第2話 テンプレ展開?いいえ、俺はヒーローなんかじゃない

主人公の呼び方 男→主人公



スキル【簡易ダンジョンエリア】 連結型

ダンジョン領域を模倣した領域を自身を中心に展開できる。


スキル【擬似DP】0DP 連結型

ダンジョンエネルギーを模倣した物。他のスキルと連結することで使用可能。魔力としても一応使える


スキル【改造&作成】 連結型

擬似DPを消費することでアイテムを改造及び作り出すことが出来る。


スキル【魔物支配&作成】 連結型

擬似DPを消費することで魔物を支配及び作り出すことが出来る。


スキル【補助人格】 パッシブ

補助をしてくれる人格




おはよう。今日も張り切ってこー!そんなふうに主人公はグッと背中を伸ばした。


上記の鑑定結果は主人公が昨日のうちに鑑定をしておいた物だ。使用を考えると功績よりもスキルを優先させてもらった。


それにしても補助人格たあうスキルはスキル名通り過ぎる気がするな?

主人公はその補助人格スキルを意識する。



「とりあえず使ってみるか、【補助人格】」


『初めましてで宜しいでしょうか?マスター、私を吸収した以来ですね』


「あー、あの時の迷宮核じゃん。その機能が俺に付与されたのか。なるほど、意思あるアイテムを吸収したらこうなるのか…」

「で、一体なにを補助してくれるんだ?」


『あれ、謝ったりはしてくれないんですか?反省してください。ほら、一応問答無用で吸収したのですから罪悪感とかありますよね?』


「あー、やっぱり初期DPって0じゃなかった?すると吸収でエネルギーに変換されたんだよね。」

「それで俺の成長に繋がっているのだとしたらDPを増やしてから吸収をした方が良かったな。」

「判断誤ってしまったと今では後悔しているよ、そして今後こんなことがないようにも反省している」



男がぼーっとしながら出した結論だ。初期DPが0はありえない。いや、数万人いるのだから総合エネルギーは膨大であり、そのような可能性もあるが低いと判断した。


でなければ初めに死ぬダンジョンが多発するだろう。何よりそれらしい力も流れ込んできたしな。


ダンジョンとして成長してから吸収、DPをスキルや身体の能力に割り当てる分が初期よりは確実に良いと思っていたのだ。




『そこ!?そこなんですか?!!』

『まあいいや。それよりもあの時に私を吸収したのは正解でしたよ?完全にマスター登録をする前だったので繋がりが薄く心肺停止程度で済んでましたが繋がりが深くなれば完全消滅していたのですから』


