「麗華。『EWO』について、少し話があるんだ」

「京谷お兄様——お話とは何でしょうか？」

　茶道の稽古が終わり、入浴を終えて自室に戻る途中。話題のゲームについて、どの様な賑わいを見せているのか、掲示板を眺めながら歩いていると——廊下で京谷兄様に呼び止められた。

「実はね——僕や雅也兄さんも含めて、ゲームをプレイするんだけれど、なるべく多くの観点からユーザーの意見を取り入れたいと運営が言っていてね。出来れば4人全員違う種族で始めてほしいんだ。

僕は『ドワーフ族の魔法使い』をプレイする。

雅也兄さんは『ビースト族の武闘家』をプレイする。

詩織くんは『ドラゴニュートの狩人』をプレイするのだけど——麗華は残ったヒューマンとエルフのどちらでプレイしたい？」

「そうですわね・・・では『ヒューマンの戦士』でプレイしますわ」

　家の事業として、ある程度開発に関わった製品の情報は、頭に叩き込んである。5人1組のパーティを組める事、それぞれ5つの職業と種族があるという事も承知の上だ。そして『詩織』とは、私の『使用人』として共に育った姉の様な存在の人の事。

「そうか——わかったよ。基本的に開催地点は皆バラバラだ。ある程度『ワールドクエスト』を進めて、第2の都市に着いた後、『飛行船』に乗って他の種族達の住む大陸に移動できるからね」

「『フレンド機能』でおしゃべりしながら冒険するのでしょう？楽しみですわ」

「あはは。僕も雅也兄さんも、最近は忙しくて麗華に構ってあげられなかったからね。幾らでも話を聞いてあげるよ」

　ではまた後で——向こうの世界で合おう。そう言い残して京谷兄様を見送った。足早に自室に戻り、早速ゲームを起動する為に端末に向かい、アプリの起動ランチャーを操作して横になり、目を閉じるのであった。

◇◆◇

『プレイヤー名を記入して下さい』

　意識が浮上する感覚の後、目の前に半透明のウィンドウが出現。タップして『レイカ』と名前を入力した。

『プレイヤーの性別、種族を決めてください』

　目の前に『ヒューマン』、『ビースト』、『ドワーフ』、『エルフ』、『ドラゴニアン』の5つの種族と、それぞれ男女の姿が浮かび上がる。

「種族は『ヒューマン』。性別は『女』」

　レイカは迷う事無くヒューマン族の女を選択し、容姿を細かく設定する画面に移行する。身長は現実と同じ180センチに、髪色を青色に変更し、容姿の設定を終了する。顔は鼻筋を少し高くしただけに留めておく。声は現実世界の声がそのまま反映されるらしいので変更できなかった。

『職業とスキルを選択してください』

　レイカの前に『戦士』、『武闘家』、『狩人』、『魔法使い』、『神官』の5つの選択肢とそれぞれの説明が表示される。

戦士　　　重厚な鎧を纏い、敵の攻撃を一身に引き受けて仲間を護る職業。高い耐久力を誇る。

武闘家　　素早い身動きと、瞬間火力が最も高い職業。自らの肉体のみで敵を蹴散らす。

狩人　　　弓を背負い、罠を駆使して魔物を狩る職業。手先が器用で魔物の生態に詳しい。

魔法使い　様々な属性魔法を扱える職業。遠距離から圧倒的な火力で敵を殲滅する。

神官　　　女神を信仰する神殿に属する神官。人々を癒す【神聖魔法】を使い、長杖と楯を装備して戦う。

「職業は『戦士』で、スキルの選択は『不屈』、『氷属性魔法』、『HP自動回復』、『重装』の4つ」

パッシブスキル　不屈　致死量の攻撃を受けた際、確率でHPを1残し耐え抜く。

パッシブスキル　　HP自動回復　5秒毎にHPを1回復する。

バトルスキル　　氷属性魔法　氷属性の魔法を行使できる。

バトルスキル　　重装　重く硬い装備を身に付けている箇所が多い程、自身の守備力が向上する。

　全ての項目を選択し終えたレイカは、完了のボタンを押し白い光に包まれたのであった。

 

