第2話 朝の攻防

朝に弱い俺の部屋には、毎朝6時ちょうどに1人の男が突入してくる。

モデルのような容姿と、虫をも殺さぬような優しさを持ち合わせた、面倒見最強の幼馴染・想だ。

「_ひろ。真紘、起きて」

低くてよく通る、声優のような声。

「……んー…あと5分寝かせろ…」

「早く支度しないと遅刻するよ」

「…無理…休みてぇ…」

「ダメだよ、ただでさえ頭悪いんだから」

「…1日くらいでそんな変わんないだろ…」

それだけ話せるなら大丈夫だね、と笑っている想をべしっと叩いて、俺はのそのそと起き上がった。

「おはよ、真紘」

「…おはよ」

「外で待ってるから、支度できたら呼んで」

そう言って部屋を出ていく想のきゃしゃな背中に、俺は小さく「…いつも、さんきゅーな」と呟いた。

普段の俺じゃ絶対言わないような言葉だったからか、びっくりしたように振り返った想は、ぱちぱちとまばたきした後、整った顔をくしゃっと崩して「どういたしまして」と笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋をやめた、僕らの放課後。 窓辺のこっぺぱん。 @ao_dayon-yorosiku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