第二章 5話 「口は災いの元」

「もしかしたら、怪異や妖の類というのは曖昧な存在なのかもしれないですね。」

「曖昧?」「えぇ、近年、現在になって生まれた口裂け女みたいな怪異たちは、噂話によって生まれた存在だと自分は思うんです。」「まぁそうだな、最古の妖怪で有名な八岐大蛇や鬼と言った存在は書物に記されているからな。都市伝説に出てくる怪異たちは不確かな所があるな。」「だから対処法も曖昧なんですよね‥‥」


「それじゃあ、どうしようも無いってことか?翔廻、それじゃあ金雀枝ちゃんは‥‥」

「いや、諦めた訳ではないですよ、でも、すぐに解決はできそうにないですね。昔から存在する妖怪の方がよっぽど簡単ですね‥」

「おいおい、八岐大蛇や鬼の方が良いって言うのか?」「まぁそうですね‥そっちの方が実力行使で終わりですから‥」「たまげたな、倒せると思ってんのか?神話クラスの奴らだぞ。」たじろぐ白羽探偵。「確かに一筋縄でいくとは思わないですけど、対処法としては簡単じゃないですか。倒せばいいだけなので。」「確かにな。お前なら出来そうだと思ってきたよ‥」「都市伝説に出てくる怪異たちは、昔の妖怪とは違った強みを持ってるんです。」「それが曖昧か。」「そう、曖昧で不確かな存在なので対処法も曖昧。どうしたものか‥‥」


プルルルッ、白生の携帯が鳴る。


「うん?平からか。凪翔さん少しすいません。」

「あぁ、」


電話に出る白生。


「うん、どうした平。」

「よっ、白生。今大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫。何か用か?」

「今、ガキと遊んでんだけどよ、こいつ元気すぎて困ってんだわ。助けてくれ。」

「なんだよそれ、てかその子供はどうしたんだ?」

「いやぁ、帰ってる途中によ急に話かけられてよぉ、少し遊んでやるかと思ったら、これでよ。」

「それ、大丈夫なのか?知らない子供と遊んでるなんてこのご時世じゃ不審者扱いされるだろ。」

「おじさん、早く続きの遊びしようよ!その耳に押し当ててるやつは何?」甲高い声が聞こえてくる。恐らくこの声の主が平が相手している子供なのだろう。

「あぁ?これはスマホだよ。そんな事も知らないのか?今時は皆持ってるだろ?」

「‥‥今どこにいるんだ、平」

「おっ、来てくれるのか白生。助かるぜ!」

「あぁ、今探偵事務所にいるから、少し時間がかかるかもだけど。」

「あぁ、白羽探偵事務所か!ちょうどいいぜ。」

「なんでだ?」「おいおい、俺の最寄り駅の近くにある白羽探偵事務所だろ?」

「そうか、平の地元だったのか。」

「それじゃあ、玉子神社で待ってるぜ。」

「玉子神社か、わかったすぐに向かうよ。」


電話が切れる。


「どうした翔廻」白羽探偵が尋ねる。

「大学の友人からの電話で、少し気になる事があったので玉子神社に行ってきます。」

「口裂け女の件はどうするんだ?」

「ここで考え込んでいても、何も浮かばないと思うので少し気分転換してきます。」

「まぁそうだな、正直俺も対処法が見つからない。気分転換も必要だな。金雀枝ちゃんには少し悪いが‥」

「そうですね、彼女に護符を渡したので数日は口裂け女が近寄れない状況なので無事だと思いますが」

「そうだな、色々考え込んでも仕方ないか。」

「それじゃあ少し出ますね。」

「今日はそのまま帰っていいぞ、今日はもう依頼しにくる人もいないだろう。元々依頼が来るのなんて少ないけどな。ハッハッハッ」痩せ我慢のような笑いをする白羽探偵を残し、白生は平のもとへと向かうのだった。


玉子神社


「おぉ、来たか白生!」手を振り招く平。その傍には男の子がいた。「その子が、平が言ってた子供か。」「おぉ!オイラ若々!よろしくなにぃちゃん!」「おい!若々!なんで俺はおっさんで、白生はにぃちゃんなんだよ!?俺と白生は同い年だぞ!?」「まぁまぁ、そんなんで怒るなよ平、子供から見れば大学生なんておっさんだろ?」

「テメェ‥自分がにぃちゃんって呼ばれてるからっていい気になりやがってぇ‥‥」


白生は若々の目線を合わせる為屈みながら「えぇと、若々くんだっけ?僕は白生翔廻だ。よろしく。」と平と話すトーンより柔らかく話す。

「おう!オイラは若々!よろしくな白生のにぃちゃん!」

「二人は何をして遊んでたんだい?」

「かけっことかやってたんだぁ!」

「こいつ、体力が無尽蔵でよぉ疲れをしらねぇんだ‥‥」よく見ると平の額には大量の汗が流れていた。


「やっぱり、おっさんだったな!凡明は!あははは!!」

「おまえなぁ!!おっさんって呼ぶなって言ってんだろ!」兄弟のように戯れ合う二人を微笑ましく見る白生。

「随分、仲がいいじゃないか二人とも。」

「白生、お前も子供の相手してみろ、疲れを知らない奴の恐怖をお前も味わえ。」



ヒュゥウウウウウ 突風が吹いた。


カランカラン 神社の本坪鈴が鳴る。



「二人とも、オイラ帰らないと‥‥」先程まで楽しそうにしていた若々が、子供とは思えない冷静な顔になり言う姿を白生は観察する。


「そうか、僕も若々と遊びたかったな。残念だよ。」

「白生のにぃちゃん、悪かったね。折角来てくれたのに、また遊ぼうよ!」

「おいおい急にどうしたんだ?若々。まだ結構明るいぜ?」

「やることを思い出したんじゃないか?ほら、宿題とかさ」

「そうなのか?若々」

「おう、オイラやる事があるから帰らないといけないんだ。」

「そっか、また遊び相手いなかったら遊んでやるよ。若々」

「ありがとな、凡明!」

「あぁ、またな。」


若々は走って忽然と消えてしまった。


「なんだか、不思議な奴だったな。」

「平、今日はありがとう。」

「あぁ?俺お前になんかしたか?」

「お前はすごい奴だなと思ってさ。」

「なんだそれ‥」少し照れながら平は鼻の頭を掻く。


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