すすきの掌編怪談

母校芒

第1話 悲鳴

 ウォーキングで遊歩道を歩いていた。


 銀杏いちょうの木が並んでいる下を通った所で、近くの遊園地からジェットコースターが坂を下る音に混じって、女の悲鳴が聞こえてきた。


 爪で黒板をひっかくような恐ろしい音が鼓膜を襲い、ボクサーの拳骨のように脳味噌を揺らした。


 気づくと周囲に人集りが立って、奇異なものでも見る目で見下ろされていた。


 気を失ったことに気づくと、気恥ずかしくて「すみません」と声をあげたが音が風に乗らない。


 右手を挙げたがこれも見えなかった。


 苛々した私は「何を見ているんだ!」と怒鳴った。


 すると甘い毒のような息が耳に吹きかけられ、近くにあった女の顔が冷たくわらった。

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