第13話 ファーストコンタクト

ホームルームが終わり、休憩時間がやってくる。

直ぐにベルのところにたくさんの人が集まる、ことはなかった。

理由は、髪と身長だろうか?


先ほど僕は校則に引っかからないから大丈夫と言ったが、やはりベルの濃い青色に近い髪色は目立つ。

この学校に髪を染めている人は何人かいるものの、警戒されるのは当然の事だろう。

加えて、小学生並みの身長。


少し対策はしたものの、やはりベルは異質な存在として、教室に一人座っていた。


しかし、この状況はむしろ僕にとっては好都合ともいえる。

人が近づいてこないならば、ベルが宇宙人だとバレることはない。


だが、それではベルが学校に来た意味がないので、ここは自分からでも話しかけにいって欲しい。

仕方がない、と、僕が動こうとした、その時だった。


「星河さん。初めまして。」

女子二人組が、ベルの近くの席に来て、挨拶をした。

「初めまして、だ。」

間を開けながらも、ベルはしっかりと挨拶を返す。


「私はアスカ、そして」

「カレンです。よろしくお願いします。」

「うむ。よろしく。」

「私もよろしくねー。」


少し危なっかしいが、問題はない。

周りをみれば、このやりとりに何人か注目しているようだ。

僕も集中して会話を聞く。


「星河さんはどこから来たの?」

「東京から、だな。」

「東京!都会から来たんだ!」

「どうしてこっちにやって来たのですか?」

「あー、家庭の事情、だ。」

「家庭の事情?それは

「ちょっとカレン。そういうことは訊かないの。」

「……すみません。星河さん。」

「いやいや、気にすることはない、よ。」


順調に会話は進む。

ほんの少し気が楽になってきた。

一限の準備を始めよう。


「じゃあじゃあ色々聞いちゃうけど、その髪の毛染めてるの?かっこいいね!」

「ああ。これは、あー、そう、だな。染めた、よ。」

「おお。やっぱそうなんだ。いいなあ。私も大学入ったら染めようっと。」

「ん?今は染めないのか?」

「親が許してくれないんだよねえ。ケチ。」

「妥当な判断だと思いますよ。許可されているとはいえ、学生の本分は勉強ですから。」

「カレンは固いなあ。いいじゃん、ねえ、おしゃれしても。」

「………………む、そ、それな。」

「あははー。だよねー。」


よし。

上手くいった。

よくわからない質問とかされた時は、それな、と返すだけでいいよ、作戦。

大抵はこれで何とかなるはずだ。


「アスカ、そろそろ一限の準備をしないと間に合わないんじゃないですか?」

「やばい、もうこんな時間!急がなきゃ。じゃあ、星河さん、また話そうね!」

そう言って二人は教材を取りにロッカーに行く。


ふう、と一息ついたのは、僕。

ひとまず、無事に終わったようだ。


と、ここで、ベルが僕の方を向いてきた。

どうじゃ、余計な心配じゃったじゃろ。

そう言ってきそうな表情だった。

ああ、グッドだ。

僕は親指を立てて、合図を送った。

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