ED美少女転生!〜 前世のトラウマから錬金術で『生命の秘薬』を作ったら、なぜか全種族の美女に求婚されています〜
@rikutoumi0924
プロローグ
「人生には立ち上がらないといけない時がある。」
誰もがそう言う。俺だって、そう思って生きてきた。
だが、俺には、決して立ち上がらないものが一つだけ存在する。
その事実を、今、人生の最も重要な局面で、最も残酷な形で突きつけられている。
場所は、薄い紫色の照明が気だるく漂う、ラブホテルの一室。時刻は深夜。俺はシャワールームにいた。
水の音だけが響く個室で、全身の力を込めて俺は懸命に祈った。隣の部屋には、職場の後輩である
「頼む、立ってくれ! このままじゃ、惨めなアラサーのままだ! 今夜、俺を救ってくれたら、もう一生、誰にも悪口を言いません! だからお願いだ!」
..... だが、息子は沈黙を貫いていた。
熱いシャワーを浴びせても、隣で恥じらいながら待つ彼女の姿を想像しても、俺の『エクスカリバー』は力を取り戻す気配すら見せない。
―――なぜ、こんなことになったんだ?
溢れ出る後悔と自己嫌悪の中で、俺は過去の失敗、そして自分の「病」を思い返した。
※ ※ ※ ※ ※
俺は
しがない中小企業の平社員であり、唯一の趣味はパソコンとゲームである。
EDの原因? ああ... .それは、大学時代の、この世の終わりのような夜に遡る。
当時の俺は「人生は、ちょっとした攻略情報と要領さえ掴めばうまくいくゲームだ」と、すっかり思い上がっていた。
エロゲーの『成功体験』に味を占め、現実の女子も「フラグ」さえ立てれば攻略できると本気で考えていたからだった。
そんな俺の前に彼女は現れた。
清楚で爆乳、俺の好みドストライクの女性。サークルで誰にでも分け隔てなく優しく接してくれる彼女の姿に、俺は「特別なフラグが立った」と愚かにも確信してしまったんだ。
――こうなれば、行動あるのみ!
俺は、その日のうちに彼女を食事に誘った。エロゲーの鉄則は、好感度が上がった直後に、迷わず次のフラグを立てることだからな!
「あの、俺、天野ユウヤっていうんだけど、よかったら、今度二人で……」
「はい、ぜひ! ……あの、できれば、今から行きませんか? 今日じゃないと、ダメみたいなので……」
即答だった。
(おいおい、早すぎだろ!? 俺が最後まで言う前に食い気味じゃねぇか……いや、 待て。これは俺の『隠れた魅力』が完璧に働き、彼女のガードを一瞬で突破した証拠では!)
やはり、現実の女子なんて、エロゲーよりよっぽどチョロいぜ!!
その言葉を証明するかのように、俺たちの食事は完璧に進んでいた。
気分は最高潮。俺の完璧なリードのおかげで、今日の食事は大成功だった。さすが 俺だ!
この勢いで一気に畳みかけるのはエロゲー的には悪手だ。今日のところは優しく送り届け、次のフラグは明日にでも立てることにしよう。
そう心に決め、俺は「焦らし」こそが最高のスパイスだと、攻略上級者の
その時、不意に、彼女は俺の服の袖を小さく掴んで立ち止まる。
どうやら、俺のその余裕が、狙い通り、 彼女を焦らしてしまったらしい
――フッ、なんて罪な男なんだ、俺は。
彼女は顔を赤らめ、潤んだ瞳で俺を上目遣いに見上げると、こう言ったのだ。
「あの、先輩……私、実は誰にも言えない悩みがあるんです。先輩になら……助けてもらえるかなって……」
この一言で、俺の脳内は完全にショートした。
「もちろん、助けるさ!」
気づけば主導権は彼女に握られ、俺は、連れられるがまま人生初めてのラブホテルに、足を踏み入れていたのだ。
(いやいや、待てよ。俺が今から、あの絶世の美女とヤるってことか!?)
