子うさぎと魔女
桜井真彩
第1話
魔女の仮装をしてみんなと一緒に家々を回ってお菓子をもらっていたはずなのに、いつの間にかひとりぼっち。
「みんな、どこ?」
泣きべそをかきながらみんなを探す。
あたりはだんだん暗くなっていくばかり。
呼びかけても、歩き回っても誰もいない。
いつもみんなで遊んでいる森は真っ暗。
いつの間にか森の奥にまで入り込んでしまったようで、あたりは木々におおわれてますます暗くなるばかり。
とうとう子うさぎは泣き出してしまいました。
子うさぎが泣いていると、どこからともなく声が聞こえてきます。
「お?ずいぶんちんまいのが迷い込んだな」
「こら、怖がらせるんじゃないよ」
「あらかわいい、ちっちゃな魔女さんね。迷子ちゃんかしら?」
「お菓子あげないといたずらされちゃうかな?」
声はわいわいと楽しそうに話をしています。
子うさぎは泣くのをやめてあたりを見回しますが、まったく姿は見当たりません。
「おお、ここだここだ」
「だからあんたの声も怖いし、図体もでかいんだから子供を泣かすようなことをしないの!」
「ちっちゃな魔女さん、ここだよ」
「かわいい魔女さん、一緒にお菓子を食べましょう?」
そう言って姿を現したのは、大きな窯を持った死神にかぼちゃ頭のかかしに魔女に小さなおばけでした。
びっくりして声を出せずにいたら、魔女がニコリと微笑むと灯りに照らされた大きなテーブルにたくさんのお菓子、そして温かそうに湯気を上げているカップが現れました。
「今日はハロウィンだからな、俺らも楽しみたいんだよ」
そう言ってカカッと死神が笑いながら席に着きました。
「そういうことなのよ、驚かしてごめんなさいね」
かぼちゃ頭のかかしが穏やかな声で言いながら、カップの中のお茶を一口。
「お先に失礼、喉が渇いてたの」
そう言ってふわりと笑うのを見て小さなおばけも自分の席へふわふわと着席。
子うさぎはおどおど、きょろきょろ。
そんな子うさぎの手を取り椅子に座らせると、その隣に魔女が優雅に腰を下ろしました。
「ふふ、冷めないうちにお茶にしましょ」
魔女がそう言ってカップをとると、カップを天高く掲げました。
するとどうでしょう、カップの中に星くずが降ってきてキラキラと輝きだします。
子うさぎは目をキラキラさせながら見つめるのを見て、魔女が満足げに微笑みます。
その夜は静まり返った森に楽し気な笑い声がいつまでも響き渡るのでした。
子うさぎと魔女 桜井真彩 @minimaa
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