斎藤家様ご一行　EWO専用スレッド

此方は『EWO運営事務局』が直接運営する専用スレッドです。

多額の融資と、世界有数のセキュリティソフトを提供してくださった『斎藤家』専用のスレッドになります。

このスレッドは一般プレイヤーには公開されません。

このスレッドに於ける会話は、外部に漏れる事もありません。

またこのスレッド内での会話は運営には非表示となります。

ダイチ＠京谷

やあ。無事——キャラクターを作り終えたみたいだね

グレン＠雅也

ああ。中々奥が深くて、ついつい拘ってしまったがな

コクテン＠詩織

お嬢様、お時間が掛かっていますね・・・

レイカ＠麗華

ごめんなさい。余りにも壮大なオープニングで、ついつい魅入ってしまったわ

ダイチ＠京谷

麗華、本名のままプレイするのかい？

レイカ＠麗華

はい。この名前だけでもこの世界に500万人程いらっしゃるみたいですし、問題ありませんわ。きょ——コホン。ダイチ様に言った通り、ヒューマン族の戦士にてプレイを開始しました。選択したスキル構成はこんな感じです。

パッシブスキル　不屈　致死量の攻撃を受けた際、確率でHPを1残し耐え抜く。

パッシブスキル　　HP自動回復　5秒毎にHPを1回復する。

バトルスキル　　氷属性魔法　氷属性の魔法を行使できる。

バトルスキル　　重装　重く硬い装備を身に付けている箇所が多い程、自身の守備力が向上する。

ダイチ＠京谷

ふんふん。成程。硬く、重く、そして死ににくく。タンクとして理想のスキル構成だね

グレン＠雅也

俺もダイチに伝えた通りビースト族の武闘家で開始したぜ。

パッシブスキル　素早さ向上　ステータス『素早さ』の数字にボーナスが入る

パッシブスキル　攻撃力向上　ステータス『攻撃力』の数字にボーナスが入る

バトルスキル　　雷属性魔法　雷属性魔法が使用できるようになる

バトルスキル　　闘争本能　　ビースト族のみが利用できる専用スキル。己の獣性を呼び起こし、一定の時間攻撃力と素早さが向上する

コクテン＠詩織

私もダイチ様にお伝えした通り、ドラゴニュート族の狩人で始めました。

パッシブスキル　　器用さ向上　ステータス『器用さ』の数字にボーナスが入る

パッシブスキル　　罠師　　　　狩人専用スキル。仕掛けられた罠の解除成功率が微増する

パッシブスキル　　鷹の眼　　　弓矢を使用した際に遠ければ遠い程、命中率が向上する

クリエイトスキル　料理　　　　様々な食材を料理する事で『満腹度』を回復する事が出来る。

ダイチ＠京谷

皆、協力してくれてありがとう。是非このゲームを心ゆくまで楽しんでほしいな。

僕は宣言通りドワーフ族の魔法使いでプレイしている。選択したスキルは次の通りだ

パッシブスキル　MP自動回復　5秒毎にMPを1回復する。

パッシブスキル　魔導の知識　　魔法の消費MPが微減する。

バトルスキル　　ダブルスペル　2種類の魔法を同時に放つことが出来る。

バトルスキル　　植物属性魔法　　植物属性魔法を扱うことが出来る。

コクテン＠詩織

皆様の元に辿り着くまでに、料理のスキルを名一杯上げておきます。

レイカ＠麗華

コクテンの料理は、料理長たちも認める程の腕前でしょう？すごく楽しみだわ

グレン＠雅也

料理に熱中し過ぎて、遅れない様にだけは気を付けろよ？

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