浮かれまくった俺は、先にシャワーを浴びるという定番の流れに、1ミリの疑いなんか抱かなかった。
熱い湯気が充満する狭い個室で、ひとりでに勝利を確信し、脳内でエロゲの攻略チャートを再生する。
――コン、コン。
控えめなノックの音が響き、ドアの向こう側から、湯気を震わせるような、甘ったるい声が聞こえてくる。
「先輩? もういいですか? 私、もう限界かも……早く出てきてください」
「ああ、今行く! 待たせたな! 天使の相手は、俺に任せろ!」
タオル一枚を腰に巻き、俺は人生最高のドヤ顔でシャワールームのドアを開けた。
……だが、....ドアの奥には、誰もいなかった。
いや、正確には、俺の惨めな姿にスマホを向け、ニヤニヤと嘲笑を浮かべるサークルの陽キャたち数名が。
いた。
中心にいた男が口を開く。
「おっ、天野先輩! ドッキリ大成功っすよ! 最高の『童貞脱却ライブ』でした!」
そこでやっと俺は理解した。俺は、世間に向けて全てを晒し続けていたのだ。
無数のスマホのカメラが俺の全身を舐め回し、陽キャたちの嘲笑が耳の奥にこびりつく。
最悪の夜以来、俺のソレは一切反応しない。
そう、『ED』という名の十字架を背負うことになったのさ。
屈辱から逃げるように大学を辞め、今の会社に就職して数年。
そんな俺にとって、職場の後輩である
彼女はショートカットでツンデレ気質。甘いことだけを言わず、思ったことをハッキリと口にする。
(そうだ。大学時代のあの『天使』とは違う。この子こそが『本物』だ)
俺はストーカーまがいなアプローチを続け、なんとか数度の食事を重ねるまでにこぎつけた。
――事態が急変したのは、先週の金曜日。部署全体の歓送迎会だ。
上司のセクハラまがいな話にも作り笑顔で対応していた彼女は、場が落ち着いたタイミングで、お酒に酔って顔を真っ赤にして俺の隣に座ったんだ!
「天野さんも!もっと飲んでください。……天野さんの隣って、なんだか……一番、落ち着くんですよね。」
(いや、いやいやいや、待て。それって、つまり、そういうことだよな? 勘違いしちゃっていいんだよな!?)
俺は、彼女の言葉を俺の欲望が命じるままに受け入れ、34歳にして、人生最後の挑戦になると信じ、ここまで来てしまったんだ。
※ ※ ※ ※ ※
――そして、現在。
俺は、覚悟を決めた。
(どうせダメだ。どうせ失敗する。――だがな、タダでは転ばんぞ)
せめて、あのツンデレ娘の裸だけでも目に焼き付けてから、俺の人生は終えてやる!
淡い希望と必死の覚悟を胸に、シャワールームから出た。
明莉さんはベッドサイドで、赤い顔のまま俺を待っていた。
目が合う。
もちろん『エクスカリバー』は、微動だにしなかった。
「…あの、天野さん? ひょっとして、その……勃ってないんですか?」
普段のツンデレ気質に戻った、冷めた口調。その言葉は、優しさも気遣いもなく、ただ事実だけを指摘していた。
「あ…いや、その、ちょっと、疲れが…でた、みたいな…」
「ふぅん。そうですか。じゃあ、無駄でしたね」
彼女は冷笑した。酔いが完全に醒めたその顔には、先ほどまでのデレた表情は微塵もない。
「……勃たない、ということですか。酔いが醒めました。私はそういう時間の無駄が一番嫌いです。帰りますね」
明莉さんは、俺の惨めな姿に目もくれず、さっさと服を着て、ホテルのキーを投げ捨てて部屋を出て行った。
――残されたのは、勃たない肉体と、粉々に打ち砕かれた自尊心。
俺はベッドに倒れ込み、シーツを噛み締めた。
屈辱。絶望。
(脳裏に、あの陽キャたちの嘲笑と、さっきの明莉さんの『時間の無駄』という冷たい目がフラッシュバックする)
(もういい。もう何も感じたくない。この役立たずの肉体も、惨めな感情も、全部まとめて消えてくれ。頼むから、もう意識なんて…)
俺の意識が、この惨めな現実から永遠にシャットダウンしようとした、まさにその時だった。
ふと、身体の下が、鈍い光を放ち始めた。
足元には、見たこともない複雑な文様が描かれた、巨大な『魔法陣?』がゆっくりと浮かび上がってくる。
何が起きている? 幻覚か?それともラブホのオプションか?
魔法陣が眩しい光を放ち、部屋全体を包み込む。
あれが何だろうがもうどうでもいい。失うものなんて、何もない。
俺は立ち上がり、光に向かって叫んだ。
「クソッタレな人生、もう知るか! いいか俺は、天国だろうと地獄だろうと、どこに行ったって関係ねぇ! たとえ俺が美少女にされちまっても構うもんか! とにかく、女の子といちゃラブさせてくれ! このクソッタレな人生さえ変えてくれるなら、なんだってしてやるぞォォォッ!!」
その人生最後を覚悟した、浅ましくも倒錯した咆哮。
その絶叫がラブホテルの安っぽい壁に響き渡るより早く、弾けた光が俺の意識を刈り取った。
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