第2話 王太子側近は見た
半年ほど前の事だった。
学園を卒業したばかりの王太子を呼び出し、諮問会議が開催された。
まあ、いわゆる断罪劇と一部で呼ばれる王太子の“やらかし”を訴求する…と言うのがメインの建前なのだが。
実際、自国の侯爵令嬢を婚約破棄を大っぴらに卒業式の壇上で吠えて。尚且つ男爵令嬢を侍らせて“最愛”と宣う始末。
当事者である侯爵令嬢の口元が上がったところを見ると、ある意味正解だったのかと推察できたのは福音だろうか。
で、会議では
「何ですと?!我に婚約者をあてがうとはっ!父上は正気かっ?」
いや、むしろ正気を疑うのは王太子の方です。
…とは言えない立場の僕は王太子の側近です。
僕の父は宰相であり、現国王を導き政を治める摂政を司る大物である…まあ、国王をこれでもかと馬鹿にして煮詰めたら出来上がった執政の化け物なんだが。
その息子である僕の立場は微妙で、強気に出ると親父の傘でと言われて、弱気に出ると「結局はパパに助けてもらうの?」と馬鹿にされる。
だから王太子に文句を言う資格が無い状態だ。
だが自他共に認めるボンクラ王太子に婚約者をあてがう国が現れた…隣国の皇国だった。
もちろん以前に皇国から嫁入りした方々は少なからず居た。
そのいずれも美貌に恵まれ出会った瞬間に骨抜きにされると言うのが定番らしく。
だから骨抜きにされたのはこちら側であり、現在も溺愛と言っても憚らない程であると聞く(又聞き)。
何ですと?!とは言いながらも我が王太子も下半身に下心剥き出し…見なかった事にしてるが、イキリ立つ程に期待していた。絵だけで抜きそうな勢い…失礼しました。
とにかく学園で噂になっている男爵令嬢など置き去りにするほどの勢いで。
呆れ返る諮問会議に集まった大物達がギラリと目を光らせたのは勘違いではないだろう。
正直、笑った。
つまりは…男爵とは言え令嬢だ。もちろん令嬢にも非はあるが、お互い欲をぶつけるには塩梅が悪い相手だ。
しかも側近の僕を軽んじて場の仕切りを簡単に任せてしまう…まあ孕まないように飲み物に薬は欠かさなかったが。
よく王太子には“クソ真面目”、男爵令嬢には“気が利かない”と揶揄された。
回数を重ねると受精率が一桁以下になるとは言わずに放置したのはせめてものやり返しだ。
で、今日は皇女殿下のお出ましである。
「其方との婚約は解消する!我には運命の伴侶がおるのでな!顔もまともに見たられぬ者など論外だ!」
「…」
でこの仕打ちである。今は大人しくして欲しい…なんて思ったのは無駄だった。
僕のやり返し程度では意味なかったな、なんてルルルーしていたら。
「あ“あ“?殺すだと?」
「オメェが言ったんだろがよ、小僧」
「オレを殺すだぁ?テメェ、正気か?」
うん、今わかった。ロマリオが僕を皇女に近づかせなった理由が。
そして、噂であった皇族に手出し無用の危険人物が居るって話の当該者の正体も。
「そりゃ、言えないよね。皇女が地雷だなんてさ」
「…おう。うっかり踏むと命取りってな。あ、ヤベ」
「?」
直後に軽い音が連射された。
同時に王太子の悲鳴が響いた。
「あーあ…やっちまったなぁ」
ロマリオのその軽い口調に苛立ちを覚えながら。
「これどうすんのさ」
「代弁感謝するわー」
おまえも同じかぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます