〜初ログイン〜
「ここ・・・一体何処?」
キャラクタークリエイトを終え、壮大なオーケストラの演奏と大迫力のオープニングを見終えた後、エルフ族の村に降り立った僕は、目の前に広がる圧倒的な森の自然と、息を飲む程の美しさに歓喜し——『神官』の初期装備のまま村を飛び出し、辺り一面に広がる森へ何も考えずに入って行った。
踏みしめる土の感触、木々の濃い緑の匂い、見た事も無い形の植物や、現実ではありえない程に曲がりくねった樹々を見て感心しそれから体感で約30分。気が付けば——すっかり迷子になっていた。
「ミニマップ機能を使っても、一向に森の映像しか映ってないし、足跡機能は——ダメだ。森の中で途切れてる」
『人は初めての事に浮かれて熱中するあまり、取り返しのつかない事態に発展する』——今日の教訓だ。
360度、何処を見ても森が広がり——心なしか少し暗くなってきている気がする——景色が一向に変わらなければ、いくら初めての事で興奮し、我を忘れていたとしても・・・飽きて正気に戻る。そして、正気に戻った僕に待ち受けているのは、迷子という現実。
パッシブスキル レベル 効果
HP自動回復 1 5秒ごとにHPを1回復する
MP自動回復 1 5秒ごとにMPを1回復する
戦闘系スキル レベル
杖術 1 杖を装備時に扱いが上手くなる
楯術 1 楯を装備時に扱いが上手くなる
生産系スキル レベル
調薬 1 薬や毒を調合する事が出来る
料理 1 料理を作った際に追加の効果を得られる
修得魔法 レベル
☆神聖魔法 1 神官のジョブに付いている者が扱える聖なる魔法
☆精霊魔法 1 エルフ族が扱える自然を利用した魔法
更に森の奥から響く、獣の唸り声の様な音や風で葉が揺れ動く音が、やけに気になり始め——僕は背中から冷や汗が止まらなくなった僕はその場でステータスを核にした。
装備
右手 見習い神官の杖
左手 皮の楯
頭 見習い神官の頭巾
胴体 見習い神官のローブ
腕 見習い神官の手袋
足 見習い神官の靴
アクセサリ
顔 なし
頭部 なし
右手 【NO OPEN】
左手 【NO OPEN】
PLAYER 『ソラ』 神官 レベル1 満腹80%
基礎ステータス
攻撃力 3
防御力 6
HP 10
MP 10
力 3
体力 5
魔力 6
素早さ 3
幸運 2
「使える魔法は神聖魔法の『ヒール』と精霊魔法の『トーチ』だけ・・・これってもしかしなくても、大分ヤバいんじゃないか?」
神聖魔法 ヒール 切り傷や打撲、食中りを治療しHPを3~5微回復する
精霊魔法 トーチ 小さな火を指先に灯し、周囲を仄かに明るくする
ヒールが消費MP2でトーチが消費MP1だ。森の中で火を使うのは厳禁だし、初級魔法のヒールでは何かあったとしても心許ない。
「そうだ。インベントリに何が入っているか、確認していなかったんだ!」
『搭乗者』と呼ばれるソラを含めた『プレイヤー』が持つ、女神の祝福。その1つが『インベントリ』と呼ばれる『アイテム収納倉庫』らしい。そのインベントリを確認したソラは、ほんの少しだけ安堵した。
・初心者料理セット1式 初心者用の料理セット。簡単な料理を作ることが出来る。
・初心者調薬セット1式 初心者用の調薬セット。簡単な薬や毒を調合できる。
・簡素なパン 3個 空腹度を10%回復する。味気の無い硬く焼かれたパン
・回復ポーション 3個 HPを5回復する初級ポーション
「とりあえず、直ぐにどうにかなるような状況じゃなさそう。このまま此処に居ても埒が明かないし、適当に移動すれば道が見つかるかもしれない」
ソラは再び何も考えず、とりあえず西に向け移動を始める。現実世界の時間と連動したこの『エターナルワールドオンライン』の世界では、森の奥へと沈んでいく夕日が木々の間から見え隠れし、とても美しい光景が広がっていた。
「少しでも明るい内に——道に出られればいいんだけど、まぁ初日だしなるようになる・・・かな?」
幸いな事に——未だに『モンスター』と呼ばれる存在に出会っていないソラ。村から30分程の離れた距離だから、弱いモンスターしか生息していないだろうと、謎の判断を下すと・・・右手にもつ杖で邪魔な枝を払いつつ、進んでいった。
ガサガサガサ!!
5分ほど歩いた後、背後の木々が揺れ動き、その奥から1匹の兎らしき動物が飛び出して来た。額に小さな角を生やし、モスグリーン色の体毛を生やした、空の膝丈位の大きさの兎だ。
「ギュイギュイギュイ!!」
「うわっ!」
ソラの姿を見つけた兎は、一目散にソラに向けて飛びかかって来た。咄嗟に左腕の盾で身を庇ったソラは、盾越しに赤いエフェクトが散り、左腕に鈍い痛みが走った事に驚き、その場に尻餅をついた。
「痛た・・・。まさか痛みを感じるなんて思わなかった。でも、まだまだ全然平気だ!」
ソラの視界上部には『フォレストラビット』レベル2 HP 9/10という表示と、視界下部には ソラ レベル1 HP 9/10の文字が表示されている。
右下には文章が表示されており、先程の兎の攻撃でダメージを2負ったらしい。その下の文章にHP自動回復が発動しHPを1回復したと書かれている。更に盾で上手く敵の攻撃を弾いた事で兎に1ダメージを与えたとも書いてある。
「おりゃあ!」
ポカ!
急いで立ち上り、右手に持つ杖で兎を殴りつける。可愛らしい音が鳴り、兎のHPが2減る。残り7という数字を確認し、急いで楯を構えて兎の動向を探る。
「ギュイイィ!」
「マズ!?」
角の先端がキラリと光り、先ほどよりも強い勢いで飛びかかってくる兎。咄嗟に右に飛んで避けたソラの横をものすごい勢いで飛んでいく兎。その前背後にあった樹に勢いよくぶつかり、HPが2にまで減った。
「そこだぁ!」
「ギュイ!?」
たたらを踏みながら、勢いよく振り返ったソラの杖による攻撃を受け兎はHPを全損し光の粒子を発して消え失せた。その途端・・・
プレイヤー ソラのレベルが上昇しました。
杖術のレベルが上昇しました。
盾術のレベルが上昇しました。
という文章と共に、空の体を虹の光が包み込み、空腹度が100%に回復した。レベル上昇した事により、基礎ステータスが上昇するらしい。
そのステータスを確認するよりも前に、先ずは兎戦で手に入れた『ドロップアイテム』を確認した。
・森兎のモモ肉 1個 食材アイテム。料理で使用する。
・森兎の毛皮 1個 素材アイテム。搭乗者ギルドで納品可能
「お!モモ肉だ!空腹度を回復できる料理が作れるかもしれないし、余裕があったら倒していこう!」
初の戦闘を終えたソラは——そのまま西に向けて歩いていくのだった。
そしてその10分後、ソラは森を侮っていた事を、深く後悔するのであった・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます