拍手は滝の音

Fukumo

第1話 

「拍手する音って滝の音と似てるね」

いつの日だろう、君が言っていた。

きっとまだ私達も今より幼くて、君もまだ、太陽みたいだった笑顔を満面に広めていた気がする。

その時は、自分たちに向けられる拍手は滝の音なんかに聞こえることはなく、ぱちぱちとどこかなにかに同情しながらするようなまばらな音だったから私は意味がわからなかったけれど。


でも成長した君は、その天性の華やかさで人気になっていたから、きっと「滝の音」が聞こえていたんだろう。

人気になったがゆえに、最初を超えないといけない。

そんなふうに、必死に「いいね」に縋っていた。


貼り付けた笑顔は、もうもはや幼い頃とは別物だった。

君が昔、嫌いだと言っていた服もいつしか着るようになっていた。

だからやっぱりなにか、追い詰められていたのだろうか。

重すぎた水は君の体を押し付け、地面に押し付けてしまっていた。

その心と身体が潰れてしまうほど。

いつもプレッシャーで悩んでいた君が心を病んでしまうのに時間はかからなかった。


…ねえ知ってる?首を吊って死ぬよりせめて、練炭自殺したほうが辛くないんだよ。


本当に死にたかったのか。それならどうして、あんなに痛がりな君のことなのにわざわざもっと楽な方法を選ばなかったのか。


「つらかったら言ってくれればよかったのに。そんな苦しい顔しながら死んでほしくなかったのに」


縊死した彼女は、とても苦しそうだった。




遺影の写真は、一緒に撮ったプリクラだった。

彼女は写真を撮られるのが嫌いだったからだ。

集合写真に写りたくないがゆえに修学旅行も行事の際は必ず休んでいたし、

家族写真のときは撮影場から抜け出していた。

このプリクラは、遺影の写真は、私が頼み込んで撮ったものだった。

今でも疑問に思っている。インターネットで自撮りをあげていたのに、なぜあんなに写真を撮られることを忌み嫌っていたのだろう。


これは私の、君についての回想である。



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