電車
はる3号
第一夜 電車
電車
新人さんの研修の日だというのに、寝坊した私は
自転車駅まで走らせ駐車場にそそくさ停めてダッシュで走り出す
右肩に軽くかけたリュックがゆれるのも気にせず、走りながら改札をぬける
タイミングが良かったのか、ちょうどいつも通勤電車がくるところでほっとしたときだった
見えてしまった やつと
目があってしまった
電車の車掌さんが顔を出す場所からひょろりと顔を出し半分くだけた額をぶらげながらケラケラ不気味に笑うやつと
目は赤く血がしたたり落ち、舌は気持ち悪いくらい長く、それでいて私のくびにまきつこうとしていた。
とっさにおばあちゃんからもらった数珠をとりだし、ぱっとはらうようにかざすと ぬるりとかわしてそいつは私の背後から舌で背中を強くついてきたのである
ドン!? という激しい音と共に、黄色いラインを超えて私の体は宙をまう
電車が目の前でもうダメだと思い目をつぶる
グイっと何かにひっぱられる感覚
長く ひたすら長く感じられ
死にたくないという恐怖でマフラーを強く
握りしめていた
だがおかしい 宙をまい 落ちるまでの時間が
あまりにも長い 長すぎるのだ
電車は目の前まできていたのいうのに
そんなことを考えていると、ポスンという音と共に
冷たいコンクリートにに尻餅をついていたのが分かる
恐る恐る目をあけると、そこは黄色い線の内側で
電車との接触はギリギリさけられたらしい
「 大丈夫? ケガはないかい? 」
「 あんま早まっちゃだめよー 」
「 いやこの子誰かに押された感じだったぞ 」
「 良かったのーお姉ちゃん無事で 」
気づくといろんな人にかこまれていた
サラリーマンや小学生、近所のおばちゃん
あげたらきりがないくらいの人たちに
「 だっ大丈夫です たぶん怪我もないかな
ほんとうにごめんなさい ラッシュにとんだ
ご迷 」
慌ててそんなことをいっていたら背後から
【 おじかっだな もうずごじで
こっじにひっぱれだのに おじがっだ 】
そんな声が耳元近くからし、一気に血の気がひいて
青ざめた私は、すみませんと謝って電車にのりこむ
あいつがいる場所に一秒もいたくなかったからだ
あれが何なのか分からないけれど、とにかくやばい
ということだけは直感でわかった
電車はほどなくして走り出したが一号車にはいたくなかったので、振り返らずに何回か扉をくぐる
大学につくまで動悸息切れが激しく、おちつくまでかなり時間がかかった
あとから知り合いの駅員さんに聞いて分かった事
あの時急に私が何かに背後からつきとばされた感じだったと 背後には誰もいなかったと
私をサラリーマンの男の人があわやところで助けてくれたということみたいだ
たまにそういう不可思議な事故があるんだと、酷いことになることもあるらしい
そういう存在はジフンとかジライて呼ばれていて、土地柄によって呼び名は違うが人をまきこみ贄としする
事故でなくなった人が行き場をなくしてそうなったとおばあちゃんから聞いたことがある
あわてる人間をあざけわらい こけ落とす
そんな不気味な存在は遭遇した 夏の朝の話
電車 はる3号 @Haruharu3gou
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