僕は無能?(笑)

@yoichi_suzutani

第1話 追放

「お前は今日で追放な!!!!」


傲慢に高笑いし、見下しながら女を貪る茶髪の青年。ケイン19歳。剣使い。勇者を任命されたヴァンガード公爵家の長男。権力を振り翳して好き放題する。


「あぁ。これも神の御心なのですね!!」


うっとりした笑顔でケインを溺愛する金髪の聖女マリア。パーティーではヒーラーを務める。魔法協会の大司教の娘。Fカップのお姉さん。27歳。


「ふんっ!ケイン様にお仕えできただけでも感謝しろ愚民が!!」


ショートカットのオレンジの髪が特徴の女騎士カルラ。伯爵家の長女で代々騎士の家系。庶民を蔑み上の階級の貴族や王族にへつらう典型的なクズ。Gカップ24歳。


「どーでもいいから。早く出ていきなよー。」


無関心に本を読む小柄な緑髪の魔導士。パーティーでは魔導士。魔法使いを務める。伯爵家の長女で魔導協会王都本部長に最年少で登った怪物セリーヌEカップ26歳。


そしてその前に跪いてほぼ無表情の白髪の少年。

腰ほどまで長い白い髪を耳のから一本にまとた碧眼の美少年。その見た目たるや女の子と言われても過言でもない美貌の持ち主。出自、年齢などかま全て不明。わかっていることはひろとというこの世界に合わない名前と、150センチ前後のチビで日本刀使いであるということ、そして服装もワイシャツに黒いスーツに革靴という特徴だけである。


「。。。。。」


「なんだよ。おいおいむしかよ。」


「当然ですわ!神に選ばれしケイン様のお言葉を聞いて何も言えませんのよ!」


「わかった。じゃあ出ていくよ。」


その声は男でも女でもない中性的でしかし透き通った美しい声だった。


「おう。さっさと出てけよ無能。」


「興味ないけどキミが居ても戦力にならない。本を読んでたほうがマシさ」


「ぶっはははは!やめてやれよセリーヌ!」


「。。。。。」


嘲笑を背に淡々と準備をして、日本刀と最低限の荷物を持って宿屋を後にした。


外に出ると夜の街ならではの居酒屋で騒ぐ男たち。ナンパするものされるもの。あるいは怪しげな取引。呼び込み。石畳の道なりに魔法の街灯が光り、人々を照らしている。


「くだらないなぁ。」


独り言を口ずさみ、馴染みのギルド内にある居酒屋を目指す。


「え?!なにあの人!めちゃくちゃ美人!」


「え?女!?いや、男のような。。。」


「でも綺麗ねぇ。お人形さんみたい!」


「俺ナンパしてみようかな!!」


ヤジが飛んでくる。


チリーンっという音を立ててギルドの中に入り、いつものマスターのところへ向かう。


「お!?ひろとじゃねえか!どした!」


筋骨隆々の50代の白鬚を生やした大男。ひろととは顔馴染みで長い付き合い。


「やほ。マスター。」


「なんだなんだ?機嫌悪りぃのか?まぁ座れって」


カウンター席のマスターの正面に座る。


「なんか飲むか!」


「お酒。」


「いつもの?ロック?ストレート?」


「ストレート」


「がっははは!相変わらず14歳くらいの見た目してんのに酒豪だなぁ!!」


豪快に笑う彼をある意味ひろとは気に入っている。この場所が大好きだ。


「ほれ!ストレート」


ことッと木目調のテーブルに美しいオレンジ色のウィスキーが置かれる。


「ありがとう。いい香りだね。」


「だろう!うちの酒は安いが絶品よ!!」


腕を組んで自慢げに語る。

そして真剣な顔つきでひろとを覗き込んでくる。


「例の勇者パーティーか?」


「ご名答。追放されたよ。」


「追放!?お前が!?嘘だろ!?」


「声でかい。」


周囲の視線が集まる。


「お、おうわりぃ。おまえら!気にすんな!」


バツが悪そうに続ける。


「お前はどの実力者を捨てるってアホだな。」


「まぁ多分あいつの性格を考えるに僕も女みたいな見た目でしょ?だから美人ハーレム作ろうと思ったら男の子でしたーってオチでしょ多分。」


ぐいっと飲み干す。


「たしかにあの坊ちゃんならやりそうだな。」

っと苦笑いを浮かべる。


「評判の悪さもいよいよもみ消しできないだろうねー」


そっとマスターが耳打ちしてくる。


「で?今後はどうすんだ?白銀の剣聖殿。」


ニヤァっと悪い顔をする。


「さぁ。とりあえず泳がせてみるさ。」


「お前の泳がせとくって言葉ほど怖えもんはねえわな。」


っと苦笑いして追加のお酒を注ぐ。


夜はまだまだこれからだ。

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