いいお兄ちゃんなところを見せたい兄と、塩対応な妹
みーこ
いいお兄ちゃんなところを見せたい兄と、塩対応な妹
「おはよう! 我が妹よ!」
(ウッッッザ)
休日の朝。普段より遅く起きてリビングへ行くと、眩しい笑顔を振りまく
「今日が何の日か知ってるか? 知らない? なら教えてやろう! 今日は11月23日。つまり」
「勤労感謝の日でしょ」
「あ、うん、それもそうだけど……語呂合わせで考えてみろ。なにか思いつかないか?」
(わざと避けてるんだよ……)
どうでもいいから早くそこをどいてほしい。空腹に
「いいふみの日?」
私が別の回答をすると、
「確かにそれもあるな~! お前は賢いな~! だがそれだけじゃないぞ~! “に”と“さん”、そして俺を見て、なにか思い当たることは」
「うざっ」
「う、うざ……。ごめん、ごめんて……」
思わず漏れた私の本音に、さすがの
「……え? お前、今なんて……?」
「だから、いい兄さんの日、でしょ」
すると
「そう! そうだよ! いい兄さんの日! なんだよお前~! 知ってるなら最初っから言ってくれればいいのによ~!」
「そうやって調子に乗るから言いたくなかったの」
「あ、はい。ごめんなさい……」
しかし、バカ故にまた調子に乗り出す。
「でも、たまには調子に乗って、お前に俺のいいお兄ちゃんっぷりを見せてやってもいいだろ~? というわけで、はい! じゃじゃ~ん! お兄ちゃん特製パンケーキです!」
「……え」
意味のわからない行動に私は困惑していたが、
「見ろよこのふわっふわな生地! 厚さ! この域に達するには長年の修行が必要なんだぜ~? そしてこの俺の筋肉によりをかけて作ったホイップクリーム! ミキサーに頼らず自分でかき混ぜたんだぞ! どうだ? 美味しそうだろ? だろ? な? 美味しそうだと言ってくれよ頼む嘘でもいいから!」
「……」
たしかに、見た目だけで言えば美味しそう。分厚いし。でもそれを素直に認めるのは癪に障るので、一つ注文をつけることにした。
「……フルーツも欲しい」
すると
「ふっふっふ……。この俺が、いいお兄ちゃんであるこの俺が! 用意していないと思ったか⁉ お前の好きなフルーツもどうだ! ボウルいっぱいに用意してやったぞ!」
じゃーん! と言いながら、
「イチゴにオレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、リンゴ、キウイ、ブドウ! どうだ! 好きなものだらけだろう! どれも一口サイズに切っておいたからな。好きなだけ乗せて食べていいぞ」
「……なんで、そこまでしたの」
「そんなの、お前の喜ぶ顔が見たいからに決まってるだろ」
「……」
なんでそういうことを妹に向けてさらっと言うかなこの
「おい。なんでそんな変な顔するんだよ」
「そういうのは彼女にやりなよ」
「ぐっ……いないの知ってるだろ……。つーか、んなこと言ったらお前だって彼氏いねーだろ。……いないよな? いない? ああ、よかった……」
「そこでほっとするなし」
「いや、だって、なんか、嫌だろ。妹が知らない男と一緒にいるところを目撃する羽目になるの。悪い男かもしれないし」
「なにその過保護っぷり」
「過保護で結構。大切な妹を守るのだって、いいお兄ちゃんの役目だからな。……はっ。待てよ。もしかしたら、俺たちが付き合えば万事解決するんじゃぎゃあああ!!」
あんまりムカついたから、私は
「悪い! 悪かった! 変なこと言ってすまない謝るからナイフをこっちに向けるな! 食事用でも危ないものは危ないから! フォークもダメ! なし! お兄ちゃんが全て悪うございました! 調子に乗ってすみませんでした!」
土下座して謝り倒す
(あ……)
「ああ……俺と一緒にパンケーキの生地までしぼんじまった……」
さすがに茶番をしすぎた。分厚かったパンケーキが項垂れた
「……私もちょっとは悪いし、このまま食べるよ」
しぼんだからと言って、食べられないわけではない。私は椅子に座ってナイフとフォークを手に……取ろうとしたところで、
「いや、お前には出来立てのふわっふわを食べさせたいからな。ちょっと待っててくれ。今から作り直す」
「……なんで」
「なんでって、だから、お前の喜ぶ顔を見たいからだよ」
「……ありがと」
なにを当たり前なこと聞いてんだ? という顔でさらっと言ってくる
「ふっ。やっとお礼言ったな。どういたしまして」
出来立てのパンケーキは、まぁ、
いいお兄ちゃんなところを見せたい兄と、塩対応な妹 みーこ @mi_kof
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます