友人の恋愛感傷
夕凪あゆ
第1話
これからも
その一言に押し込めたものの多さを、
きっと君は知らないはず。
この気持ちを知られたくないと思う自分と、
気づいてほしいと願う自分が衝突して。
–––マーブル色に滲んでいく。
君の言葉は、多くを語らない。
でも、ほんの少しだけでいいんだ。
その方が君の余韻にいっぱい浸れるし。
それに、言葉の一片が私の胸に落ちてくるだけで
可笑しいくらい嬉しくなっちゃうの。
––––私はもう君に逆らえなくなっているの。
気づかれないように
君の歩幅に合わせて歩いてみたり、
さりげないふりをして
君の横顔を盗み見たりするたび、
心のなかの気持ちが、
少しだけ熱を帯びていく。
でも本当は名前なんてどうでもよくて、
恋とか友情とかさ。
そんな枠に入るのがもったいないほど、
君は私の中で特別な位置にいて。
でも、欲張りになるほど
手を離したときの痛みを想像してしまうから、
私は今日も君の側にいることを望む。
君の隣にいるだけで満たされるのに、
触れたいと思ってしまう指先や、
その余裕でいっぱいの顔を蕩けさせたい衝動を
必死で押さえ込んで、
私の気持ちは行き場をなくしたまま
胸の奥で膨らみ続けている。
でもそんな感情だって君が笑えば、
全部どうでもよくなる。
肩が触れた瞬間、
どうしようもなく心臓が動いて息が詰まるのに、
でもやっぱり離れたくなくて、
もっと触れていたくなる自分がいて。
こんな感情、昔なら理解できなかっただろうな。
ああ、もしも言えるなら、
全部さらけ出してしまいたい。
でも怖いんだ。
君を失う未来だけは、
どんな未来よりも耐えられないから。
だからせめて、
隣だけは、
その場所だけは、
奪われませんように。
どうか、お願い。
友人Aとしてでいいの。
他の誰に気づかれなくてもいいの。
それでもいいから、君の隣に居させてほしい。
だって私はそれだけで、
私は今日も生きる理由を見出せる。
友人の恋愛感傷 夕凪あゆ @Ayu1030
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