UNDEAD FANTASIA
八島都
Prologue...
17歳の誕生日だ。
半年前に父親の不倫が発覚し、私と母は小さな2LDKのアパートに越したばかりだった。
陰気のこもった暗いリビングに、小さなケーキと手紙が置いてあった。温かい言葉であふれた手紙だったが、そこに母の姿はない。母は父との一件からおかしくなってしまい、時間を見つけてはいろいろな男と会うようになった。空いてしまった心の穴はそう簡単には埋まらない。たとえそれが、実の娘の誕生日であったとしても。
19時を過ぎて外は暗くなり、部屋全体を照らしきらない弱々しい照明の下でケーキを食べた。
ぼろぼろと涙があふれてきた。でも、気にしないことにした。気にしても仕方のないことだから。
それからお風呂に入って、歯を磨いて、パジャマに着替えた。なんの因果か、このパジャマは父が買ってくれたものだった。ばからしい話だ。
部屋の戸を閉める直前、時刻は22時ごろ。最後に母は帰ってくるかと期待したが、玄関が音を立てることはなかった。悲しような、安堵するような、複雑な気持ちだった。
私は用意していたいくつかの液体を混ぜて、一呼吸の末にそれを飲み込んだ。
舌や喉が違和感を叫ぶのをよそに、安らかな気持ちでベットに寝転んだ。
季節は秋から冬に移り変わる最中、私の身体は寒さを感じることもなくゆっくりと深い眠りに向かった。
恐怖もなく、後悔もなく、ただ少しばかりの母への申し訳なさを抱いて。
17歳の少女、八雲唯は、自ら命を絶ったのだった。
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