第14話 崖

 疲れたので、静かに死のうと思った。


 バスを山で降り、首吊りロープの入った鞄を手に林へ向かう。


 暗い木々の奥へ進むと、街を眺望できる見晴らしのよい崖に木を見つけた。


 縄を結びつけようと枝に近づくと、何かが滴っている。


 鼻をつくアンモニア臭もした。


 こずえを見上げると、高枝に首を吊った女の白い尻が見えた。


「あんな高さまでどうやって登ったんだ?」


 疑問が頭をよぎるが早いか、崖が崩れた。


 気づくと、周りにはクリスマスツリーの飾りのように何かが揺れていた。


 それは大勢の自殺者が、首を吊った姿だった。


 あの女も混ざって、穏やかな死に顔だ。


 私は安堵の代わりに吐き気をもよおし、気づいたら林に倒れていた。

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