追放された悪役令嬢ですが、辺境で錬金術師生活を始めました。〜錬金した最高級アイテムで、運命を変えてみせます〜

湊一桜

第1話 悪役令嬢、悟る

 必死に頑張ってきた。

 

 人を傷つけないような言葉を選び、悩んでいる人には寄り添い、いつもにこにこ笑っていた。

 

 それなのに、私はシナリオ通り、”悪役令嬢”になってしまった。




 

 

「ミランダ。俺と一緒に、辺境の街ルアヌーンに行こう」


 残されたただ一人の味方、レオ。彼は心配するようにその茶色の瞳を細め、私の背中にそっと手を回した。

 レオに触れらると、張り詰めていた気持ちが少しずつ緩む。


「ミランダが俺を救ってくれたから、次は俺がミランダを救う番だ」




 


◆◆◆◆◆



 


 “悪役令嬢”ミランダに転生したと気付いたのは、五歳の時だった。私は高熱で一週間うなされ、長い長い夢を見た。


 夢の中の私は、わがままな貴族でも、美しい姫でもなかった。どこか遠くの世界で、高層ビルの中のオフィスで働くOLというものだった。


 会社で朝から晩まで働き、疲れて帰った私はベッドに崩れ落ちる。そして、会社では見せないようなにんまりとした顔で、手に持った小さな機械を見つめていた。

 そこに映し出されているものは、見たこともないような美青年。


「ロレンシオ様ぁ……」


 誰もいない暗い部屋で、私は呟いていた。


「優秀なのに王太子にもなれなくて、パメラにも振られて……


 こんなにかっこよくて素敵なのに、悪役令嬢ミランダの手によって魔王にされるなんて……」



 


 そして、夢から醒めて悟った。

 

 今の私が生きているのは、前世の私が好きだった乙女ゲーム『伝説の聖女と、大地の守護神たち』、略して『聖守護せいしゅご』の世界。そして私は、『聖守護せいしゅご』の悪役令嬢ミランダに転生してしまったのだ。




 


 『聖守護せいしゅご』は、聖女の力を持つヒロインのパメラが、彼女を取り巻く美男たちと恋に落ち、世界を救うという物語であった。

 『聖守護せいしゅご』を愛してやまない前世の私は、『聖守護せいしゅご』の全てのキャラを攻略していた。そして、本編クリア後に追加される隠し攻略キャラ、さらには逆ハールートまで、全てを網羅していた。

 

 ただ、いずれのルートに進んでも、”悪役令嬢”ミランダは幸せになれなかった。必ず婚約破棄され、追放されるのだ。そして、追放先で悩める第一王子ロレンシオを籠絡ろうらくし、この世界を滅ぼす魔王へと変えてしまうのだ。


 (私は、この世界を滅ぼしたいだなんて、思わない!)


 さらに……隠れ攻略キャラのロレンシオは、私の最推しキャラでもあった。

 魔王になったロレンシオも苦しんだ挙句、ほとんどのルートでは死んでしまう。


 (私もロレンシオも、殺させない!)


 こうして私は、”悪役令嬢”ミランダの運命を変え、自身の追放やロレンシオの魔王化を止めることに決めたのだ。




 


 五歳だった私には、すでに悪役令嬢の片鱗が見え隠れしていた。派手なドレスが好き。宝石好き。家の男性使用人には上目遣いでおねだりすることを覚えていた。


 前世の記憶を頼りに、これではいけないと思い直した。地味なドレスを着、宝石は持たない。代わりに、勉学と鍛錬に励んだ。


 ……というのも、万が一追放されてしまったら、私は自力で生き延びなければならないからである。

 この世界には、魔物が多く生息し、治安の悪い街だって存在している。そんな時に頼りになるのは、自分だけなのだ。


 

 

 だから私は、生き抜くために様々な書物を読み漁った。初心者向けの生活魔法の本から、高度な魔術書。アノール王国の地図や、貴族名鑑まで。

 また、時間がある日には剣を振ってみたり、魔法を使ってみたり。この”鍛錬”は、家族の目を盗んでこっそりと行った。

 

 父母は、着飾ることが全てだった私が急に勉強を始めたため、目を丸くして驚いていた。そしてその視線に、次第に熱が入っていった。




 

 両親は、私が勉強を始めたのは、王太子であるオズワルド第一王子の婚約者の座を狙っている、と勘違いしていたようだ。そして、父母もまんざらではない様子であった。事あるごとに、「それじゃあオズワルド殿下の婚約者になれないぞ」と諌めるようになってしまったのだ。


 (オズワルド殿下の婚約者!?

 それこそ、なっちゃいけない。

 私はオズワルド殿下に婚約破棄され、追放されるのだから)


 だから私は必死に否定した。


「わたくしは、殿下の婚約者の座など狙っておりません。

 わたくしは……わ、わたくしは!


 ……が、学者になりたいのです!」



 

 当然、両親が私の話を聞いてくれるはずがなかった。


 


 

 レオと出会ったのは、何とかこの状況を変えられないかと思い悩みながら家を抜け出し、生きていくためのヒントを得るために下町をふらついていた時だった。


 

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