「そうなのか。確かにあの時の選択としてはあの選択以外に想像出来なかったし、今後悔してももうやってしまった事だからな。」


『いいんだ』


「さて、これからどうしようか。とりあえず人間の街に行かなければならないな」


『なぜ?』


「ぬぬ?それは人間が最もDP効率が良さそうだからだが?それから食欲は無くなったが食事もしたいな。」


『あ、マスターって相当やばい人ですね???』


「は?」

「まあ俺には生理現象やら生理的欲求やらがない。つまりここにいくらいてもそれらによって困ることは無い。焦らずにそこらでDPを集めて行こう」


『他にも使えますしね』


「擬似DPではスキルなども作れるのか?いや、作れそうな感覚はあるんだが発動するまで自信が無い」


『作れますよ?』


「それは良かった」




「さて、今日からどうしようか」



そう、男は現在進行形として無計画である。

とりあえずこのただの洞窟と化した元ダンジョンを出る。昨日確認した通りしっかりと出ることが出来た。



「おー、これが異世界かぁ。現実の森に近いけど少し違うな」



洞窟を出るとダンジョン内から見たよりも鮮明に映る。というよりこれは不思議な感覚なのだが魔法生物になったからなのか目が良くなっている気がする。


そして主人公は周りの植物を見ていると元の世界の植物が多いが明らかにファンタジー植物がちょくちょく紛れていることに気がつく。


例えばあそこにある紫色の斑点のある植物、見た目としては普通の雑草だ。

何か全てから何かしらオーラを感じ取れる。


そしてこのオーラはものによって違う。

そこにある落ちた果物からは周りよりも危険なオーラを感じる。

この世界は思っていたよりも危険らしい。



「鑑定」


魔物【果実モドキ(リンゴ)】

果実のような身体の一部を地表に出しておびき寄せる。果実のような匂いを発しているが脂肪の塊。あまり美味しくない。



なるほど、リンゴ…いや、果実に擬態する魔物か。これは騙されてしまいそうだ。足元に果物が転がっている度に警戒しなければならないだろう。


あの状態からどのようにして襲ってくるのだろうか?そう疑問に思った主人公はそこらの小石を拾い上げる。


そして好奇心で小石を投げつけてみた。あとのこと?知らんな。

石を投げられた魔物が襲いかかってきても今なら逃げ切れる気がする。それに一々安全マージンを取るのも馬鹿馬鹿しい。


投げつけられた石はそのまま果実部分に当たるかのように見えが地面から針のような形状の物が飛び出してきて石は弾かれてしまった。

あの針は前世の鉄の針とは違い、爪のようだった。そして太く頑丈そうだった。


小石を弾いた後、針はすぐに地面に隠れ、周りの土が柔らかいお陰か空いた穴は土ですぐに塞がった。


こちらに攻撃してくる様子は無い。

あの果物もどきは意外と温厚な性格なのかもしれないな。近寄らなければわざわざ襲いかかって来ることもないだろう。




さて、そうして森を探索し、落ちた果実があれば石を投げて確認をしているとあっという間に時間は過ぎ、太陽が出たと思ったら沈むことを繰り返していた。

つまり日が経っているということだ。


現在の俺は魔法生物だし俺の時間感覚は人間とは違うのかもしれない。そう考えた主人公はこの有用性をどのように活かすのかを考えるのだった。

この世界の時間が短い可能性も無くはないだろうけどな。




注意しながら森を進んでいると多分森歩きから5日、ついに森から出られた。


主人公は現在森を抜けた先の丘の上に居た。

上から見下ろすと何と人間が作ったであろう道が見えた。さらにそこでは馬車が盗賊に襲われている最中であることを知るのであった。



「ぬぬぬ、マジでこんなTheテンプレ展開が起こることがあるんだな」


『天ぷら?さぁ!そうこう言っていないで助けに行きましょう!』


「は?助ける訳ないだろw」

「まさか俺を正義のヒーローさんだとでも思っているのか?どっちかって言うとだなぁ」



そう言いながら主人公は駆け出していた。

主人公は目を細め盗賊と馬車を睨みつけた。そして覚悟を決めたかのように手を握りとあるスキルを発動させる。


この世界ではスキルを発動させるにはただ言うだけではダメなのだが、どのように魔力をめぐせれば発動出来るのかが感覚としてわかる。

そしてスキル名も言うのであった。


「スキル【簡易ダンジョンエリア】」



発動すると自身の周りに緑色の膜の様なものが形成された。だがすぐに霧散する。

けれど主人公にはまだ展開しているということが感覚として伝わってきている。目視ができなくなっただけなのだと。


感覚としてどこまでこのエリアが続いているかがわかる。これだと大きさは1.5メートル程だろう。

現在は魔法生物ではあるが魔法も何も使えない為エリアの距離はあまり関係ないんだけどな。



主人公は森で様々な物を拾い上げ、DPへと変換していた。生物を殺す他にもこのようにDPは獲得できるのだ。


そしてその擬似DPを全てを集約させる。そして作り出したものはナイフ。元の世界のサバイバルナイフだった。

そしてそのナイフは主人公の手に初めから握られていたかのように感じるほど自然に作り出していた。


ちなみにナイフの為に消費をしてしまったが、貯まっていた擬似DPは35DPである。



主人公が近ずいて行くと盗賊や馬車の人々も気づき始めた。そして両方が警戒している。

まあ当然だろう。見ず知らずの俺はどちらの味方なのか分からないのだから。


主人公はとりあえずとばかりに1番弱そうな盗賊に近ずいて行った。何度か攻撃されるが身体能力の差で簡単に避けることが出来る。


そして盗賊の攻撃の隙をつき、ナイフを一閃、首を半分近く斬り裂くと人間は脆くその場に倒れた。

しかしながら喉が切り裂かれていても呼吸ができなくなるだけでまだ死んでいないようだ。


主人公は盗賊へととどめを刺そうとしたのだがナイフなどが飛んできて牽制されてしまい、その場から離れる他なかった。


盗賊は自分達の敵であることを確信し、主人公に対して最大限の警戒をしていた。

だが馬車側はまだ主人公が味方であることを分からない。突然のことでぼーっとしている馬車側の護衛に対して主人公は言い放った。



「あのっ!なんでボケてるんですか!自分達のことでしょう!?私だけでは荷が重いです!手伝ってください」

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