第16話
ストレートな言葉に
少し頬が熱くなる。
「うん」
そう答えるのが今は精一杯だった。
返事に満足したのか、優くんも食べるのを再開した。
食事は美味しいし、会話も楽しい。
大和くんはしっかりしてるけど、口うるさいとか
旭くんはバイクが好きでよく弄ったり、みんなのバイクもメンテしてるとか
蓮司くんは優くんより食べるし、筋トレマニアとか。
皆んなの事を教えてくれた。
他にも家族の事も教えてくれた。
4人家族で仲がいいらしく
お父さんと弟くんとは、時間が合う時家でゲームするとか
実はお母さんが1番ゲームが強くて
誰も敵わないって事も知れた。
おっとりした話し方に自然とこちらも
穏やかになる。
こうなると余計に、昨日茉莉花から聞いた
不良のトップとか、ヤクザの息子だとか
信じられなくなって
別人の事を言ってたんじゃないかと思う。
でもそれと同時に、あの助けてくれた日
男の人に向けた眼差しや
私に質問した時の圧が
絶対違うという否定まではさせてくれない。
「どうかした?
急に難しい顔になったね。」
聞いてもいいのかな。
聞かれたく無いことかも知れないし
聞いたら何か変わっちゃうのかな。
口篭る私を急かすことなく
微笑んで待っててくれる。
「あの、茉莉花から聞いたの。
優くんは不良のチームのトップだって。
あと、ご家族が、その…」
「ヤクザだって?」
「…うん。」
人がいるような所では話すべきじゃなかったと気付いたが
あとの祭。
優くんは、ヤクザという言葉を平然と言ってのけた。
「それを聞いてイチカちゃんはどう思った?」
「あんまりイメージつかないと思った。
だけど、助けてくれたあの日
優しいだけじゃないところを見て
納得出来る様な気もした。」
「怖いと思う?」
「今は実感湧かないから、分かんない。
けど、あの時に関しては優くんの事を
怖いとは少しも思ってなかった。
それより、すごく安心した方が強かった。」
「そっか。」
雰囲気はずっと穏やかだし
あの時の様な圧は感じない。
「茉莉花は大和から聞いてるからね。
イチカちゃんが聞いた話は殆ど本当のことだと思う。
俺は、チームowlのトップで
梟木組若頭の息子だよ。」
「若頭?組長じゃないの??」
「あー、父さんが若頭なんだ。
若頭は次期組長だから
どこかで認識が変わっちゃったのかもね。
現組長は、俺の祖父に当たる人。
でも2年後父さんがその地位に着く予定。
だから、『組長の息子』っていう
先走った話になったのかな?」
「そういうのって、私みたいなのが聞いてもいいの??」
「今話した内容は、公表している事で
知ってる人は知ってる事だから大丈夫。
もうちょっと内部の詳しい事は
話せないかな。
それに今、他に人はいないから大丈夫。」
「えっ?」
テレビから流れるバラエティの賑やかな音で気が付かなかった。
見回すと、お店の人も含めて
フロアには誰も居なかった。
居酒屋の様なメニューがあるから
この時間帯なら人が入っててもおかしくないはずなのに。
「ここは、昔から組の馴染みのお店なんだ。
今日だけちょっとお願いして
俺がいる間だけ人払いしてもらったの。
普段はもっと賑わってるお店なんだよ。
俺の学校の連中とか、この辺のおっさんとか、組の人達とか
とにかく男ばっかでむさ苦しくなる。」
げんなりしつつも、思い出す様に楽しそうに笑いながら話すから
「また、人がいる時来てみたいなぁ。」
思った事が、そのままポロッと口から出てた。
「うん、また来よっか。」
おすすめのおかず沢山あるからね、と
笑ってくれた。
残りを食べ終え、
手を合わせて2人でごちそうさまをしたら
そのまま店を出た。
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