最強拳法家はかくあるべき
猫踏み三年
第一部 拳法家は王国で名を馳せるネ
第一章 異世界は楽しい世界ネ
第1話 拳法家、異世界へ
ぶるりと肌寒さを感じる日、山奥の研究所で爆発が起きた。
「おいおい、聞いてないぞ。なんでこんなところに崩拳が居るんだ!??売りやがったな政府の奴め」
そう1人愚痴るのは研究所の職員である、陳である。もっとも他に職員は陳以外には1人もいないのであるが。
陳はその場から逃げようと一歩歩み出したところで影から腕が伸びてきた。
「ぐっ」
胸部を貫いた手は心臓や骨をも簡単に壊し進めていた。陳はこのまま死んでしまうことはわかっていた、その上でなぜ即死では無いのかと崩拳の技量の高さで生かされたのかと考える余地もあった。
しかし死ぬのは嫌だが、犬死にだけは最もだと考えた男は生涯を賭した魔術を使うことにした。
「お前も道連れだ…死ね」
そう陳は掠れた声で言いながら耳障りの悪い呪文のような単語を唱えた。少女は気でも狂ったのかとその場で死んだ男の写真を撮り、その場を後にしようとした。
しかし地面にいつの間にか書いてあったのか、今書き出したのかわからないが、魔法陣があった。楕円の中に小難しい文字に記号などの羅列が少女の飽きを誘った。
光ったところでと考えていたのだろう、少女は生まれた時から危機を感じたことがなかった。殺し屋や戦争など自国は負けることはあったが、自身が負けた記憶は生まれた時からない。
だからこそ、逃げることはなかった。だからこそこの魔法陣を受け入れてしまったのだ。それは良くも悪くも少女をこの世から消す力があった。
一瞬の光の後、少女が消えた。人間でありながら人智を超えた化け物がこの日地球から消えた。
光に目をくらませられた後に少女は森の中で目を覚ました。研究所の近くでは無いみたいだとすぐに理解した。
見たことない植物に見たことのないキノコ、そして目の前に広がるなんだか色付きの埃の様なものが空気中に広がっていた。
指で触れると暖かく、なんだが気持ちが良くなりつんつんと色々な色のものを触り続けた。
なんだか住んでいたところと違った雰囲気を感じ取ったが、地面からかすかに感じる地脈に、空気から掬い取れる空脈など、地球にあったものもあるため、結論は出せずに居た。
考えるのは面倒だと少女は人を探しに歩き出した。話せばわかる、村人でも偉そうなやつでも盗賊でもなんでもよかった。
良い人なら話せば良いし、敵でも軽く挨拶をして殺せば良いのだから。
歩きながら何かあった時のために気を溜めて、喉に気を溜めた。
「はっ!!!」
出した声は森を切り裂く様に広がり、草食動物はともかく、肉食動物も巣に一目散に逃げていった。
それは町から森の素材を取りに来た冒険者も例外ではなかった。
「おいおい。ドラゴンの咆哮かよ。死にたくねーけど、確認しなきゃ町が滅ぶよな。」
冒険者の男はゆっくり少女が居る方へ歩みを進めた。数刻も経たずに2人は出会うだろう。
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