第5話 メイドは見ていた 2

第3皇女、ヴィレ様は男爵家の本当の娘では無い。

「マジっすか」

「マジ?マジって何よ」

「本気と書いてマジと読むんだよ」


訳わからない。


普通の平民だったヴィレ様の母親は街の踊り子だった。

「ダンサーっすか」

「ダンサー?それは何」

「ダンサーと書いて踊り子と…あれ?違うな」


馬鹿は無視するしかないねぇ。

話を進めるからね。


皇帝はその踊り子の虜になってしまい、手籠にするためにその街の男爵家の養子にして召し上げた。

「召し上げた?なんすか、それ」

「自分の女にする為に妾にするってことよ」

「あソレ分かるっす。公娼とか言うヤツ」


なんでそこだけ理解できるのよ。

逆に怖いわね。


「あーそっか、なるほどなるほど。でイリーナさんの出番なんだ」

「アンタ、何言ってんの?」

「え?だって皇帝から頼まれて公娼の身の安全を確保する暗殺部門から派遣されたんでしょ」


コイツ…なんでその事を。

殺すか。


バンッッッ

突然扉が開いた。

「おい、お前らなーにチチくりあってんだよ」


ヴィレ様だった。

なんでこの部屋に入ってこれたのよ。


キッチンの背面の板をずらしてシンクの下の配管をその板に動かして横に動かさないとこの部屋に入れないのに。


「メイドなのにやたら面倒な仕掛け作るよな。何?日曜大工が得意なのか?」

「ニチヨーダイクが何なのか分かりませんが、仕掛けは得意です」

「そっかそっか。じゃあ正妃のババアはすぐ殺せるな」

「…いきなり不穏な事を言わないでください」


まさかそれが数年後に実現するとは思いませんでしたが。






あれから色々ありましたが、今日ほど驚きを覚えた事はありませんでした。


まさか他国の王太子を撃ち抜くとは。



現在、アタシの手記はここまでですが、出版社よりオファーを受けておりますので…。


また後ほど皆様の前に現れたいと存じます。


「おい、イリーナ?皇帝仕留めんぞ。ついてこい!」


やれやれ、話のネタは尽きないようです。

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デアフライシュ 魔弾の皇女 火猫 @kiraralove

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