第41話 俺の恋人だった女性のみじめなその後

「お前もこの世界に召喚されてきたんだな」


「そうだ。お前もそうだったのだな」


「その通りだ。わたしは今から二十日前に召喚されてきた。魔王様直々の召喚だ。どうだ。うらやましいだろう」


 うらやましいと思う人間は極少数だと思うが。


「わたしは召喚されると、すぐにそのレベルの高さにより魔王様の直臣に抜擢されて、オーギュドノールという名雨をいただいた。そして、将軍に任命され、ブリュネボルト王国の二つの大都市を占領し、破壊し尽くしたのだ。それはこの世界に召喚されてからわずか五日後のことだ。わたしがとても優秀であることは、お前でもよくわかることだと思う。それほどのわたしに、お前は歯向かったのだ。身の程しらずだな、お前というやつは。わたしに勝利できるはずなどないのに」


 どこまでも俺のことを見下している男だ。


「俺はお前を倒す寸前だった。それなのに、余計な記憶が怒濤のごとく湧き出してきた。多少の心の雑念であれば、心の底にしまい、精神の統一は可能だったのだが、心の底にしまうことができないほどの量が湧き出してきたので、精神の統一ができなくなってしまった。そして、必殺技が途中で維持できなくなり、お前を倒し損ねてしまったよ。悔しくて仕方がない!」


 俺が認識していた通り、オーギュドノールの必殺技についても、「心の中に生まれてきた雑念を心の底にしまいこむ」ことができた後、精神の統一をする必要があった。


 それが壊されてしまい、必殺技が使えなくなったので、憤懣がたまってきているようだ。


 俺の方からすると、オーギュドノールが怒るのは筋違いでしかない。


 何を考えているんだと言いたくなってくる。


 それとは別に、俺は一つ聞きたくなったことがあった。


 今の話には一切出てこなかった舞位紗さんのことだ。


「お前に一つ聞きたいことがある」


「なんだ」


「舞位紗さんはあれからどうなったんだ? お前の話には出てこなかったようだが?」


 すると、オーギュドノールは、


「あの女のことがまだ気になるのか? 面白いやつだ」


 と言ってきた。


「どういうことだ?」


「あの女は、お前を捨てて、わたしを選んだ。それなのにまだ気にしているとは、あきれてしまう」


「お前がどう思おうと、それはどうでもいいことだ。お前は浮気性だから、もしかしたらすぐに飽きて。捨ててしまった可能性があるのではないかと思った。お前に『寝取られて』しまって、つらい思いをして心は壊れる思いをしたとはいうもの、そのことが少し気になってはいたんだ。俺は自分で言うのも何だが、お人好しのところがあるからな。それで、その後の状況を確認しようと思ったんだよ」


「ふん。もの好きなやつめ。まあ、お前の落胆した顔を見るのもまた一興だな。じゃあ、教えてやる」


 オーギュドノールの口から一体どのような内容が語られるのだろうか?


 この口調からすると、舞位紗さんにとって、決していい内容ではないだろう。


 オーギュドノールになった池板先輩が舞位紗さんを捨てた可能性はかなりありそうだ。


 俺は少し緊張しながら、オーギュドノールの言葉を待った。


 すると、オーギュドノールは、


「わたしはお前に舞位紗との仲睦まじさを見せつけた後、ちょうど一週間ほど経った頃、『運命の出会い』をしたんだ。なんと、別の後輩が告白してきた。彼女は好みの女性で、わたしの『運命の女性』だった。わたしはすぐにその子と二人だけの世界に入っていった。相性はバッチリだった。そうなると、舞位紗はジャマな存在でしかなくなる。もともとわたしは、舞位紗とそれほど長く付き合う気はなかったからだ。それで、別れ話を切り出したら、怒りだして、『絶対に別れない!』と言い出したので、舞位紗の前でその子と二人だけの世界に入り、ラブラブぶりを見せつけてやった。そうしたら、舞位紗は心を病んでしまい、入院することになったんだ。今も入院したままだと思うな。それにしても、お前に対してもそうだったのだが、『寝取られ』の状況を。『寝取られた』相手に見せつけてやるのはとても楽しいものだな。はまってしまったよ」


 と嘲笑しながら言った。


 俺は驚くしかなかった。


 舞位紗さんはその後、あっけなく、別の後輩の子に池板を「寝取られて」しまった。


 池板自体がそう仕向けたのだろう。


 俺の心が壊れる寸前のなるまでの苦しみ。


 これにより舞位紗さんも味わったことになった。


「ざまぁ」という思いが湧き出してくる。




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