「恋人がサンタクロース」

アイス・アルジ

第1話 A:恋人がサンタクロース

 皆さん御存じの、ユーミン(松任谷由美)の「恋人がサンタクロース」クリスマスソングの名曲と言えるこの曲。特に、この歌詞は天才的だと思っています。


 よく、お話(童話)に登場するような〝サンタクロースを信じている子供に、大人が「サンタクロースなんて本当はいないんだよ。大人になれば分るさ」と諭す〟場面。

この場面を逆転させた発想の鮮やかさ、少女が「サンタクロースなんて、絵本だけのおとぎ話だよ」と、隣のお姉さんに諭し。お姉さんが「本当に、サンタクロースはいるんだよ。大人になれば、きっと分るでしょ」と答える。

 単純なようで、誰も書かなかった童話の逆転劇。


 〝クリスマス〟と言えば、ロマンチックだけではない。実は、ホラーの要素も強い時期。太陽の力が小さくなり(昼の長さが最も短くなり)闇の力(死者や幽霊の力)が大きくなる冬至の頃。人々の心も冷え心細く、暖かな火が恋しくなる。

 クリスマスはもともと、この闇の力を乗り越えるためのお祭り。〝クリスマス・キャロル〟や〝ナイトメア・ビフォア・クリスマス〟など、クリスマスにまつわるホラー系物語は沢山ある。


 「恋人がサンタクロース」では、隣のお姉さんが、恋人に遠い街へと連れ去られ、二度と帰らない。これはホラーではないか? しかもつむじ風ととも現れるサンタクロース(恋人)。スティーブン・キングのホラーのように、いかにもサンタクロースに扮した魔物ではないか。

ユーミンが、そこまで意図していたかどうか分からないが? 多分、直感で(本能的に)理解していたのではないか思う。(きっとそうに違いない)甘いお菓子に苦い隠し味が仕込まれているように、まさに天才的感覚であろう。


 しかも曲調は見事に Pop であり(単なる Pop ソングを超えた)なおかつ、クリスマスの情感を醸し出している。曲調の妙? 魔法のように、いったいどうやって。(山下達郎の〝鈴の音〟のようなクリスマスアイテムで飾られてもないのに……) 

 もとより、クリスマス文化を持っていなかった日本人のつくるクリスマスソングは、どんなにクリスマスにまつわる言葉を集めても、西洋のようにクリスマスの情感を表現できた曲は少ない。

「恋人がサンタクロース」は、まさに完璧な一曲である。




「恋人がサンタクロース」と、同じ時代の 日本の Best クリスマスソング(自薦)を紹介します。日本で、クリスマスの情景を表現できた数少ない曲たち。(どれも古いですが、最近の曲には、さすがに疎くて……)


❄「クリスマス・イブ」山下達郎

 今では聞く必要もないほど、誰もが認めるスタンダード


❄「祈り」大貫妙子

 (当時の)アルファレコード( YEN レーベル)のクリスマスコンピレーションの一曲(たぶん細野晴臣プロデュース)

 クリスマスのお祭り騒ぎはみじんもない、美しくピュアなミサ曲、教会の礼拝に参加したくなる

( 30 数年? ぶりに、 YouTubeで聞くことが出来ました #taeko ohnuki - inori 1983 )

〝~ 天使が舞いおりなげきに口づけ 絶えなる愛の道標みちしるべとなる 静けき夕べの祈りは続く 帰らん御霊みたま永遠とわに眠らん(歌詞より)〟


❄「Bright Young X’mas」水族館オーケストラ

 鈴木慶一プロデュースのコンピレーション(バンド・エイド的な、メンバー=水族館オーケストラの合奏)このホームパーティー的な音が当時の最先端だった、さすが

〝クリスマスには天使の声を 星飾りにプレゼント ~ 幸せな一日 ~(歌詞より)〟 野川真貴の声がやさしい


❄「X’mas」種ともこ

 日本の Pop/Rock の最高傑作「音楽」より、唯一無二のクリスマスソング(この素晴らしいサウンド構成は〝ヤプーズ〟メンバーの中原信夫)

 胸が熱くなるとともに涙をさそう、今だからこそ聞いてもらいたい

〝~ 憎みあわないで今日だけは ~ 落ち込んで ~ 窓辺で星空見上げて暮らしている愛しい人たち 同じ世界を分け合って 巡って来た今日を一緒に祝いたいの holy naight(雪やこんこん)dreamig of ……(歌詞より)〟

 この世のすべての悲しみを、雪が白く包み込んでほしい……

 涙とともに〝That would take me up to Heaven(Wings of Angels 歌詞より)〟


❄「雪のクリスマス(Winter Song)」ドリームズ・カム・トゥルー

 日本語詞も素晴らしいが、英語バージョンが Good

 

 


 (考え方を変えれば、世を逆転できるかもしれない…… Merry Christmas to you. )

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