を整えよう。


そう考えた俺は、壁にかけてある玄関の鍵を取り、扉の外へと出た。



後書き

カクヨム初投稿でございます。序盤は推敲を何度も繰り返しているので、読める文章ではありますが…後半から、おそらくどんどんと文章が下手になっていきます。どうか、平にご容赦を…

この小説は、週1〜2話投稿でまったりやっていくつもりです。テスト前などには遅くなります。

それでは、また次回をお楽しみに〜(*´▽`*)ノ))

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